1868年(明治元年)、東山知恩院境内に創立された、歴史と伝統ある東山中学・高等学校。今春、国公立大学合格者数が111名という過去最高の進学実績となり、これまで以上に注目が集まっています。
「本校の進路指導は“行ける大学”ではなく“自分が本当に行きたい大学”を探すことから始まります。将来、何になりたいのか、どのような仕事に就きたいのか。その目標を見すえて行きたい大学を考えることは、“夢”の実現への第一歩になっています」(進路指導部部長・玉井克樹先生)
“夢”という言葉に、現実離れをした印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、同校では中1という早期の段階から夢について考える機会を多く設け、夢を持つことの大切さを生徒に伝えています。
「中高時代の思春期は心が揺れる時期ですから、何のために勉強をするのかといった疑問を持つこともあるでしょう。『テストの点数を上げるために勉強をしよう』というのは答えになりません。迷いや疑問が生じたときモチベーションの維持につながるのは、『将来、自分はこうなりたい、こんなことがしたい』という夢や目標です。その実現のために勉強するのです」
同校では、夢を描いて自ら行動し、夢を実現するためのツール『10年カレンダー』『生徒手帳』『3年日記』を入学時に配布しています。“東山3大オリジナルツール”と呼ばれるこれらは、提出する必要はなく、どのように活用するかは生徒の自由です。
また、夢について考え、実現するために自ら行動する大切さを塩貝省吾校長が生徒に語る『チャレンジ探究〜旅のすすめ〜』も開催し、人気を博しています。夢を描き、実現することは旅を計画することに似ているというテーマのもと話題を広げ、まだ夢についてあまり実感していない生徒も興味が持てるような工夫がされています。
「東山3大ツールをはじめ、夢について考える機会を多く設けているためか、生徒同士で夢について語り合うことが当たり前になっているようです。中高生にとって、素直に夢を語り合える仲間と環境があるのは素晴らしいことだと思います。これまでの経験で、中学入学と同時に夢について考える機会を持つことが、職業観を育み、生徒のスイッチが入るきっかけ、さらには勉強へのモチベーションにもつながり、難関大学合格という結果につながっていることを確信しています」
進路指導では、ミスマッチを防ぐことが基本です。そのために生徒一人ひとりの個性や状況を把握するため、中高6年間、担任と教科担当の先生が常に生徒の情報を共有しています。高3になって受験勉強に取り組む際にも、中1から積み重ねてきた情報をもとに個々にアドバイスができることが強みとなっています。
また、大学受験では保護者との連携も必要となるため、早期から保護者を交えた面談の機会を多く設けると同時に、保護者の悩みを解決するサポートにも取り組んでいます。この春、進学実績が過去最高を記録したことについて、玉井先生は次のように話されます。
「コロナ禍で、大学訪問など思うように動くことができなかったことで不安が募り、進路指導室に質問や相談に来る生徒の数が増えました。それまで自覚していなかった悩みや不安に気づくこともあり、解決に向けて動いたことで、安心して受験勉強に集中できたことも結果につながったのではないかと思います」
中1から夢を描き、その実現のために本当に行きたい大学を選んだ生徒たちは、大学進学後も燃え尽きることなく前進し、成長を続けることでしょう。そこに夢を持つことの大切さが表れているといえます。
現在も、『医者になって無医村の人を助けたい』『脳科学者になりたい』など、さまざまな夢を持つ生徒が学んでいます。目を輝かせながら夢に向かって学ぶ彼らは、大学受験はもちろん、その先の未来でも目標を持ち続け、達成するために努力し、社会で大きな活躍を見せてくれることでしょう。
『10年カレンダー』は、入学から10年間の月日が記されており、10年という大きなスパンで未来を俯瞰し、夢を思い描き、計画性を持って「今、何をすべきか」を考えるツールです。
『生徒手帳』は、10年カレンダーに書いた夢を、詳細なスケジュールに落とし込んでいきます。日々の学習計画も記入して、夢の実現と勉強の相関関係を肌で感じます。
『3年日記』は、3年間、日々の出来事を記録することで自らを振り返り、成長の実感や反省へとつなげていきます。「『3年日記』を読み返してみると、自分自身の変化が手に取るようにわかり、自分はこんな人間だという思い込みを捨てることができました。とても良かったと思います」(生徒)
2023年、東大・京大・国公立医学部医学科など国公立大学合計111名の合格者数を記録し、昨年比139%となりました(2023年4月時点)。難関私立大学医学部・薬学部をはじめ、連携校・指定校推薦においても、多くの生徒が夢を実現するために志望校のランクアップを果たして進学しています。
学力の底上げが必要な生徒には放課後に補習授業を行っています。さらに、定期テスト2週間前には主要5教科の補習を実施し、学び残しを防いでいます。高校生になると、『医学部医学科面接対策講座』『志望理由書書き方講座』などを実施。
進路指導は、入学時から毎年、保護者の方を対象に『進学保護者会』を開催しています。さらに、医学部医学科をめざす生徒の保護者を対象とした説明会も行っています。