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進学通信

2022年3月

この記事は1年以上前の記事です。

The Voice 校長インタビュー
つながりをつくる「心の教育」の実践で
社会で活躍できる力を身に付ける

Profile
山田長正 校長先生
1964年生まれ、大阪府出身。関西大学文学部英文学科卒。常翔啓光学園OB(旧:啓光学園)でもあり、
かつての恩師たちへの感謝とあこがれから母校で教職に就く。2011年に進路指導部長、2016年には高校教頭を歴任し、
2021年より校長職。「教育とは、心と心のつながり」をモットーに、学校づくりにまい進中。好きな言葉は「栄光に近道なし」。

公開日2022/4/12
人間性を活かしてつながりを生む
「心の教育」を実践したい

 学校に求められるミッションとは何でしょうか。もちろん、学力の育成もあるでしょうが、私は、つまるところ「人間性」を育てることに行き着くと思うのです。
 よく言われる話ですが、学業成績と人間としての優秀さは、必ずしもイコールではありません。ですから生徒たちには、将来、どんな職に就こうとも、その「人間性」を活かして他者とのつながりをつくれる人になってほしいですね。
 そう思うようになったのは、私が「人」に恵まれてきたからです。実は私は本校の卒業生でもあるのですが、当時の恩師たちの存在は、今でも私の根幹を成しています。卒業してからも何かと気にかけていただきました。それで、私も「こんな先生になりたい!」と思うようになったのです。
 たとえば生徒にとって「先生」は、ともすれば怖い存在になりがちです。あれこれ口うるさく注意されますから(笑)。でも大人になってからわかることってありますよね。 「あのとき叱ってもらえてよかった」とか。このように、後から気づくことも含めて他者の人生に影響を与えることも、またつながりでしょう。そういうつながりをつくれる「心の教育」、それが私が本校で目指すものです。

「K1GOALS」を設定し
「なぜやるのか」を明確化

 さて、本校では「K1GOALS」と名付けた独自の目標設定を行っています。誤解のある表現かもしれませんが、学校で行う教育活動は、時としてルーティンになることがあります。行事一つとっても「なぜやるのか」を深く考えることなく、つい惰性で取り組む場面があるのではないでしょうか。
 そこで本校では、校訓の「熱心であれ [探求心]」「力強くあれ [自学自習・人間力]」「優しくあれ [思いやり]」に基づき、育てたい力をより詳細に設定しました。「熱心であれ」なら課題発見力・分析力・創造力、「力強くあれ」はチャレンジ力・継続力・発信力、「優しくあれ」は肯定力・コミュニケーション力・協楽(きょうがく)力です。
 そして、学校でのさまざまな教育活動を、これらの目標にそれぞれ紐づけて示しました。つまり「この活動は、この力を身に付ける目的で行う」と明確にわかるようにしたもの、それが「K1GOALS」です。
 たとえば定期テストであれば分析力やチャレンジ力に、中学入学直後に行うオリエンテーション合宿なら、コミュニケーション力や協楽力に紐づいています。こうすることで、目標設定と実行、振り返りをきちんと一本化し、学びの質をより深めることができるようになりました。
 ちなみに「K1GOALS」は、若手教員らが中心になってつくり上げたものです。大変な作業でしたが、彼ら自身も、本校が目指すものや、それぞれの教育活動の意義を強く再認識するなど、大きく成長してくれました。

縦割りチームを中心に
他者への接し方を学ぶ

 また、本校の学校行事は学年を越えた「縦割り」でチームを作ることが魅力の一つです。教員はほとんど口出しをしません。先輩が後輩を育てる文化を脈々と受け継いできました。クラブ活動もそうですし、始業前の朝学習でさえも、上級生が下級生に教える光景が日常です。
 教科学習にせよ何にせよ、人に何かを「教えることができる」ということは、本人がそれを本質的に理解できているということ。もちろん、相手に合わせて思いやりを持ち、「教え方」だって工夫しなければなりません。教えることで、自らも成長しているわけですね。つまり「K1GOALS」で掲げた創造力やコミュニケーション力が必要なのです。
 さらに言えば、実はこうした取り組みこそ、私が大事にする「心の教育」、他者とのつながりをつくっていく「人間性」を育てる営みそのものだと言えるでしょう。
「心の教育」の観点で言えば、中2で取り組む「米作り」もそうです。本校は校内に農園を有しており、生徒たちは畝(うね)を作るところから始まり、脱穀や精米まで行います。ものを大切にし、「育てる」ことの大切さに気づいてほしいのです。また、近隣の幼稚園児を招いて一緒にイモの収穫も行います。これも縦割り制度と同様、年少者への接し方を学ぶ「心の教育」の一環です。

生徒たちとの接点は
3~6年であったとしても

 ただ、「心の教育」が持つ目的は、単なる情操教育だけではありません。それを軸に「2050年の社会で活躍できる」生徒を育てるのが主題です。
 これから生徒たちが生きていく社会、2050年がどうなっているか、誰にもわかりません。しかし、おそらくさらにグローバル化が進み、キャリアも多様化しているでしょう。本校では、そのような社会を見すえ、「グローバル教育」「キャリアデザイン教育」「21世紀型教育」の三本柱を構築しました。
「グローバル教育」は、自国も他国も理解できる多様性を育てるもの。ツールとしての英語学習に力を入れ、オンライン英会話や、ネイティブ教員がホームルームを担当するなど、日常的なコミュニケーションの場を多数設けています。「キャリアデザイン教育」は、将来目指す姿から逆算して何を学ぶかを考える場。同一法人である大学のリソースを活かして、本格的な実験設備などを使えるようにしました。「21世紀型教育」では、課題解決型の探究学習を中心に、いわゆる非認知能力(自主性・協調性・コミュニケーション力などの数値化できない力の総称)を育みます。探究活動の全国大会でグランプリを受賞した生徒もいます。
 これらに加え、近年は「イノベーション教育」も加速させています。企業と連携し、「こんなのがあったらい
いな」を提案する取り組みです。トヨタ自動車株式会社と一緒に挑んだパーソナルモビリティロボットの開発では、先入観がないからこそ着想できるアイデアを次々と提案し、社員の方が「わが社が数年かけて考えた案を、この子たちは数時間で出してしまった」と舌を巻いておられました。
 このように多様な取り組みを行っていますが、実際に子どもたちを本校でお預かりできるのは6年、もしくは3年です。しかしその後も彼らの人生は続いていきます。私たちはあくまで、そこを見すえて彼らに学びを届けたいのです。それが、本校らしい「心の教育」だと信じています。

こんな学校です

「グローバル教育」「キャリアデザイン教育」「21世紀型教育」を三本柱に、実社会で活躍・貢献できる人物の育成に重点を置いています。学内行事と、それを行うことで身に付けたい力を紐づけて可視化した「K1 GOALS」は非常に特徴的。敷地内に農園や本格的なスポーツクライミングウォールを持つ点もユニーク。