●お話を聞かせてくれた卒業生
ヒロド 歩美さん(写真右)・頴川 万貴子さん(写真左)
小学校から高校まで小林聖心女子学院で過ごしたという同級生のお二人。
その絆は強く、社会人になり環境が変わった今でも、家族ぐるみの深い交流が続いているそうです。
中高時代で、特に心に残っ ていることを教えてください。
ヒロドさん
歌と静劇で聖夜を祝う『クリスマスキャロル』は、キリスト教の学校ならではの行事なので印象に残っています。厳粛な雰囲気のなか、皆で歌う聖歌が講堂に響き渡り、心静かにキリストの生誕を祝う祈りの時間でした。あとは中1時の『体育祭』。中学と高校では体力が違うため別々に競技をすると思っていたのですが、対等に戦うので驚きましたね。
頴川さん
中学生が高校生に勝つこともあったよね。本気で勝つつもりでみんな真剣に取り組むから熱くなりました!私は家庭科の時間に、釜ヶ崎の人たちに毛糸の帽子を編んで贈ったことが心に残っています。「人のために動く」ということを意識して行動するようになりました。
「人のため」というのは、キリスト教の精神と通じるものがありますね。
頴川さん
そのほかに宗教的なもので影響を受けたのは『黙想会』です。神父様からさまざまなテーマのお話を聴くことで、多様な価値観・人生観に気づき、ものの見方・考え方が培われていきました。黙想会の日は一人で行動し、休み時間なども沈黙で過ごすようにしました。
ヒロドさん
クリスマスが近づくと、授業が始まる前に着席して沈黙を守り、先生が入ってくるのを静かに待つ『プラクティス』(クリスマスを迎える準備期間)という取り組みもありました。沈黙を通して自分と向き合う時間です。皆沈黙しているのですが、不思議と静かな一体感が生まれていましたね。
頴川さん
そうだね。「あれ?この一体感は何?」と、驚いたことがあります。沈黙する意味、その時間を皆で分かちあっていたような感覚でしょうか。このような経験はなかなかできないことですよね。
ヒロドさん
また小林聖心では、宗教行事だけでなく、どのような取り組みにおいても、“振り返り”を大切にしていて、感じたことをノートに記録します。ずっと後からノートを見直して気づきを得ることも多かったですね。頴川さんは、今でもそのノートを大切に持っていて見直しているんですよ。
頴川さん
当時、ノートを書きながら「このノートは一生捨てられないな」と思っていました。社会人になった今でも、何度も読み返しています。
ノートには、どのようなことが書かれているのでしょう?
頴川さん
「一人ひとりがかけがえのない存在」「人と違ってもいい」という考えが書いてあり、私はこの言葉を読み返すたびに勇気づけられています。中高時代は、自分の軸がまだ持てずに心が不安定な時期でもあります。そのようななかで、「人と違ってもいい。皆が大切な存在」という気づきを得たことで、心が楽になりましたね。
ヒロドさん
「皆がかけがえのない存在」という確信があるのとないのとでは、まったく違う人生になるのではないでしょうか。私は宗教行事を通じて「Big You,small i」という精神が身についたと感じます。これは“謙虚な心”を表していて、奉仕の精神に通じる考え方です。社会人になった今、置かれた場所で自分にできることは何か、するべきことは何かを考えて行動することが自然にできるのは、小林聖心で日々この精神に触れていたからではないでしょうか。
学習や授業での思い出はありますか?
頴川さん
英語の授業がハイレベルで、とにかく必死でしたね(笑)。大学生になって実は自分は英語が得意だったということに驚いて、中高の授業でかなり鍛えられていたのだと実感しました。社会問題をテーマに英語でディスカッションをする授業も多かったので、社会の動きにも関心を持つきっかけになりました。
ヒロドさん
英語の短編映画を見て、感想を英語で語ることもありました。今思えば、大学の授業みたいですよね。英語を学ぶだけでなく、“考える”機会でもあり、画期的でした。私は高2時、「オーストラリアの干ばつ」をテーマに、英語スピーチコンテスト全国大会で優勝しました。小林聖心は世界の姉妹校とのつながりも多く、グローバルな視点が身についたこと、社会問題に目を向ける授業が多かったことが優勝につながったのかもしれません。
お二人にとって母校はどのような存在ですか。
ヒロドさん
自分の軸を持ち、アクティブに行動する原動力を培ってくれた大きな存在です。私も頴川さんも転職を経験しています。転職は「自分のやりたいことを貫くため」のポジティブなもので、不安はありませんでした。自分の意志を貫くときに試されるのは、自分のなかに“芯”があるかどうか。私は小林聖心で過ごす日々のなかで自分がどうありたいかという“ぶれない軸”が自然と身につきました。一生を貫く生きる力を培ってくれた場所です。
頴川さん
私も転職するときは周りの人は驚いていましたが、私は平然としていましたね(笑)。現在は地方の文化・技術・人々の価値を伝えるプロジェクトに携わっています。社会問題に関心を持ち、「自分にできることで社会に貢献する」「人のために行動する」という姿勢は小林聖心で培われたものです。
頴川さんは、現在三児の母でいらっしゃいますね。
頴川さん
子育ても家庭生活も、家族のために何ができるのかを考えて行動すること。家事は家庭のマネジメントと考えています。子育ては理屈どおりにはいかないことも多いのですが…。
ヒロドさん
頴川さんは、子どもたちと話をするときでも対等に、子どもたちを尊重して接しているよね。
頴川さん
小林聖心の先生方が生徒一人ひとりを尊重してくださる姿を見ていたからだと思います。仕事をして、家庭を持って、子どもを持って…。この先の人生、喜びも困難もあるでしょう。でも、小林聖心で培った力があればこの先何があっても、乗り越えられると感じています。
小学校から高校までを小林聖心女子学院で過ごす。2010年に高校を卒業し、早稲田大学に進学。その後、朝日放送テレビ株式会社に入社し、アナウンス部に所属。多くの報道番組やバラエティ番組を担当。2023年、同社退社。フリーアナウンサーに転向。現在はニュース番組でスポーツキャスターを務める。
ヒロドさんと同じく小学校から小林聖心女子学院へ。高校卒業後は聖心女子大学へ進学。卒業後は株式会社日本政策投資銀行入社、2022年に退社。現在は合同会社quodで日本各地の自然・文化を活かした地域の魅力の発信を行う。4歳、3歳、0歳の三児の母で現在は育児休暇取得中。