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進学通信WEB版

この記事は1年以上前の記事です。

卒業生に聞く!母校への思い
【卒業生×校長対談】
株式会社五感ホールディングス 浅田 美明 代表取締役社長
追手門学院中・高等学校 木内 淳詞 校長

日本の食材を使った「五感」を立ち上げ、大阪を代表する洋菓子ブランドに成長させた『株式会社五感ホールディングス』の浅田美明社長(27期生)に、追手門学院在校時のこと、現在の学院の印象などについてお話をしていただきました。

公開日2024/1/9
●〇●〇● プロフィール ●〇●〇●
株式会社五感ホールディングス
浅田 美明 代表取締役社長

小学生の頃から、自営の洋菓子店を手伝い、中学時代には製菓技術を習得。追手門学院高等学校卒業後、関西大学経済学部へ進学。大学在学中、実家が経営する洋菓子店「プチ・プランス」に入社。1992年、32歳で独立。2003年、阪急うめだ本店に「五感」を出店。2005年には北浜本館をオープン。

追手門学院中・高等学校
木内 淳詞 校長

五感のお菓子の大ファンだという木内校長。
1987年、追手門学院中・高等学校赴任。2008年、教頭就任。
2012年、追手門学院大手前中学校・高等学校へ異動。その後2018年より追手門学院中・高等学校校長就任。

「他者も自分も大切にする」「社会の役に立つ」
在校中の人間教育が今に活きている

多様な個性が混じり合うなかで”自分”を発見し伸ばす校舎「スマートパレット」

木内校長
現在の校舎は、2019年に竣工しました。生徒の個性を絵の具に例え、「さまざまな個性(色)が混じり合い、活かし合うパレットのようでありたい」というコンセプトで、「スマートパレット」と称しています。浅田社長は先ほどこの新校舎を見学されてどのように感じられましたか。

浅田社長
まずは斬新な外観に驚きました。曲線を多用したデザインで宇宙船のようだなと思いましたが、なるほど、パレットなんですね。生徒の個性が絵の具のように混じり合って、活かし合う場所という発想は面白いですね。すぐ横が住宅地になっていて、キャンパスと街が一体化しているような印象を受けました。
図書室に代えて各階に本棚や書籍のラックを設けた空間『ポート』をはじめとする「学校全体が図書館」をテーマにしたレイアウトもユニークです。

さらに、職員室とは別に、各フロアに『ティーチャーステーション』を設けて、先生と生徒がコミュニケーションできる機会が増えるように、随所に工夫を凝らしているところが先進的ですね。新校舎には、追手門学院の個性を尊重する姿勢や気概が現れていると思いました。

木内校長
校舎リニューアルは、一般的に学校の上層部が設計士と進めていくことが多いですが、思い描く理想の教育を実現するために、実際に現場で働く教員の意見を取り入れて、皆で造り上げていきました。このような例はめずらしいと思います。

授業・学校行事・クラブ活動など、学校生活すべてが生徒の“個性”を伸ばすための場と考えています。その個性が社会で活躍する力につながればいいですね。「スマートパレット」は、生徒一人ひとりの個性が、教員の個性とも交わりながら化学反応を起こしていく場所なんです。

浅田社長
生徒たちは皆、礼儀正しく、のびのび明るく元気ですね。授業も少し拝見しましたが、先生が教科書の内容を一方的に伝えて板書するのではなく、生徒たちとコミュニケーションを取りながら、双方向的な授業を展開していると感じました。風通しのよさが伝わってきて、活発な印象を受けました。

木内校長
授業では、知識をただ暗記するのではなく、身につけた知識を活用し、生きるための知恵につなげることも大切にしています。どのようなことでも「知っている」だけでは役に立ちません。知識を知恵に変えるには、ものごとを総合的にとらえて考える力や、多角的な視野を持つ必要があります。教員にはそのことを意識した授業展開をしてもらっています。

浅田社長の在校時代は? 生徒と先生が意見を戦わせたホームルームが人間教育の場

木内校長
浅田社長の在校時代、追手門学院はどんな学校でしたか?

浅田社長
私が在校していたのは約50年前で、とにかくホームルームが長かった印象があります(笑)。当時は、誰か一人がルール違反をすれば、その学年の生徒全員が体育館に集合して議論するホームルームが始まるわけです。一週間、授業をせずにホームルームだけをしていたこともありました。熱い先生が多く、皆で意見を出し合い議論しました。単純にルール違反した生徒を罰する時間ではありませんでしたね。「なぜ、ルール違反をしたのか」「これからどうするべきなのか」など、皆で考えて意見を述べ合うのです。
この体験を通じて、現在も粘り強くものごとを考え、自分の意見だけを主張するのではなく、他者の意見も尊重して受け止める習慣ができたのかもしれません。ホームルームは、追手門学院の人間教育の場になっていたのだと思います。

木内校長
本校は「独立自彊・社会有為」を理念として、生徒と教員を軸にして学校や校風をつくる、という考え方を基本としています。本校は無宗教で「オーナー」にあたる人がいないので、ここに集う人たちが軸になって学校をつくることができるのです。昔も今も「皆で学校をつくっていこう」というスタンスがベースにあり、一方的に生徒にルールを押しつけるのではなく、教員と共にルールの意義を考えたり、お互いの自由を認め合って生活していく方法を考えたりしてもらいたいと思っています。現在は昔のように一週間ホームルームをすることはありませんが、人間教育の場として、道徳の授業を大切にしています。

浅田社長が、本校で学んだことで企業経営に活かされていると感じることを教えてください。

浅田社長
先に述べたホームルームなどを通して、自分を大切にしながら周りの人のことも本気で考える習慣が養われたことが、今に活きていると思います。
五感ホールディングスは、「おいしくて喜ばれるお菓子をつくろう」「心の豊かな人を育てよう」 「 お客様、従業員をはじめ地域の幸せづくりに貢献しよう 」 「 そしてみんなで成長しよう 」 という私の思いを社員に伝えるための4つの基本方針を掲げています。 これらの考え方はすべて家庭での両親の教えをはじめとし、学生生活を含む生い立ちから生まれた思いです。

木内校長
学校教育と企業の社員教育は共通項が多いのかもしれませんね。

浅田社長
学校も企業も、“人が集う場所”という意味では同じです。学校は社会の役に立つ力を養う場所で、企業はその力を発揮して社会に貢献する場所という意味でつながっているとも言えます。また、社会で役立つにはどうすればよいかを考えて行動する人・組織と、自分の利益だけを考える人・組織の行く末は大きく異なると思います。自分の利益のみを考えていては誰も振り向かないですし、いざというときに誰からも力を貸してもらえないでしょう。

当時の時代背景である減反政策や食糧自給率が40%を切る中で「日本の農家さんとともに洋菓子をつくろう」という思いを掲げ、 また、大阪で育ったので大阪の洋菓子ブランドをつくりたいという思いで 五感を立ち上げました。
私が独立開業したのは、父から学んだ製菓技術が活かされています。また、お米など日本の食材を洋菓子に取り入れているのは、子どもの頃からお米を一粒も残さずいただきなさいという、両親の教えがあったからです。若い頃は反発する気持ちもあり衝突することもありましたが、今は感謝の気持ちでいっぱいで、両親の恩に報い、喜んでもらいたいという思いで仕事をしています。

このようにお話をしていると、周りの人に喜んでいただくこと、社会の役に立つためにどうするべきかを考えることがどれだけ大切かということを改めて感じます。日々培われた考えに基づいて社員・パート・アルバイトスタッフ、私が経営しているグループ全体で約400名の教育を行っているからでしょうか、弊社スタッフと独立開業などをした元スタッフは共に助け合っています。切磋琢磨しながら、お互いが成長していると感じますね。

木内校長
すばらしいですね。私も生徒には、「将来、あなたがある能力を身につけたら、その能力は周りの人の幸せのために使ってください」と伝えています。

好きなこと・得意なことに徹底的にこだわってほしい

浅田社長
私は、現在も追手門学院の卒業生とつながりがあります。追手門学院の卒業生には活躍している方が大勢おられますから、そのような卒業生と在校生の交流を図り、生徒の人間教育の取り組みにつなぐことが、追手門学院の価値をさらに高めることにつながるのではないでしょうか。

木内校長
私は以前から五感のファンですが、本日、浅田社長のお話をうかがい、今まで以上に五感と浅田社長の大ファンになりました。ぜひ、現在の生徒たち・子どもたちへメッセージをお願いします。

浅田社長
勉強・スポーツ・趣味など、何でもよいので、得意なことを伸ばしていきましょう。苦手なことにとらわれずに、得意なこと・好きなことを徹底的に伸ばすことが個性を伸ばすことにつながると思います。
たとえば、不器用だけれど粘り強い人がいるとします。その粘り強さに徹底的にこだわって突き進むことが、その人らしさにつながりますから「不器用だからダメ」などとは絶対に思いません。各人のよいところ・得意な分野を伸ばせば、その人ならではの魅力や個性が輝き、その人にしかできないことができるようになります。

あとは、仲間や周りの人たちを大切にしてほしいと思いますね。

木内校長
すばらしいメッセージをありがとうございます。これから五感のお菓子をいただくときは、浅田社長の今日のお話を思い出すことになるでしょう。
本日はありがとうございました。

追手門学院中学校・高等学校

〒567-0013
大阪府茨木市太田東芝町1-1
072-697-8185
大阪府 共学