東大・京大を含む最難関クラスの大学に多数の合格者を輩出する進学校でありながら、勉強一色になることなく、学校行事がユニークかつ多彩なことでも知られる開明。名物行事の一つとなっているのが『しまなみ海道夜間歩行』です。
広島県の生口島から愛媛県の今治市まで、しまなみ海道を渡りつつその距離約43km。約14時間、夜通し歩き続けながら仲間とゴールを目指す過酷な旅路です。この旅の目的と、それがもたらす意義を、森公亮先生は次のように語ります。
「中3の卒業記念行事として位置づけられています。普段はクラス単位で団結する行事が中心なのですが、ここでは学年全体で励まし合いながら歩を進め、絆を強めて、高校に進学しても皆で頑張ろう! という願いが込められています」
折れそうになる心を何度も奮い立たせ、励まし合いながら、棒のようになった足を一歩、また一歩と前へ進める生徒たち。大人でもリタイアしたくなるようなしんどさですが、得るものはまさしく唯一無二です。
辛いことを乗り越えた達成感、育まれる友情、仲間と共に見上げた星空……そのすべてが人生の宝物となり、生徒たちは一回りも二回りもたくましくなって、さらに実りある高校生活を送っていくことでしょう。
15:00 スタート地点は、瀬戸内海に浮かぶ生口島。辛く、長く果てしない旅の始まり。
「コロナ禍でどうなるかわからなかったのですが、開催できて本当にうれしかったです」(Iくん)
教頭先生が鳴らす号砲で、第一歩を踏み出した生徒たち。ピースサインを出すなど、まだこの時点では余裕がうかがえる。
「どうせなら楽しく歩こう! 」
商店街を抜け、穏やかな瀬戸内海のきらめきを横目に歩を進める。美しいしまなみの景色が見られるのも、夜間歩行の楽しみの一つ。
17:00ごろ、休憩と少し早めの夕食を。夕陽に照らされたビーチを眺めながら仲間と食べたお弁当も、きっと忘れられない思い出になるだろう。
夕食のあとはビーチを散策。「本当にきれいで感動しました。ただ、この後に地獄が待っていたんですけどね…(笑)」(Mさん)
18:00 再スタート。日も暮れてきて、ここからが本番だ。しまなみ海道を構成する橋の一つ、多々羅大橋から大三島へと渡って行く。
ヘッドライトの明かりを頼りに、薄闇の中を進む。このころから、次第に疲れが体をむしばんでいく。それでも生徒たちは、手をつなぎ、一緒に歌を歌ったりしながら、元気を絞り出す。
「小休憩のとき、見上げた夜空に流れ星を見つけました。都会では体験できない最高の思い出になりました」(Mさん)
「疲れに負けない! 」
23:00 夜間歩行名物、保護者による炊き出しでエネルギーチャージ。メニューはおにぎりと豚汁。疲れ切った体に、保護者の方たちの愛情が染みわたる。「こんなに美味しいおにぎりを食べたのは初めてだと感じました」(Iくん)
4:10 最後の難関、来島海峡大橋。ここを渡ればいよいよゴールが近づくが、橋は直線距離が長く、薄暗さもあって先が見えない。肉体の限界もピークで、橋を眼前に「絶望した」と回顧する生徒が続出!生徒たちは互いにエールを送り合い、最後の気力をふり絞っていざゴールへ!
6:00 ついにゴール!夜は明け始めていた。言葉にできない充実感と、強まった仲間との絆をかみしめる。
「ゴールしたとき、達成感と同時に寂しさを感じました。みんなと励まし合ったこの最高の時間がもっと続けばいいのに、という不思議な感覚でした」(Iくん)
「私たち教員も一緒に歩きます。大人でも『もう歩けない』と思うこともあるほどですが、ここでギブアップして “リタイアした先生”のレッテルを貼られてはたまりません(笑)。生徒たちの存在が、私を後押ししてくれました」
(森公亮先生)
「夜間歩行参加したくて開明に入学しました」
高1・Mさん
「全力で楽しむ気持ちで参加しました!」
高1・Iくん