「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」という三つの教育方針のもと、キリスト教的価値観に基づいた全人教育を実践し、よりよい社会を築くために貢献できる賢明な女性を育む小林聖心女子学院。近年のコロナ禍をはじめとする予測不可能な時代、すなわちどのような時代においても生き抜くことができる豊かな人間性を、生徒たちは日々の学校生活を通して身につけています。
同校では約10年前から12年一貫教育として“4|4|4制”という教育スタイルを推進しています。“4|4|4制”とは、小・中・高の12年間を4年ごとに3つのステージで分け、「Stage1(小1~小4)」では全人教育の土台作り、「Stage2(小5~中2)」では主体性の育成、「Stage3(中3~高3)」では実行力のある女性の育成、と発達段階に応じた目標を掲げて指導を行い、学習や生活面での成長を促します。
さらに、ステージの異なる生徒がともに学ぶ特別授業『小・中・高等学校連携教育』では、上級生が下級生を指導し、責任感やリーダーシップ、コミュニケーション力を身につけます。
2021年9月、『小・中・高等学校連携教育』の一環として、“平和大使のお姉さんの話を聞こう”というテーマで、小学5年生を対象に講演が行われました。講師を務めたのは、高校3年生のOさんです。
Oさんは2021年6月、『第24代 高校生平和大使 兵庫代表』に任命され、核の廃絶を目標に、広島・長崎の声を世界に伝える活動に取り組んでいます。
この日は、平和大使としての活動内容をはじめ、平和のために自分たちに何ができるのかなどを語りました。途中、小学5年生に理解してもらうのは少し難しい内容ではないかと感じる場面もありました。ところが、最後の質疑応答の時間では「原爆は広島と長崎に投下されましたが、広島の報道が多いのはなぜですか」「平和大使に興味が湧きました。どうしたらなれますか?」などの質問が投げかけられ、児童たちは大人が感じる以上にそれぞれの受け止め方でOさんの話を理解しようとしていました。
「小学5年生には難しい話ではないかという疑問や迷いはありませんでした。むしろ同じ環境で日々学び、自分と同じ軸を持っている彼女たちならきっと理解できるはずだと思って話をすることができました」とOさん。
これこそが12年一貫教育“4|4|4制”の理想的な成果ではないでしょうか。
『第24代高校生平和大使』兵庫選考会のメンバーで始めたホームページ『Youth Peace Messengers』。「全国の中高生がつながって、平和について考え、核廃絶や国際平和の実現に向けて行動しています」
『小・中・高等学校連携教育』の一環として開催された講演会。平和大使になったきっかけや、やりがいなどを話すOさんの話に、小学5年生たちは真剣な表情で耳を傾け、質疑応答でも積極的に発言する姿が見られた。
『高校生平和大使』に応募したきっかけは?
『第24代 高校生平和大使 兵庫代表』に選ばれた高3・Oさん。「小林聖心は、学力よりも思いやりで人を判断してくれる学校です」
高2の修学旅行先が長崎県で、「長崎で写真撮影をするときは、米軍のVictoryを連想させるため、ピースサインをしてはいけない」という指導を事前学習で受けていたのですが、原爆資料館の前で写真を撮るときに無意識にピースサインをしそうになった自分がいて驚きました。その後、被爆された方の戦争体験談を聴き、一体、私は何を学んでいたんだろうと疑問を感じたことがきっかけです。
本日の講演は“平和”というテーマですが、小学5年生がきちんと理解していることに驚きました。
私自身、小学校から小林聖心で学んでいるので、皆がどのような教育を受けているのかを知っています。たとえば、災害時に皆で募金や寄付などの活動を行うなど、常に周りの人を思いやることが大切だと体験的に学んでいるのです。小学5年生たちは私と同じ小林聖心で同じスピリットを学び、人としての土台があるという確信があるため、彼女たちにとって難しい話をしている感覚はありませんでした。
講演を通じて、最も伝えたかったことは何ですか?
多角的な視野を持つことの大切さです。その理由は“平和”の定義そのものが一つに定まらないからです。小林聖心は、国内外に姉妹校があり、多角的な視野を学ぶ土壌があると感じます。新型コロナウイルス感染症が広がり始めたとき、各国の姉妹校がつながって、お祈りをつなぐリレーをしたのですが、国によって文化や事情が違い、さまざまな立場や考え方があることを学びました。
平和大使の活動を通じて学んだことは?
小林聖心の教育で、他者を思いやる習慣が身についていると感じますが、もっと想像力を働かせて何かができるのではと感じました。さらに、私たちは微力だけれど無力ではないことも学びました。今後は、平和大使としてオンラインで国連とつながって「軍縮」をテーマにディスカッションをするなど、今、私たちができることに挑戦したいと考えています。
2021年8月に行われた『高校生平和集会in長崎』。「高校生平和大使」の活動をふまえて、活動の継続とさらなる飛躍を目的に、全国の高校生平和大使らが長崎県で集会を開催。1日目は、被爆者の方を講師とした講演を開催。
2日目はフィールドワークで、長崎原爆資料館を見学。それぞれの場所の意味や、そこで何があったのかなどを説明してくれたのは長崎の平和大使。その後、意見交換が行われた。
3日目は、若者の力で平和を実現していくために、『若者・高校生早朝集会』が開かれた。原爆で亡くなった方の名前が刻まれた石碑に献花した後、長崎県の第24代高校生平和大使による『若者・高校生・平和宣言』が行われた。