進学通信

2022年9月

実践報告 私学の授業
ワクワクしながら創造力を伸ばし視野を広げる
オリジナルの探究学習がスタート

探究

『STREAM』で「羽ばたき飛行機」を制作(中1)。
まずは動画を見て模倣し、2学期は個人のオリジナル要素を加えたものを制作予定。

公開日2022/10/31
教科横断型の学び『STREAM』や
敷地全体を活かしたプロジェクトを展開
新たな探究学習の構築に携わってきた鈴木応男先生。

新たな探究学習の構築に携わってきた鈴木応男先生。

 2022年、新たな総合学習・探究学習を始動させた三田学園。受け継がれる文武両道の全人教育のもと、校祖・小寺謙吉先生が志した世界標準の教育、グローバルリーダーの資質を育む教育のさらなる推進を目指す内容となっており、社会で活きる力の育成に主眼を置いています。
 4年前から高校で先行導入している探究学習を進化させた『総合学習・総合探究』と、分野横断的な学び「STEAM」に物理部がけん引してきた「ROBOTICS」の要素を盛り込んだ『STREAM(ストリーム)』、国際的な資質を高めるプログラム『GCP(Global Competence Program)』の三つの柱で展開。さらに放課後などには希望者を対象に、多種多様なテーマの『SG(Sanda Gakuen)探究プログラム』を実施しています。
 1学期の中1『STREAM』では、「羽ばたき飛行機」づくりに挑戦しました。ユニークなのは「周囲との相談は原則禁止」という点です。パーツを逆向きにつけてしまったり、試験飛行で思うように飛ばなかったり、改良中にうっかり壊してしまったり…。失敗の原因を予測→解決方法を考える→再度挑戦、を繰り返します。
「大事なのはトライアル&エラー。1学期の経験を活かして、2学期には個々の独創的なアイデアを反映した飛行機をつくり上げます」(主幹・鈴木応男先生)
 また、同校の強みが大きく活かされているのが、月に1〜2回のペースで放課後に実施される『SG探究プログラム』。大学の学生団体と連携して宇宙やSDGsをテーマとしたワークショップのほか、自然豊かな同校の敷地を活用した学内体験型プロジェクトが次々と企画されています。
「敷地内にある炭焼池周辺の植物の調査や、課題発見・解決に取り組むプロジェクトには約100人もの生徒が参加し、こうした学びが求められていることを改めて実感しました。近々スタート予定の『里山再生プロジェクト』では、敷地内の竹林整備だけにとどまらず、伐採した竹を使ったものづくりにも取り組み、商品化を目指します。これからも興味のあることをどんどん探究できる場を多彩に設けることで、高2の『個人探究』につなげるとともに、それぞれのテーマの延長線上にあるSDGsや社会に目を向けるきっかけを作りたいと考えています」(鈴木先生)

Act.1
『STREAM』(中1)では
「羽ばたき飛行機」制作

 1学期に取り組む飛行機づくりでは、周囲と相談すること、教え合うことは原則禁止のため、教室に響いているのは作業音のみ。「間違っている箇所があっても、自分で気付くまで見守ります」と、鈴木先生。制作工程の動画をじっくり観察し、工具を使ってパーツの加工、骨組みへと進んでいきます。最も難しいのは羽の取り付け。なめらかに羽ばたくことが重要ですが、そのコツは誰も教えてくれません。試験飛行では、作った飛行機の落ち方や軌道を注意深く観察。「なぜ飛ばないのか?」「どうすればもっと飛ぶのか?」を考え、微調整を繰り返します。終盤には動力となるクランク機構について学び、グループディスカッションも実施。観察・模倣からスタートし、最終的にはクリエイティブな域にまで持っていくことがねらいです。2学期後半からはロボットのパーツ設計・製作や制御系プログラミングにもチャレンジする予定。


中1・Kくん

中1・Kくん

 手を離すだけでバタバタと飛んでいく「羽ばたき飛行機」。最初は紙飛行機みたいなものかなと思っていたので、骨組みが動いた時には驚きました。試験飛行では、羽を薄く削ったり、パーツを反らせたり、飛ばすための工夫を考えては試すという繰り返し。最後は皆で飛行時間を競ったのですが、20秒飛ぶ飛行機もありました。いかに軽くするかということが、一つのポイントかなと思っています。作り上げた時には達成感を得られたので、2学期も楽しみです。


中1・Hさん

中1・Hさん

「羽ばたき飛行機」を試験飛行用に三つ作ったのですが、羽のビニールをピンと伸ばして貼れていなかったためか、最初はあまり飛びませんでした。胴体を反らしたり、骨組みを反らしすぎて壊れてしまうというハプニングもありましたが、飛行機に名前を付けたりしながら、楽しく取り組めました。2学期は、1学期の経験を活かして、よく飛ぶ飛行機の完成を目指します。

Act.2
キャンパスを彩る豊かな自然を題材にして行う
『SG探究プログラム・炭焼池プロジェクト』(中1〜高3希望者)

『炭焼池プロジェクト』では、池周辺の植物調査を実施。グループに分かれて、どのエリアに、どのような植物が、どのくらい生えているのかを調査。それらのデータを図面化し、文化祭でポスター発表する予定です。
「植物や昆虫など何でもいいので、一人ひとりが興味のあるものを見つけ、追究していき、最終的に大きなテーマであるビオトープの整備が実現するのが理想かなと思います。今後も継続的に実施するので、敷地全体の環境を自由に使ってほしいと思っています」(鈴木先生)


高1・Yくん

高1・Yくん

 化学部に所属しています。私の研究テーマは“キノコ”なので、中3の頃から学校の敷地内に生えているキノコの調査・採取を行っています。『炭焼池プロジェクト』にはキノコ専門のメンバーとして参加。キノコは周期的に発生するので、調査は同じ場所で10年続けるべきと言われます。『炭焼池プロジェクト』には、今後も継続的に参加する予定なので、キノコを通して、他のさまざまな植物についても知ることができればと考えています。

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