中学3学年が一堂に会して行われる『弁論大会』は、中3生徒による司会進行で進められ、林佳孝校長をはじめとする先生方が審査を担った。
豊かな人間性を育む場として、年間を通して豊富な行事を展開する開明中学校・高等学校。春の恒例行事の一つが、中2・中3の生徒による『弁論大会』です。
準備は前年度の秋から始まります。中1・中2時に、生徒一人ひとりが身の周りのことや社会問題などからテーマを設定。リサーチを経て冬休みから原稿作成を行い、そこから3月頃まで、教員による添削、何度も推敲を重ねて原稿を仕上げていきます。
まず全員が発表するクラス予選が行われ、そこで勝ち抜いた各クラス代表者2名が、グランプリを決する本戦に出場します。24回目となる2023年度の本戦では、2年生14名、3年生12名の計26名が登壇しました。
『弁論大会』を通しては、実に多くの学びが得られます。原稿作成に向けて自分の意見を作り上げる過程においては、「情報収集力」「思考力」「文章力」が養われます。そしてクラス予選や本戦では、わかりやすく伝えるための「発信力」「プレゼンテーション力」を学ぶ絶好の機会となります。
また、審査員の先生だけではなく生徒たちも、①内容「テーマについてよく調べ、考えられているか」、②表現力・発声「わかりやすく伝えるための発声・工夫がなされているか」、③暗記「原稿を見ずに発表できるか」、という三つの観点から50点満点で各弁論の評価を行います。さまざまなテーマについて「自分ならどのように考えるのか」といういを巡らせて視野を広げるきっかけとなるほか、より良い表現のヒントや、「こんな考え方もあるのか!」といった発見も得られることでしょう。まさに、大学受験や社会で求められる多角的な視点や発信力を鍛える場となっているのです。
林佳孝校長の「良い弁論は弁士と聴衆とで作ると言われます。『受け取ろう』という気持ちで聞いてください」という言葉で幕を開けた本戦。まず驚いたのは、皆のその堂々と
した語り口です。しっかりと前を向き、聞き取りやすいスピードで抑揚をつけながら、力強く展開していきます。そして特筆すべきは、テーマ・内容、発表方法の独創性。「○○を知っている人は挙手をお願いします」「これから話す場面を想像してみてください」など、冒頭で聴衆の心をつかむ演出はもちろん、それぞれの主張も個性に富み、話の展開は予測不可能。自分の言葉で語られ、個々の“思い”に心を動かされる弁論ばかりで、あっという間に時間が過ぎていきました。
聴衆側の聴き入る姿勢や、ていねいに拍手を送る姿も印象的でした。弁論を通して仲間をより深く理解すること、“良き聴衆”として個性を受け入れることで、人生においてはもちろん、自身の成長にも不可欠である「互いに認め合う姿勢」が着実に育まれていることを感じました。
車いすでの登校時に差し伸べられた手。その経験をきっかけに抱いた「自らも勇気を出して困っている人に手を差し伸べたい」という思いを力説。“助け合いの連鎖”を切に願う気持ちが伝わってきた。
外見からはわかりにくい人が、助けや配慮を必要としていることを周囲に知らせる「ヘルプマーク」について考える。事例を交えて利用者の意図への理解を促しながら、「誰もが暮らしやすい社会」の実現を呼びかけた。
SNSを通じて知った、「毎日が楽しくないと感じている人がいる」という現実。日常に彩りを添え、明るい光を照らしてくれる「“心の支え”を持とう」という提案を通して、日々辛さを感じている人たちにエールを送った。
●人生のバイブル ●永遠のテーマ
●命を繋ぐボランティア ●お笑い
●音の呼吸 ●1人1人が生きやすい世の中へ
●壁の向こう側 ●顔をあげて歩く
●諦めることの大切さ、諦めないことの大切さ
ステップファミリー(血縁関係のない者を含む家族形態)である自身の家庭や、その日常を交えながら、「私の家族は決して特別なカタチではない」という確かな実感を熱弁。「偏見・差別のない世の中を作りたい」という決意を表明した。
冒頭、「これから話す三つの場面を想像してください」という語りかけで聴衆の関心を引き、自身のヤングケアラーとしての体験談を披露。内容はもちろん、“聴かせる”テクニックが光った弁論。
文学作品について、知名度は必要なのか、有名になることで何が変わるのかといった切り口で持論を展開。「好きな本を大切にしてほしい」という“作品への愛”があふれ出る、感情豊かな語りが印象的だった。
●運転士のいない未来の列車 ●嘘の裏側
●ネコ型ロボットドラえもんの正体
●イスラムはこわくない!! ●多数決法
●持ち味の花を咲かせるために ●普通
●AIは必要か ●父親と安楽死について語ってみた
●歴史を見る目 走る足 ●紫煙の向こうに
中2・SMさん
皆、静かに聞いてくれて、「良い弁論は弁士と聴衆とで作る」とはこういうことかと実感しました。受賞者の弁論は、内容も実体験に基づいたものだったので説得力がありましたし、話し方も上手く抑揚をつけるなど工夫されていたので、雰囲気が伝わってきました。来年も頑張りたいです。
中2・YMさん
本番ではやろうと思っていたことができなかったりしたので、今後はこの反省点を生かすとともに、他の人の発表で良いと感じたところを取り込んでいきたいです。上手に弁論している人は、原稿を読んだり丸暗記するだけでなく、「自分の思いを伝えたい」という意思がはっきりと伝わってくるものでした。またリベンジしたいです!
表彰式がスタートし、いよいよ結果発表。入賞した生徒たちに、温かな拍手が送られた。「今年は日々の体験から得た気づきによるリアリティ・オリジナリティに富んだ弁論が多かったように思います。どの作品も堂々と、そして中学生らしい視点で語られ、素晴らしかったです。みんな素敵な弁論をありがとう!今回の結果に一喜一憂せず、これからも挑戦し続けてください」(林佳孝校長)