総合体育館のアリーナで行われた『探究学習発表』。
中学全学年の生徒と、田中敦夫校長をはじめとする多くの先生が見守るなか、
最優秀賞1グループと優秀賞2グループが選出される。
高校・大学の学びや将来に活きる「自ら考え行動する力」「広い視野」「問題解決能力」を育むことを目的とし、中学3年間を通して、探究学習を展開している関西大学北陽。2020年度からはSDGsを題材とした内容が盛り込まれ、より充実した学びへと進化を遂げています。探究学習の企画・運営を担ってきた数学科・香田孟彦先生は、
「高校では新学習指導要領に基づき、2022年度から『総合的な探究の時間』がスタートします。さらに文武両道で関西大学を目指す『文理コース』において、探究活動や国際理解教育を推進し、国際貢献できる人材を育成する『グローバルクラス』が、2年次より新設されることになりました。中高一貫生には、中学3年間でさまざまな経験を積むことで、高校では皆をリードしていけるような力を身につけてほしいと考えています」と話します。
中2ではグループごとに、SDGsの17の目標から一つを選んで調べ学習を行い、校内の『行動宣言コンテスト』でプレゼンテーションに挑戦しました。
中3では、3名前後のグループを編成し、自分たちで興味のある分野に関する問いを設定したうえで、外部の専門家へのインタビューを行うなど、課題解決に向けた提言を目指して探究活動に取り組みました。
そして2022年3月10日、中3生たちが3年間の探究学習の成果を発表・共有する場として、第1回『探究学習発表』が開催され、各クラスから選出された6グループが、中学全学年の生徒や先生方を前にプレゼンテーションに臨みました。
持ち時間は1グループ約10分。「AI(人工知能)が2030年までに私たちをさまざまな病気から救えるのか?」「大阪の空気をキレイにするには?」といった興味深いテーマが並び、寸劇を取り入れて現状の説明をしたり、校内でのアンケート調査結果をグラフで紹介したりと、それぞれが工夫を凝らした方法で発表しているので、聴いている生徒たちの集中が途切れることはありません。質疑応答タイムでは中1生からも質問が出ており、先輩から後輩へと学びが受け継がれていくことを実感できる場でもありました。
今後について、香田先生は次のように話します。「SDGsへの関心を高めるとともに、仲間と協働する力や、自分たちに何ができるのかを考える姿勢、プレゼンテーション能力など、今後の学びや社会に活きる力を養う場になったという手応えを感じています。今後は関西大学のパートナーシップ制度の活用や、企業との交流のもとで探究学習を展開していきたいと思っています」
最も苦心したのが、問いの設定。『探究学習発表』で最優秀賞に輝いたグループも、「どうしたら難聴の方々に音楽を楽しんでもらえるのか?」という問いを立てるまでには時間がかかったそうです。決定後は、障害の有無を問わず音楽を楽しむための『共遊楽器(造語)』を研究されている神戸芸術工科大学の先生を訪問したり(写真)、ソリッドソニック株式会社が手掛ける難聴の方のための『骨伝導集音器』を体験したりと、広く調査活動を展開しました。
『クラス発表』や『探究学習発表』では、声の大きさや抑揚、話す速度、聴衆の反応を見ながら伝えるといった発表態度に加えて、「テーマに沿った問いと答え(解決方法の提案など)の提示ができているか」「文章以外の視覚情報(図表・イラスト等)を効果的に利用して伝えたい内容をわかりやすく提示しているか」も評価のポイントに。あらかじめ設定されたルーブリック(評価基準)を踏まえ、どのグループもオリジナリティあふれる演出で挑んだ。
クラス代表に選ばれたグループは、複数の先生にプレゼンテーションを見てもらい、改善すべきポイントについてアドバイスをもらいながら、『探究学習発表』に向けて内容のブラッシュアップに励んだ。最優秀賞のグループは、インパクトを持たせるため、冒頭に音楽を入れるなどの策を講じたそう。「プレゼンテーション終了後には緊張が解けて涙が出た」という生徒の話からは、学年全体として、真剣に取り組んできた姿勢が伝わってくる。
「どうすれば難聴の方が音楽を楽しめるのかという問いに対して、自分なりの考えを持つためには、現状について勉強し、発想を広げていかなければなりません。その過程が大変でした。難聴の方の気持ちや、どのように接したらよいのかを考える機会にもなり、取り組んでよかったと感じています」(中3・Mさん/右)
「大学の先生や企業の方にお話をうかがって得た多くの情報を、10分間にどのようにまとめるかという点に苦労しました。普段からテレビのCMの字幕の有無や、字幕の出るスピードなどに目が向くようになったこと、それらの改善すべき点を考えるようになったことは、今回の活動の成果だと感じます」(中3・Yさん/中)
「10分間の発表となると、原稿は3000〜4000字にのぼります。それを自分たちで書き上げ、さらに3人で分担して覚え、納得のいく形で発表することができました。3年間、発表の経験を積み重ねてきたからこその成長だと思います。苦労したぶん、最優秀賞に選ばれたことが本当にうれしいです」(中3・Hさん/左)