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私立中高進学通信

2020年11月号

実践!未来の学び「探究型読書」

富士見中学校

本を手掛かりに、思考の幅を
広げる高2生の『探究型読書』

『探究型読書』は同校の図書館「Learning Hub」で行われました。
『探究型読書』で選んだ本を、プログラムを体験した高2生に持ってきてもらうと、
言語学から社会問題まで多彩なテーマを扱った本が集まりました。

「本」をツールに
思考力を鍛え広げる
『探究型読書』プログラムの流れ

step1

「図書館の本」から1冊選び、本の表紙と目次だけを見て内容を想像。必要な情報を書き出す「要約読み」を行う。

step2

選んだ本を紹介する「帯」を作る。

step3

選んだ本をほかの生徒が選んだ本と合わせて「みんなの3冊棚」を企画。「人間が生きるために大切なこと」など関連するテーマを見つけ、キャッチコピーをつけて紹介する。

step4

選んだ本に新たな本2冊を加えて、自分の関心テーマを伝える「私の3冊棚」を企画。

step5

自分が作りたい新書「エア新書」を企画し、内容を考える。

 中高6年間をかけて、継続的に探究プログラムを実施している同校は、中1・中2で生物や街といったテーマのもと、探究のプロセスを体系的に学び、中3で集大成として『卒業研究』を実施しています。高1ではSDGsをテーマにした探究活動を行い、高2では自分の興味・関心を広げ、『学びの履歴書(卒業論文)』を作成します。その手はじめに、『探究型読書』に取り組みます。

『探究型読書』とは、編集工学研究所が開発した読書メソッドです。その特徴は「本を手掛かりにして、考えること」を推奨する点にあります。同校の司書教諭が「科学道100冊」(理化学研究所と編集工学研究所の共同プロジェクト)をもとに本を用意し、生徒が1冊選びます。本と本の共通点を見つけたり、新しい関係性を作り出したりする過程で、科学の領域にも自由に想像力を膨らませることができたようです。

「探究活動に中1から取り組んでいる本校の生徒たちは、調べ学習や発表にも積極的で、グループワークも得意です。しかし、この『探究型読書』は、個人個人が自らの思考と向き合わなくてはなりません。自分の関心のある範囲を超えて想像する必要もあり、どう考えたらいいのかわからず、悩む姿も見られました。生徒たちにとって、とても難しい作業だったと思います」(入試広報副部長/岩堀夏子先生)

『探究型読書』は、直感的に1冊を選ぶことから始まり、そこから情報を受け取り、要約し、本を紹介するための帯づくりを行ったり、3冊の本を関連付けて「3冊棚」を企画。最終的にはオリジナルの新刊本「エア新書」のコンセプトや内容を考え出します。

「タイトルや目次をどうするか……。『3冊棚』に表れた自分の関心を手掛かりに、企画します。その思考の繰り返しが、生徒たちの力を伸ばしていくのです」(岩堀先生)

「みんなの3冊棚」について相談し合う生徒たち。3冊の本の関連を見つけるのが難しく、苦労して共通のテーマを模索していました。「みんなの3冊棚」について相談し合う生徒たち。3冊の本の関連を見つけるのが難しく、苦労して共通のテーマを模索していました。
本の表紙と目次から、その本の概要を書き出していきます。この作業では、想像することで「考える力」を培うことを大事にしています。本の表紙と目次から、その本の概要を書き出していきます。この作業では、想像することで「考える力」を培うことを大事にしています。
「こうしたら?」も厳禁
答えは生徒自身に発見させる
『探究型読書』のワークブックと生徒が自作した帯。わいてきた「問い」や、気になった言葉、思いついた言葉を書き出し、思考をふくらませていきます。『探究型読書』のワークブックと生徒が自作した帯。わいてきた「問い」や、気になった言葉、思いついた言葉を書き出し、思考をふくらませていきます。

『探究型読書』を始めるにあたり、教員も事前に研修を複数回行い、大事なポイントを確認し合ったそうです。

「一番気を付けていたのは、答えを教えないことです。『このように進めなさい』と指導するのは簡単ですが、生徒たちはその先の人生を自分の力で歩まなければなりません。ですから、教えるのではなく、上手に引き出すことをめざしました」(岩堀先生)

 このプログラムを通じて生徒たちは、自分の殻を破って思考を広げ、視点を変えたり、新しい視点を見つけたりして考える力を身につけました。将来を生き抜くために必要な力を自らつかみ取った経験は、生徒に大きな自信を与えています。

体験した高2生に聞く!
『探究型読書』で得たものは?
中村彩英さん中村彩英さん
千葉真結さん千葉真結さん
菊池真帆さん菊池真帆さん
今井彩楽さん今井彩楽さん
豊島佳奈さん豊島佳奈さん

――『探究型読書』の感想をお願いします。

中村彩英さん
今までは本を読んでいると、作者の意見が自分の意見になってしまうことがありました。でも、今回は本を読むことが目的ではないので、本の内容から派生する自分の考えと向き合えたと思います。

千葉真結さん
「みんなの3冊棚」を決める時、私のグループは生物学の本、火星の本、人間の力についての本とジャンルがバラバラで、共通項を見つけるのが難しくて苦労しました。でも、考えて考えて、視点を変えることでテーマを見つけられた時は本当にうれしかったです。

今井彩楽さん
本を読むのではなく、本の表紙や目次から内容を連想するのですが、そのようなこと自体が初めてで、とても新鮮でした。目次を手掛かりに連想することが、探究を行う時の「問い」の立て方の練習になったと思います。

豊島佳奈さん
私は音響や人工内耳について興味があって調べていたのですが、専門的になりすぎるとほかの本とのつながりを見つけるのが難しくなり、バランスを取るのが大変でした。

――一番大変だったことは何ですか?

千葉さん
「私の3冊棚」を決める時、最初に選んだ1冊に、テーマの違う2冊を加えるのがとても難しかったです。自分の思い入れや考えという殻を破ることができず、異なる視点で考えることの難しさを知りました。

――『探究型読書』を終えて得たことは?

今井さん
最後の「エア新書」までやってみて、調べて取り組むのではなく、「最初に考えてから調べる」ことがとても大事だと感じ、考えることの重要さを理解できた体験でした。

菊池真帆さん
私はワークブックなどに取り組む時も、とにかく空欄を全部埋めようとするのですが、答えを埋めることより、考えを深めるという見えない部分が大事だと気づきました。

中村さん
本を読んだあとに、一度じっくり自分の思考を広げて展開することを学びました。そうすることで、疑問を疑問のまま終わらせず、思考の処理ができるようになったと思います。

本と本を関連付ける「3冊棚」の取り組みは、「Learning Hub」の本棚をじっくりと見る機会にもなります。『探究型読書』を体験した後、借りる本の傾向も変わったそうです。

本と本を関連付ける「3冊棚」の取り組みは、「Learning Hub」の本棚をじっくりと見る機会にもなります。
『探究型読書』を体験した後、借りる本の傾向も変わったそうです。

(この記事は『私立中高進学通信2020年11月号』に掲載しました。)

進学通信 2020年11月号
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