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進学通信WEB版

卒業生に聞く!母校への思い
【卒業生×校長対談】
女優 笠松はる さん
追手門学院中・高等学校 木内 淳詞 校長

舞台を中心に大活躍中の女優・笠松はるさん(48期生)。この日は、『創造コース』の高校生を対象にした講演会に登壇。後輩たちに向け、「表現」の世界に生きること、プロとしての姿勢、夢を叶えるための行動についてなど、熱く、そして優しく語りかけてくれました。愛情あふれるメッセージに、質疑応答では感極まって涙する生徒もいたほど。感動の余韻そのままに始まった木内淳詞校長との対談も、大いに盛り上がりました。

公開日2025/1/23
●〇●〇● プロフィール ●〇●〇●
女優/笠松はる さん

追手門学院高等学校48期卒業生。東京藝術大学音楽部声楽科へ進学後、同大大学院へ。大学院修了と同時に劇団四季に入団し、初舞台からヒロインに抜擢。以降11作品、約1800回のステージで主演俳優として活躍後退団。
退団後はさらに活動の幅を広げ、ミュージカルのみならず演劇やオペラでも活躍中。
4月にはミュージカル『李香蘭』にて李香蘭役での出演が予定。

追手門学院中・高等学校/木内 淳詞 校長

1987年、追手門学院中・高等学校入職。2008年、教頭就任。2012年、追手門学院大手前中学校・高等学校へ異動。その後、2014年に校長に就任し、2018年からは追手門学院中・高等学校校長を務める。
今回の対談前には、笠松さん出演の新作舞台『モンスター』の大阪公演にも駆けつけて鑑賞。笠松さんの生き方から学び、生徒たちにも互いの自由を承認しながら、素敵な出会いを重ねてほしいと語る。

生徒が臆せず自己開示できる学校でありたい

木内校長
先ほど(講演会および質疑応答で)『創造コース』の生徒たちをご覧になって、どのような印象を受けられましたか?

笠松さん
思った以上に活発に発言してくれたので、私も助かりました(笑)。自分の考えを臆さず発言できるのはすごく大切ですが、一般的にはそれができない若者は多いと感じます。あれだけ率直に自分の思いをみんなの前で発言できるのは、やはり学校の空気感がいいんだろうなと。

木内校長
そうですね。『創造コース』は、入学当初から自己開示も含めて授業でもいろいろな取り組みをしているので、いわゆる心理的安全性につながっているのかなと。生徒たちは「こんなことを言ったら笑われるかも」といった心配から、一歩抜け出したところにいるのではないでしょうか。

笠松さん
自己開示のような活動を学校で取り組んでいるのは、すごく斬新なことだと思います。

木内校長
『創造コース』では他コースとは違い、あえて進路目標みたいなものを掲げていません。自分を知り、他者を知り、社会を知って、自分のキャリアを選び取っていこうというコース設定なのです。そのなかで考えて自分が決めた進路なら、それは大学でも専門学校でもいいし、就職してもいいと考えています。


高3の11月に、急きょ希望進路を変更

木内校長
自分を知って、自由に進路を選ぶという意味では、笠松さんの進路選択と通じるものがあるかもしれません。笠松さんも、高3の11月に急きょ希望進路を変えて東京藝大を目指されたのですよね?

笠松さん
そうなんです。「将来は絶対に劇団四季に入る」と決めていたのですが、ある(劇団四季の)プログラムの出演者全員が東京藝大声楽科の出身で。それで「東京藝大に行かなきゃ劇団四季に入れない!」と思い込んじゃって(笑)。でも、芸術系の大学は試験の課題曲なども全部異なるので、志望校を変えるということは、これまでやってきた受験対策も一からやり直しになるのと同じです。案の定、現役時は不合格だったので、一浪して入学しました。
特に覚えているのは、追手門学院の先生方がすごく喜んでくださったことです。

木内校長
やっぱり生徒のことは自分のこと以上にうれしいものですからね。

笠松さん
大学受験とはいえ「芸事」の世界なので、(一般的な受験生と比べて)孤独と向き合うしかないんですよ。そんなに喜んでもらえることが、本当にうれしかったです。


「追手門」の一言だけでつながれる、見守ってもらえる

木内校長
本校を卒業して、一番よかったと思えることは何ですか?

笠松さん
先ほどのお話にもありましたが、生徒に「考えさせる」時間を多くとってもらったことですかね。もちろんある程度指針は示してくださるんですけど、一概に押し付けてくるのではなく、自由にさせてくれたと思います。

木内先生
人生の主人公は自分ですからね。自分の人生や意思決定に自分が主体的に関わるという、その文化は今でもずっと続いていますね。

笠松さん
それと、卒業後に強く感じたのは、追手門学院という学校グループの大きさです。山桜会(同窓会)にすごくたくさんの方がいらして、私なんてたかだか高校3年間通っただけなのに、「追手門の子なのね」と大先輩からもかわいがっていただけます。舞台を見に来てくださったり、お花を出していただいたり、離れていても見守っていただける空気感は、追手門学院でよかったと心から思います。

木内校長
今や学院全体で、0歳児から大学院生までいますからね。それでも、同級生や同窓の仲間を大事にする土壌はすごく強いと思います。
先日も高校アメリカンフットボール部の試合を観戦に行ったのですが(※同校は2024年全国大会優勝の強豪)、中高の卒業生ではない学院同窓生の方も応援に駆けつけてくれていました。「追手門」という一言だけで、大事にしてもらえる……これは貴重な結びつきだと思います。


「好きなことをしている自分」の割合を増やす生き方をしてほしい

木内校長
作家の平野啓一郎さんが提唱される「分人(ぶんじん)主義」という概念があります。状況や環境に応じて個人が使い分けるさまざまな人格のすべてが「本当の自分」と認める考え方です。
笠松さんが生きる芸術の世界には「これでいい」という正解がありませんよね? 挑戦してもうまくいかないことだって多い。そういう不確実な状態に置かれたときにそれを受け入れる力、「ネガティブ・ケイパビリティ」というのですが、これと「分人」って繋がる部分がありますか? すべてが本当の自分であるなら、できるだけ「好きなことをしている自分」の割合を増やすようにしているのかな、と思いまして。

笠松さん
私はたぶん、ストイックなほうだと思います。東京藝大に入るのが自分の絶対の道だと決めた瞬間からストイックになって、その結果、合格もできました。そういう成功体験を持っているので、ストイックでなければ失敗するんじゃないか、っていう考え方になるときはありますね。
だからこそどこかで息を抜くと言うか、楽にいられる時間を作るように意識していると思います。犬と遊んだり、ドライブやお料理をしたり、映画を観たり。あと、お笑いも大好きです。そうやって自分が楽しくいられるものを選んでいるので、先生のおっしゃるように、割合として自分の中に「楽しい」を増やそうとしている部分はあるかもしれませんね。

木内校長
やはりそうですよね。突き詰めすぎるとしんどくなる一方ですものね。

笠松さん
芸事って、ここまでくれば終わりというゴールがありません。年月によって価値観やアートに対する感覚も変化しますから、あのときの自分は素敵に作ったつもりでも、「もっとこうしたほうがいい」と、表現を作り直すときもあります。
一番好きなことを仕事にできたぶん、そこで悩むのはすごく贅沢なことだとわかってはいますが、その悩みと本気で戦っているからこそ、息抜きに他の好きなものにもできるだけ触れていたいです。いずれも、本当の私だと思います。

木内校長
人が豊かに、幸せに生きるためにはそれが必要なのでしょうね。


一生けんめいやった結果には、すべて意味がある

笠松さん
私にはたぶん「足るを知らない」ようにしている部分があるんです。「豊かでありたい」と思って生きているというか。もちろん成果としての豊かさは、ご縁だったり運だったり、タイミングだったりによる部分も多いです。ただ、そういう縁や運を強くするためには、日ごろから自分のメンタルが明るくあることが大事だと思います。

木内校長
「自分が努力したが故に今の自分(の成功)がある」という、あまりにも強い能力主義的な考え方の方もいらっしゃいますが、私はちょっと違うのではないかと考えています。笠松さんがおっしゃるように、人の一生なんて、たまたまの出会いで成り立ってることがほとんどです。そういう意味では、自分が精進して高めた能力や技術も、誰かに喜んでもらうために使うことが大事だと思います。

笠松さん
本当にその通りです。私は高校生のころから「一生けんめい努力した結果として起きていることは、すべて最善」だという考え方を指針にしてきました。すごく頑張ってもダメだったときは、ダメな意味がきっとある。明日か5年後か10年後かわからないけれど、振り返ったときに「あのとき失敗してよかった」と思える日が絶対に来ると思っています。だけど、もし頑張らずに失敗したら、それはもう自分のせい。「私が頑張らなかったから失敗したんだ」と、後悔する要素を残したくないんです。


「出会い直し」を紡いでいく学校を目指して

在校時お世話になった先生と久しぶりの再会!

在校時お世話になった先生と久しぶりの再会!

木内校長
私が生徒たちによく話すのは「自由に生きる」こと。そしてその自由は、自分の周りにいる人たちも持っているのだということ。自分の自由を担保するには、隣にいる子の自由も保障しないといけません。本校の学校生活を通して、自分の中に多様性を抱え込めるような出会いをしてほしいと強く思います。
それをふまえて最後の質問です。笠松さんご自身は、追手門学院での3年間でどんな出会いを得ましたか? そして、それがいまの人生にどのような影響を与えていますか?

笠松さん
関西で公演があるとき、会いに来てくれるのがみんな高校時代の友だちなんですよね。当時から、私が歌ったり演じたりしているのを見て「素敵だね」と言ってくれた子たちばかりです。あの時期、そんなふうに人から承認してもらえたことや、自分の「好き」を尊重してもらえる経験を持てたことが、かなり大きいなと思っていて。私が芸事にポジティブでいられるのは、本当にこの学校での出会いのおかげだと思います。それがなかったら、どこかで折れていたかもしれません。ですから先生のおっしゃるように、いまの生徒さんたちにも、自分を大事にするのと同じくらい、周りの人も大事にしてほしいです。それができれば、きっと素敵な仲間に出会えるんじゃないかなと思います。

木内校長
古くからの付き合いであっても、互いに人が変わっていくなかで、新たな出会いや縁が続いていく「出会い直し」という言葉があります。追手門学院がそういう場であるのはとてもうれしいことです。本日はありがとうございました。

追手門学院中学校・高等学校

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