受験者数は過去10年内で最高値を更新
2026年度の関西圏私立中学入試、その初日となる1月17日午前入試の受験者数は、1万7854人となりました。前年度比で207人増、2023年度から右肩上がりで4年連続の増加となっています。
この1万7854人という受験者数は、過去10年との比較でも最多であり、母数となる小6児童数自体は少子化の波で年々減少していることも鑑みると、大盛況だったと言ってよいのではないでしょうか。
また、2026年度の動きとして注目されていたのが、「高校授業料無償化」(以下、無償化)の影響です。中学入試と無償化は相関性がないように思えますが、着実に影響を与えているといえます。なぜなら、経済的事情で私立中高に6年間通わせるのは難しくても、高校の3年間だけでも授業料が無償化されるのであれば、中学3年間くらいなら支出は可能だという世帯が増えるからです。
実際に、前年度は受験者数が激増していましたが、これは他府県にさきがけて無償化を決定していた大阪府の学校が、その増加の要因となっていました。その後、無償化が全国展開されることがほぼ決定し、2026年度は大阪以外でも数値を伸ばす結果となったのです。もちろん、無償化だけが要因ではないでしょう。「選抜方法の多様化」「コース改編」など、各校が学校の魅力や入試制度を改善していったことも、着実に実を結んだものだと思われます。
受験率は10.9%を記録!

どれだけの小6の児童が私立中学を受験したかを示す「受験率」(=初日午前受験者数÷関西2府4県の小6児童数)で過去最高だったのは、前年度に記録した10.6%でした。この時点でも目覚ましい結果だと言われましたが、2026年度入試ではそれをさらに超える結果に。過去最高を2年連続で更新する10.9%に達したのです。
これまで長らく、関西圏で中学受験をするのはおおむね“10人に1人”(受験率10%)だと言われてきました。しかし、今年度は11%目前にまで迫り、ほぼ“9人に1人”が中学受験をする時代へとその様相を変えつつあります。
ここ10 年を見ても、前年度比で受験率が下がったのは2021年度のみ(9・8%)。これは、コロナ禍の影響で十分な受験勉強や対策ができず、経済的にも先行きが見えにくい社会不安も直撃した世代であり、例外と言えます。それを考えると、関西圏の中学受験熱は着実に足場を固め、かつ上昇気流に乗り続けていると言えるでしょう。
中学受験は学力中間層へ
このように、受験者数・受験率ともに非常に好調だった関西圏の中学受験市場。そこには、無償化の全国展開が強く影響したであろうことは、先にも述べたとおりです。
ここでもう少し掘り下げて注目してみたいのが「無償化によりどのような層が新たに中学受験に挑戦するようになったのか」です。結論から言えば、特に増えたのは、いわゆる学力中間層の子どもたちです。
これまで中学受験といえば「経済的に余裕がある家庭で、勉強が得意な子がするもの」という先入観が少なからず存在していたのは事実でしょう。一方で、私学の先進的な学びや充実した施設・設備など、恵まれた学習環境自体は広く認知されていました。
そうした私学への潜在的なニーズが無償化によって掘り起こされ、これまで「自分には関係ない」「わが家には無理だ」と検討すらしていなかった層にとって、中学受験が身近で現実味のある存在になったのです。高校入試に目を向けても、今年度、大阪の私立高校入試の専願率は過去最高の36.6%を記録しました。それだけ私学を第一志望とする受験生が増えたわけですが、もともと「私学の取り組みや環境は魅力的なので、行けるなら行きたい」というニーズがあったところに、無償化で私学への進学が一気に具体化したと見ることができます。
中学受験に話を戻すと、今年の傾向として目立ったのは、いわゆる最難関校の受験者数が軒並み前年度より減少したことです。ただ、毎年多少の変動はあれど、常に安定した人気を誇るのが最難関校。今年の数値のみを見て右往左往する必要はないでしょう。
しかし、中学受験が学力中間層へと波及したことで、志望校選択の価値観が多様化していると言えそうです。この層では、「少しでも偏差値の高い学校へ」という考え方はあまり重視されません。それよりも「校風が自分(わが子)に合っているか」「面倒見が良さそうか」「のびのびと学校生活を送れそうか」という、学力や知名度以外の軸で学校選びをする受験生が多くなります。建学の精神に基づいて独自の教育を追究するのが私学本来の魅力だとするなら、非常に理にかなった学校選びだと言えるかもしれません。
もちろん、偏差値を軸に学校を選ぶ受験生も依然多く、それらも含めて、志望校選択の価値観はより多様化していくでしょう。そして、その多様化や選択肢の増加が、中学受験市場そのものを活気づけていくはずです。

帝塚山学院

東山








