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受験者数・受験率ともに大幅増!2025年度・ 関西圏の中学入試はこうなった! Vol.2【関西圏中学入試・2025 8つのトピック】

掲載日:2025/4/26
TOPIC 1入試日程に大きな変動なし

 入試日程について、目立った動きは見られませんでした。関西圏の私立中学校140校のうち、前年度より日程を前倒しした学校は7校、後倒しは7校、新しい入試制度を実施するなど新日程を導入したのが9校。全体の8割を超える117校が、前年度日程をそのまま継続する形を取っています。 

 入試日程やその変更をめぐっては、各校の生徒募集戦略がベースにあります。競合する学校との入試日が重複しないように日程を調整したり、あえてバッティングさせるなどです。以前は、他校の動向をにらんでギリギリまで入試日程の公開を控える学校も見られましたが、近年は過度な駆け引きなどはあまり見られず、そのぶん、余裕を持って広報活動を行っている印象です。

 午後入試については、前述のように利用する受験生が増え続けていました。ただし、実施校は初日が66校(前年度比2校増)、2日目が46校(同増減なし)とほぼ横ばいで、ここ数年大きな変化はありません。これ以上増やしても過密になりすぎるからか、落ち着いたという印象です。

 また、例年は1月の第2土曜日が統一入試解禁日となりますが、今年は第3土曜の1月18日でした。受験生が例年より少し余裕を持って対策できたのは事実でしょうが、この日程自体が受験動向に特に影響は与えていないと考えるのが妥当でしょう。

TOPIC 2コース新設と改編 今年は10校が実施

 コースの新設・改編を行ったのは、2024年度から4校増となる10校。このうち京都先端科学大学附属と京都橘は、これまで単一コースであったところに新たに複数のコースを設
置したということで、特に注目を集めました。

 全体の傾向としては、いわゆる特進系のさらに上位コースとなる「スーパー特進系」、語学や国際教育に力を入れる「グローバル系」、探究カリキュラムが充実した「探究系」の新設・改編が目立ちます。かつて「コース」と言えば、「特進」「普通」など希望進路や学力で輪切りするのが一般的でしたが、近年は学習内容や学問分野で分ける視点も多く見られるようになりました。従来の「普通コース」に、もっと学びの特色や個性を打ち出したいというねらいもあるのでしょう。

 その他では、女子校から共学化した親和が「スーパーサイエンス」「探究」の2コースそれぞれに、「共学部」と女子のみの「女子部」を分けて設置したことが大きな話題となりました。

TOPIC 3選抜方法の多様化目立った増減はなし

 これまで中学受験は、いわゆる「知識・技能」の部分で、「何を知っているか」という知識量と正確性で優劣が競われてきました。しかし近年は「他の能力も正当に、あるいは総合的に評価しよう」という動きが見られ、多様な入試が導入される学校がみられます。

 具体的には「①自己推薦型入試」「②適性検査型入試」「③思考力型・表現力型入試」が台頭してきたことです。これらの導入により、それまで中学受験に関心がなかった層にも門戸が広がりました。近年、中学受験者数が増加傾向なことにも多分に影響を与えているでしょうが、今年度の実施校数などに大きな変動はありませんでした。

①自己推薦型入試

 多様な入試制度のうち、特に大きく導入校を増やしてきたのが「自己推薦型入試」です。2025年度入試での実施校は、前年度と同数となる55校。2009年度にはわずか
13校だったことを考えると、着実に浸透してきた印象があります。

 大学の総合型選抜とよく似た選抜方法で、原則として教科試験は課されず、人物評価を中心とするのが特徴です。たとえばスポーツや芸術などの習いごと、ボランティア、児童会活動や地域活動、探究活動など、小学校時代に力を入れた活動や、その活動の中で得た成長・能力を評価します。

 通常、中学受験に臨むためには相当の勉強時間が必要です。そのために、好きな習いごとを辞めなければいけない子どもたちも多数いました。しかし自己推薦型入試であれば、自分が好きで打ち込んできたことを題材に、入試にチャレンジできる点も大きな魅力だといえます。

 当初は「学力試験も課さずに入学させて大丈夫か」という懸念もありましたが、学校側としては「何かに打ち込んで頑張れる素養を持つ生徒であれば、入学後に学力は伸ばせる」という考えです。生徒層が多様化することで、生徒同士が刺激を与え合う環境づくりも見込めるでしょう。実際に、自己推薦型入試導入後に廃止した学校がほとんどないことも、一定の成果が得られている証左であると思われます。

②適性検査型入試

 公立中高一貫校が採用している入試方式と類似の内容です。たとえば統計データや資料から読み取るなど、「計算力や論理的思考力を生かして解く社会科の問題」などの教科横断型の総合的な学力が求められます。解にたどり着くまでの過程や理由の解説・記述も求められるため、暗記一辺倒では対応ができません。

 ある意味で特殊な入試であるがゆえに、一般的な中学入試とは対策の内容がまったく異なります。難易度も高いため、並行して対策を行う時間も足りません。そのため、公立中高一貫校を希望する受験生は、始めからそれに絞って対策をする必要があります。加えて制度上、1校しか受験できません。倍率も非常に高く、結果として「公立中高一貫校にチャレンジし、だめなら地元の公立中学校へ」という流れが一般的になっていました。

 しかし、せっかく頑張ってここまで勉強してきたわけです。そこで、公立中高一貫校の併願チャレンジの場として、適性検査型入試を導入する私学が増えてきました。受験生にとって〝本命〟はあくまで公立中高一貫校なのかもしれませんが、レベルが高い受験生が多いのは事実です。そのうち何人かでも自校に来てくれれば、私学としてもメリットが大きいのでしょう。

 ただし、いわゆる〝受け皿〟としての意味合いがあり、作問にも非常に手間がかかる入試です。爆発的な広がりを見せると言うよりは、近隣に公立中高一貫校がある私学が導入している傾向にあります。2025年度は16校(前年度比1校減)が実施しました。

 また、今年の中学受験トレンドのキーワードの一つに「高校授業料無償化」がありますが、公立中高一貫校の魅力が学費的な面にもあったとすると、その強みが削がれる部分もあります。もし今後、無償化の対象地域が広がれば、公立中高一貫校の受験者数が減少する可能性もあるでしょう。その場合、適性検査型入試の実施にも影響が出てくるかもしれません。

③思考力型・表現力型入試

 近年の学力観の変化に伴い、いわゆる数値化されない「非認知能力」の重要性が指摘されるようになりました。この中で特に思考力・判断力・表現力に重きが置かれているのが「思考力型・表現力型入試」です。たとえば身近な社会問題などを取り上げて課題と解決策を述べさせる設問や、グループ討論、プレゼンテーションなどが課されます。

 一般の教科試験のように唯一解がないのは、魅力でもあり難しいところでもあります。考査は評価者(学校)の主観にならざるを得ず、受験生や学習塾は対策が取りにくいのが実情です。そのため、意義や価値は認められながらも、導入校は大きく増えていません。入試の実施に手間がかかっても、「学校として思考力を重視する」という強い姿勢を打ち出している学校が導入している傾向が強いです。

 2025年度は追手門学院・神戸国際・武庫川女子大学附属・神戸山手グローバル・奈良育英の5校が実施しており、実施校数、顔ぶれとも前年度と変わりません。

TOPIC 4英語入試、伸びは鈍化も55校が実施

 前述の自己推薦型・適性検査型・思考力型・表現力型入試に加えて、従来の入試と内容が変わってきた部分として挙げられるのが「英語入試」の存在です。中学受験における入試科目は、4科もしくは3科からの選択が一般的です。国語・算数が必須で、理科と社会から選択(あるいは両方)となります。これに加えて、英語も選択肢に組み込まれるようになってきたのです。2025年度は、前年度比2校増となる55校が実施しています。

 内容は筆記・英語面接・リスニングなどが中心で、選択科目の一つに設定する学校、必須科目とする学校もあれば、「英語のみ(英語1科)」での受験が可能な学校もあります。レベルも帰国生並みの語学力を求める学校から、英検準拠で4級程度を想定する学校までさまざまです。加えて、英語入試を導入し、かつ「算数なし」で受験可能な学校も24校ありました。中学受験の算数は特殊な計算法などの対策が必要で、塾通いが必須と言われますが、「算数なし」ということは、塾通いをしていなくてもチャンスがあることを意味します。「英語が好きでキッズ英会話教室に通い続けていた」という子どもたちに、中学受験の門戸を開きました。

 ただし、一時期に比べると導入校数の伸びは鈍化していると言えます。小学校で英語学習(外国語)が成績評価の対象となり、教科化・必修化されたのが2020年度。これと前後して英語入試の導入校が激増したものの、数年が経ち、小学校英語はまだ「教科」として国語や算数と同列に扱われるほどには成熟しきれていないのでしょう。「まずは英語に親しむ」というレクリエーション的な側面もあるため、これをもって入試科目(学力)として評価することに躊躇しているところがありそうです。

 そのため、入試科目として導入するよりは、後述する英検準拠の加点方式を採用する学校が多い傾向があります。いわゆる進学校は「国語・算数の試験を必須にして学力を担保しつつ、選択科目として英語も選べる」スタンス、グローバル系に注力する学校が「英語必須」「英語1科」などの〝尖った〟入試制度を採用するスタンスといってよいかもしれません。

TOPIC 5検定や複数回受験で加点制度が充実

 英語入試と並んで、英語力を評価対象にしているのが「加点制度」です。英検等の所有資格に応じて試験の合計点数に加点がされます。2025年度は67校(前年度比3校増)が実施しました。おおむね英検5級以上が対象となることが多いですが、評価方法や基準は学校によってさまざまです。ほか、漢検や数検、理検なども加点の対象とする学校もあります。

 一方で、ここ数年でじわじわと増加しているのが「同一校を複数回受験した場合」の加点制度です。前期入試で不合格だった受験生が、別日程で再挑戦した場合に5~10点程度が加点されるというもので、採用校は39校(同5校増)で、大阪桐蔭・清風南海・六甲学院・東山・奈良学園が2025年度から新たに導入しました。

 全体としては「進学校」と称される学校の導入事例が目立ちます。再受験するということは、それだけ「どうしてもこの学校に入りたい!」という受験生の熱意だと見なし、入学後の伸びに期待して優遇する制度だと言えるでしょう。

TOPIC 6科目選択では1科目入試に注目

 その中で注目したいのは「1科入試」の台頭です。文字通り得意な科目一つに絞って受験し、一点突破をねらえる制度として人気を博しています。国語か算数のどちらか1科で受験するスタイルが主流です。中には追手門学院大手前や姫路女学院のように「理科1科」を取り入れる学校のほか、前述の「英語1科」を採用する学校も14校ありました。どの科目で受験できるかは各校がどのような教育を重視しているかの姿勢の表れでもあるため、志望校選びの指標にもなるでしょう。

 全体的には算数1科が圧倒的に多いようですが、選択式で1科を選ぶ方式の場合、実際に受験生がどの科目でチャレンジしたかはデータ上不明です。

TOPIC 7プレテストは91校が実施

 会場も時間も本番と同じ条件で、試験問題の傾向も体験できるため、多くの受験生が利用するプレテスト。2025年度は近畿大学附属和歌山が新たに導入し、実施校は全部で91校となりました。

「テスト」とは言え、受験生は志望校で実際の先生や生徒と接する機会ができ、学校側は受験者数の票読みがしやすくなる、受験イベントとしての色合いも濃い制度です。各校が複数回実施することが多く、中にはのべ1000人超の受験生が参加した学校もありました。

TOPIC 8兵庫で共学化の波今年も2校が共学に

 2025年4月より、兵庫県の神戸山手グローバル(旧神戸山手女子)と親和の女子校2校が共学となります。前者は校名にもあるようにグローバル教育に注力すること、後者は女子部と共学部を併設し、女子校の良さも残していることが特徴です。兵庫では昨年度も男子校の滝川が共学化しており、かつ2026年度には女子校の松蔭と園田学園も共学化を発表。入試動向への影響が注目されます。