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進学通信

2023年9月

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学校生活ハイライト
開明の『理科実習』
大自然のなか本物に触れて 「五感で学ぶ」体験型学習

開明の『理科実習』
▲活動のテーマは、生物だけでなく植物、海辺の環境まで多岐におよぶ。寒天を作ったり、タ
イドプール(潮だまり)を調査したり、標本作り(写真)などさまざま。

公開日2023/11/6

 中学入試において、志望校選びの決め手となる要素はさまざまです。一般的には、大学への進学実績やグローバル教育、クラブ活動などが理由に挙がることが多いでしょう。そんななか開明では、あるユニークな行事が人気のポイントの一つになっています。それは中2で行われる『理科実習』です。「理科実習に参加したくて開明を選んだ」という生徒も少なくありません。いったい、どのような学びなのでしょうか。

 『理科実習』は、約30年前から続く伝統のフィールドワーク。1泊2日で和歌山県の加太湾を訪れ、海辺の動植物の生態などを研究するという、他学年の理科教員も総動員して行う一大イベントです。自らの知的好奇心に基づいた体験で学ぶ意欲を養い、さらに協働研究や宿泊を通して、集団行動における人間関係や礼儀作法を学びます。

  しかし、単に海浜生物を採取・観察して終了ではありません。その場で本格的な実験を行い、調査結果を発表するという、学術的要素も非常に高いものとなっているのが特徴です。

左から、Yさん、Kさん、理科主任・金光清太郎先生。「みんなをまとめる力を次に活かしたい」(Yさん)、「あきらめずにやりぬき、経験を重ねることが大事と気づいた」(Kさん)と、それぞれが成長を実感している。

左から、Yさん、Kさん、理科主任・金光清太郎先生。「みんなをまとめる力を次に活かしたい」(Yさん)、「あきらめずにやりぬき、経験を重ねることが大事と気づいた」(Kさん)と、それぞれが成長を実感している。

 生徒はあらかじめ設定された研究テーマから興味のあるものを選び、チームで研究に挑みます。「アメフラシの分布」をテーマに選んだYさんは、「アメフラシという生物そのものを調べてみたかった」と言い、アメフラシが逃走のために放つ煙幕の調査や、解剖などを行いました。 

 将来は魚類の研究職に就きたいと言うKさんが選んだテーマは「ウニの人工授精と初期発生の観察」。「精子と卵子の採取には苦労しましたが、失敗したからといって、乱獲するわけにもいきません。でも、みんな楽しんで取り組んでくれました」

 ほか、「ヒトデの起き上がり運動の観察」「マツバガイのイボニシ撃退法の観察」「漂着物の大きさと分布」などテーマはさまざま。理科主任の金光清太郎先生は理科実習の意義を次のように語ります。

 「やはり図鑑や動画で見るのとは学びの質が全く違います。実験だけなら、教材を購入して学校で行うこともできます。現場に繰り出し、本物に触れる実体験だからこそ得られる学びがあるのです」

アメフラシの解剖。「アメフラシの中に『貝』があるんです。それを見つけたくて!」と興奮気味に語るYさん。進化の過程で体表からは失われたが、かつてアメフラシが「貝」だったころの名残りだ。このような発見も、実体験だからこそ意義がある。

アメフラシを採取して、敵をかく乱するときに放つ紫色の液体(煙幕)がどのように放出されるのかを観察。採取したバケツの水が濃い紫色に染まるのを見て、生徒たちは驚きの声をあげる。実物に触れる感触も、水の冷たさも、においも、現場でしか得られない貴重な学び。

調査した動植物の生態などは、その日のうちに資料にまとめて発表する。一日で採取・実験・発表までを行うハードスケジュール。「自分がこれをしたい! と一方的に主張するのではなく、班メンバーの興味・関心も考えて協調性を大事にしました」( Yさん)

テーマ「アメフラシの分布」

 また、『理科実習』を通して「人間的成長も大きかった」と話すYさんとKさん。二人は研究チームの班長を務めました。チームではメンバー間で適切に役割分担をし、実験を行い、発表資料も作らないといけません。そのなかで、協調性やリーダーシップについて、多くの学びを得たと言います。

 まさに〝五感で学ぶ〟体験型の理科実習。同校を象徴する取り組みの一つとして、今後も進化していきそうです。

生物が相手なだけに思うように採取ができず、最初は苦労したが、班のメンバーが、ウニの潜んでいそうな場所やポイントを発見し、予定していた個体数を採取することができた。自然は筋書き通りにはいかないことを実地で学ぶ良い経験に。

「ウニの人工授精」の実験に挑戦。同じウニでも、精子や卵子の量には個体差がある。実験を通して「なぜこのウニは取れる量が少ないんだろう」と考えたというKさん。このようなふとした疑問が、新たな学びへの関心・意欲へとつながっていく。

テーマ「ウニの人工授精」