『入学式』で入学を祝った後は、『花まつり』で一人ひとりが尊い命であり、皆が生かされていることを自覚させる。
多感な中学時代は、勉強だけでなく、さまざまな経験を通じて心も身体もたくましく個性豊かに育ってほしいもの。東山では、『宗教行事』『体育祭』『スキー教室』『オーストラリア修学旅行』を軸とした多彩な学校行事で、生徒の成長を促しています。
同校では『入学式』と同じ日に『花まつり』が行われます。『花まつり』は、お釈迦さまの誕生を祝う式典で、誕生や命について考える機会としており、仏教の教えを教育の基本としている同校にとって、非常に大切な行事となっています。
「“自分”という人間は、父と母がいなければ存在せず、その両親も同様です。たとえば、自分を起点に先祖10代までさかのぼってみると、2046人もの命がつながって自分という人間が存在していることがわかります。それ以外にもさまざまな人が関わって生まれてきた尊い命であり、生かされていることを伝えます。勉強はもちろん大切ですが、まず第一に、命の尊さを知り、自分と他者を大切にして、“共に生きる”精神を伝えます」(鵜飼良宣先生)
宗教にまつわる取り組みには、毎週の宗教の授業をはじめ、知恩院へ出向いて一泊二日で行う『修養会』『聖日音楽法要』などがあり、心の教育の根幹としています。
『体育祭』『スキー教室』は、学校行事の代表的な取り組みです。『体育祭』は、毎年10月に開催されます。騎馬戦や棒倒しなど、盛り上がる種目がたくさんあり、生徒と先生が一丸となって取り組みます。今年はコロナ禍の影響で騎馬戦と棒倒しは中止となり、直径2メートル以上の大玉を皆で運ぶ大玉運びやミニサッカーなどが行われました。
「皆、本当に楽しそうに取り組んでいました。東山の生徒には勉強も学校行事も、どんな状況下でも何事にも真剣に取り組む姿勢が身についていると感じました」(松本善人副校長)
中3の前期には『農村体験』があります。3人で班を組み、丹波・亀岡・美山の農家で宿泊し、畑仕事をお手伝いしたり、野菜を収穫して調理し、皆でいただくなどの体験をします。また、事前学習として、マナーや、各家庭ごとに習慣の違いがあることを教えています。「野菜が美味しかった」「お手伝いが楽しかった」と語る生徒たちの言葉からは、とても有意義な体験であることがわかります。
中3の『オーストラリア修学旅行』は、現地での宿泊にホームステイがありますが、海外が初めてという生徒も多いため、準備は早期から始まります。準備として忘れてはいけないのは、まず英語に慣れておくこと。その事前学習として『英語キャンプ』があります。これは夏休み中の4日間、学校で1時限から6時限までネイティブの先生と多く会話をすることで英語に慣れるための取り組みで、習熟度別の少人数グループを組み、空港やショッピングなどでのシチュエーションを想定した会話を通じて、実践的な英語に慣れるように工夫をしています。
「『農村体験』で家庭による習慣の違いを知り、『英語キャンプ』で英語に慣れ、いよいよ中3の12月にオーストラリアへと旅立つのです」(堀澤 基先生)
「ほかにも、劇団四季や宝塚歌劇団の芸術鑑賞などさまざまな学校行事があり、各学年で経験してほしいこと、学んでほしいことを盛り込んでいます。生徒一人ひとり、心に響く要素は異なります。何がその生徒の成長の糧になるのかはわかりませんからね」(松本副校長)
入学以来ずっと、生徒一人ひとりの心の奥に蒔かれる生き方の種、すなわち「自分だけでなく他者も大切にする」という考え方は、日々の授業や多彩な学校行事を通じて力強く芽吹き、土壌深く根を伸ばし、天に向かってたくましく伸び続けます。もちろん多感な年頃のため、ときにはぶつかり、悩み、苦しむこともあるでしょう。ここで大切なのは、苦しいとき、辛いときに自暴自棄にならず、自分という人間が、今、ここに存在する有り難さを感じ、自分と周囲の人の可能性を信じる心を持ち続けることです。そしてこの力を同校では入学時から6年間をかけて育んでいるのです。