Yさん(左)、コーラス部顧問 長田 紫苑 先生(中)、Tさん(右)
創部から80余年の歴史を誇るコーラス部ですが、日々の活動や雰囲気について教えてください。
Yさん
活動は平日と土曜の約6日で、大会前などは日曜に練習をすることもあります。
Tさん
中高合同の練習も多く、初心者で発声方法などを知らなくても、高校生や顧問の先生方にイチから教えてもらえるところが魅力です。
長田先生
そうですね。私は友だちに誘われて入部し、中学から音楽を始めました。歌が下手で、最初はあまり気が進まなかったというのが本音です(笑)。それでも高3時には部長を務め、音楽学部に進学。2022年にはプロとしてオペラにも出演させていただきました。
Yさん
ミュージカルにも力を入れていて、毎年、高3生にとって最後の舞台となる2月の音楽会で披露しています。2022年度は『スカーレット・ピンパーネル』の11曲を演奏しました。
Tさん
演目決め、台本やコーラス用の楽譜の作成、後輩への指導などは高3生の役割。衣裳も自分たちで作ります。
長田先生
私たちの代あたりから本格的にミュージカルに取り組むようになりました。楽譜すらなく、音を耳で聴いて譜面におこすこともあるので、準備は大変です。
Yさん
高3生は『武庫川フェスティバル』(文化祭)や定期演奏会の演目も決められるので、今まで以上にやりがいを感じています。私たちはいずれも、夢・希望をキーワードに曲を選びました。
Tさん
題目は「S h o w T h e D r e a m!」。部員一人ひとりが持っている夢や希望を音楽にのせて伝えたいという思いでステージに立ちました。
2022年2月に開催された『第19回音楽会』は、入場制限をなくすとともに、テレビ局との合同企画によるオンライン配信も実施。目玉である中高合同ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』をはじめ、“武庫女の声”をより多くの人々に届けることができた。
コーラス部として大切にしていることは何ですか?
長田先生
武庫女の声”を受け継いでいくことです。たとえば大人っぽい声など、学校によって声に特徴があり、それが大会においては他校との差別化につながるのですが、“武庫女の声”として受け継がれているのは、明るく澄んだ声です。
Yさん
コーラス部伝統の練習法を後輩に教え、少しずつ“武庫女の声”になっていくことに喜びを感じます。
長田先生
“武庫女の声”を成立させるためには、音程が合っていること、ハーモニーが揃っていることは大前提。体が楽器ですから、昨日できたことが今日できないということも少なくないなかで微調整を重ね、美しいハーモニーを生み出さなければなりません。簡単なことのように聞こえますが実はとても難しく、まずはそこをクリアしてから表現力を磨いていきます。地道に練習を積み重ねていくしかありません。
Yさん
課題に応じてトレーニングメニューを決めるのも高3生の大切な仕事です。
Tさん
表現においては声量も大切な要素の一つです。ペットボトルを用いた発声法を取り入れ、肺活量を増やすことに力を入れています。
Yさん
目標は、一人ひとりが2倍の声を出すこと。腹筋を鍛えるストレッチなども行っています。
Tさん
そして何より重要なことは、楽しい曲であれば、自分たちも楽しむことです。それには歌詞の解釈が不可欠なので、『武庫女フェスティバル』のときは、高3生が選んだ曲への理解を深めてもらえるように、タブレット端末で資料を作成し、後輩たちに説明しました。
Yさん
気持ちは声に出るので、練習に来たいと思えたり、モチベーションがアップしたりするような部の空気づくりにも気を配っています。厳しすぎても、ユルすぎてもうまくいかないので、加減が難しくて・・・。
長田先生
同感ですね。コーラスは団体行動なので規律が大切です。とはいえ、縛られすぎていたら声は出ませんし、表情も乏しくなってしまって、「歌わなければ」という責任感しか聞こえてこないような音楽になってしまいます。規律と同じくらい、「私はこう表現したい」と思えるような自由さも大切です。
Yさん
先輩を待たせることのないよう練習の準備をすることが後輩の仕事ですが、まずは私たちがそうした気遣いができなければいけません。皆への指示が遅れないように活動内容を考えたうえで練習に臨み、頑張ろうと思ってもらえるような伝え方をすることを心掛けています。
Tさん
長時間同じことを続けるのは辛いので、きちんと休憩をはさむ、練習の間にトレーニングメニューを入れてメリハリをつけるといった工夫もしています。
長田先生
難しいことですが、「歌うことが楽しい」「歌が好き」という気持ちを絶やすことのない雰囲気づくりをしていきたいですね。
個人としても、チームとしても進化し続けているのですね。
Yさん
個人としては礼儀・マナーのほか、自ら発信する姿勢や広い視野を身につけることができました。
Tさん
周囲のために積極的に行動できるようになったと思います。また、私は大学ではピアノを学びたいと考えています。以前までピアノを一人で弾いているとき、和音一つひとつの音を意識することはありませんでしたが、合唱のハーモニーになると、どのパートの音を聴かせるか、ということは重要になってきます。そのため、ピアノでも“聴かせるべき音”を意識するようになりました。合唱での経験をピアノでの表現力にも活かしていきたいです。
Yさん
コーラス部の活動における目標は、昨年惜しくも逃した『NHK全国学校音楽コンクール』全国大会への出場(中学は出場)です。
Tさん
その目標は、後輩たちと歌の面でも精神面でも支え合える関係性になれたときこそ、達成できるのではないかと考えています。高3生の仲間とは、納得できるまでとことん話し合える関係性を築くことができましたから、今後は今まで以上に、後輩とコミュニケーションを図っていきたいと思います。
長田先生
コーラス部の今年のテーマは「心を動かす」です。これは私が表現者として意識してきたことで、今のコーラス部の課題でもあると感じています。自分の心が動いていなければ、聴く人の心は動かせません。表現したい音楽があってこそ、実現のための技術がついてくるもの。音楽を感じる豊かな心と、「こんなふうに感情表現したい」という思いを持ってほしいですね。
Yさん
以前、聴衆の方に「良かったよ」と言っていただいて、コーラス部のモットーである「聴いてくださる方々に感動を!」が達成できたと実感しました。
Tさん
聴衆の方や審査員の方からそうした思いを受け取ると、もっと頑張ろうという気持ちになります。
長田先生
そうやって得た「音楽が楽しい」という思いは、人生を彩ってくれるはず。また音楽だけではなく、普段の生活においても自分の感情と向き合い、自分を知ることで、日常をより豊かなものにしてほしいですね。