2023年度入試 学校説明会・学校公開イベント
2023年度入試に向けた 学校説明会の開催状況は?
コロナ禍3年目の学校説明会・学校公開イベントは、従来の来校型のスタイルが復活してきています。同時に、オンライン学校説明会も定着し、SNSを活用した情報発信も増えてきました。学校情報の収集は、今や多チャンネル化しています。便利なツールを上手に使った“スマートで賢い学校選びのコツ”とは?森上教育研究所の高橋真実さんに伺います。
来校型の学校説明会が復活
オンラインでの情報発信は増加傾向に
コロナ禍3年目となる2023年度入試に向けた学校説明会の実施状況は、コロナ禍前の状況に戻りつつあるという印象です。ただ、新型コロナウイルスの感染状況に配慮しながらの開催のため、人数制限を設けた予約制で行うケースが多いようです。
なかには、来校型の学校説明会を行いつつ同時に動画配信もする“ハイブリッド型”で実施している学校もあります。「より多くの受験生家庭に説明を聞いてもらおう」と、学校側もさまざまな工夫をしているのです。
また、このコロナ禍の2年間で大きく変わったのは、SNSを活用する学校が増えたことです。FacebookやInstagram、Twitterなどを使って、学校の日常風景や学校行事の様子などを発信する学校が増えています。学校によっては、生徒による広報委員会などを組織し、生徒が発信内容を提案するケースも。また、LINEを情報発信や受験生家庭への連絡ツールとして活用している学校もあります。
保護者にとってSNSが当たり前のツールになった現在、学校は試行錯誤をしながらSNSでの発信を始めています。今はちょうど、学校が情報発信を模索する変革期と言えるでしょう。
来校型とオンラインを併用し
スマートな学校選びを
そのようななかで、効率的な学校選びを行うには、来校型とオンラインの特性やメリット・デメリットを把握して、上手に使い分ける必要があります。
たとえば、第1志望校はだいたい決まっていても、併願校選びはギリギリまで模索するご家庭もあるかと思います。そんな時のために、オンラインで自宅にいながら情報を集め、候補校を絞り込むことは有効な手段です。
多くの学校では、学校の教育理念や教育内容、大学進学実績などの基礎的な情報については、ホームページで発信しています。しかも最近は、動画による校長先生のお話や校舎見学、部活動紹介など、見せ方も工夫されていますので、パンフレット以上の情報を得ることができるでしょう。また、こうした情報の視聴には、意外と時間がかかりますので、隙間時間を上手に使い、早い時期から少しずつ見ていくのが良いと思います。
そこで興味をもった学校は、来校型の学校説明会やオープンキャンパス、授業体験などに参加し、学校の空気感を肌で感じてください。在校生が相談コーナーで対応する学校もありますし、コロナ禍を機に少人数での学校案内ツアーを行う学校が増え、それも定着しつつあります。
実際に学校に足を運ぶと、学校の雰囲気や生徒の様子など、その場に行かないとわからないことがわかります。オンラインと来校型、それぞれの特色を使い分けて、スマートな学校選びをしましょう。
スマートな活用法
来校型・オンライン 学校説明会
オンライン学校説明会が増えたことによって、実際に足を運ぶべきか、オンラインで済ませるべきか、スケジュールに合わせて選択できるようになりました。それぞれのメリット・デメリットを整理して、上手に使いこなしましょう。
たくさんの学校を見て
「わが家の選択基準」を明確に
学校選びにおいては、できるだけ多くの学校説明会に参加することをオススメします。比較することで見えてくるものは多いはずです。そうするうちに、自分のなかでぼんやりとしていた「学校の選択基準=軸」がはっきりしてきます。学校の良さや特色を“見る目”が養われていくわけです。
とはいえ、たくさんの学校を回るのは時間も労力もかかります。そんな時こそオンライン学校説明会を積極的に活用しましょう。
学校を見るうえで重要なのは、学校の教育理念がご家庭の教育観にフィットするかどうかを確認することです。ご家庭には、わが子はこういう人間に育ってほしいという希望や、教育で大事にしたいことがあると思います。それが中高6年間を過ごす学校の考えとマッチしているかどうかは重視すべきです。
また、オンライン学校説明会では、どんなプログラムを用意しているかにも学校の姿勢が表れます。ある学校では「生徒のリアルな日常を見せたい」と、朝登校してからの学校生活を撮影した動画を披露していました。ワイワイとにぎやかな授業中や少し散らかった教室など、何ひとつ隠すことのない雰囲気が「この学校に入ると、こんな感じの学校生活なんだな」と想像させる動画になっていましたね。
学校選びの入り口には、「通学可能範囲」のほか、「偏差値」や「大学合格実績」などがあると思います。しかし、それだけで志望校を決めることはオススメしません。入学後「校風が合わない」と感じて、学校生活が続かない場合もあるかもしれません。学校説明会では、学校が何を大切にして教育活動をしているか、生徒をどのような人へ育てたいのか、しっかり見極めてください。オンライン個別相談会を行う学校もありますので、積極的に質問しましょう。
「もっと知りたい」学校には
来校型の学校イベントへ
一方で、実際に学校へ行ってみなければわからないこともあります。オンラインで学校を絞り込み、気になる学校はぜひ足を運んでください。
先生や生徒の雰囲気、わが子が肌で感じる「居心地の良さ」は大切にしましょう。先生方の教育への思いは、やはり直接お話を聞いたほうが伝わりやすいものですし、最近は、生徒が案内役となる学校説明会やオープンキャンパスもあります。
さらに、通学経路の状況、学校の周辺環境や学校敷地内の状況なども、オンラインの情報だけではわからない部分です。受験生保護者自身の目で現地をチェックしましょう。
オンライン×来校型
メリット・デメリット 徹底比較
オンライン学校説明会と来校型の学校説明会。
それぞれの特徴を整理して、学校選びもスマートに!
オンライン学校説明会 | 来校型の学校説明会・学校公開イベント | |
---|---|---|
長所 | 自宅にいながら情報収集できる | 五感をフル稼働して学校を見ることができる |
定員が多く参加しやすい | 学校の雰囲気を肌で感じられる | |
一日に複数校参加できる | 先生の熱意が直に伝わる | |
夜の開催もあり、自宅でゆっくり参加できる | 生徒の姿を見たり、 直接話を聞いたりできる |
|
家族で一緒に視聴して、情報を共有できる | 通学経路や学校の周辺環境がわかる | |
入試日直前に受験を決めた場合でも、 学校の情報を得られる |
施設・設備の実態を確かめられる | |
短所 | 学校の雰囲気が伝わりにくい | 人数制限があり、すぐに予約が埋まってしまうことも |
質問したいことが聞きにくい | 塾の予定や学校行事と重なってしまう | |
情報の海におぼれることも | 移動時間がかかる |

多チャンネル化する学校説明会・公開イベントを上手に使い分けよう!
来校型1 合同説明会
たくさん見たい!
学校と出会いたい
多くの学校が一堂に会して、ブースごとに説明を行います。男子校フェアや女子校フェア、キリスト教学校フェアなど学校のタイプ別や、地域別で行われるケースもあります。一日でたくさんの学校の説明を聞いたり資料を集めたりできるので、学校選びの第一歩としてメリットの大きい催しです。
来校型/オンライン2 学校説明会
この学校のことを詳しく知りたい
各校が独自に開催する説明会。来校型に加え、オンライン開催も増えています。来校型の場合は、説明会後に校内見学や個別相談の場を設ける学校も。オンラインの場合は1時間ほどで、校長先生のお話や教科指導、進路指導など基本的な学校の内容がわかるようになっています。来校型・オンラインともに在校生のスピーチが行われるケースも増えています。
来校型3 入試体験会
入試のヒント!
学校に行くチャンス
本番の入試のように、学校の教室で試験を体験するイベントで、秋~1月に行われます。受験生の試験中、保護者は入試問題の解説や学校説明を受けたりします。具体的な入試のイメージトレーニングになると同時に、入試のお得な情報を得ることもできます。
来校型/オンライン型4 体育祭・文化祭
行事を体感!
生徒の活躍も見られる
学校の特色が色濃く表れる学校行事です。全学年の生徒の姿を見られるので、入学後の成長をイメージしやすいこともメリットです。ぜひ参加しましょう。学校によっては生徒が文化祭特設サイトやSNSを立ち上げていることも。
来校型5 オープンキャンパス
学校生活を体験!
来校型の学校公開イベントです。授業や部活動など、実際の学校生活を体験することができます。在校生たちが案内役を務めることも多く、直接先輩と触れ合い、気軽に質問ができる機会にもなります。
SNS・ホームページ編
6 Instagram・Facebook・Twitter・YouTube
日常の学校生活がわかる!
コロナ禍でなかなか学校公開ができなかったため、FacebookやInstagram、Twitter、YouTubeなどのSNSを使って、学校の日常生活や授業風景、学校行事の様子などを発信する学校が増えています。なかには、生徒が主体となって発信する仕組みを作っている学校もあります。
7 ホームページ
公式情報を24時間見られる
多くの学校でホームページはていねいに作られており、教育理念やカリキュラム、大学進学実績などの情報が詳しく掲載されています。なかには学校行事や部活動など学校生活を紹介する動画を掲載する学校もあります。
8 LINE
情報を逃さない!
学校の公式アカウントをもち、受験生家庭とつながる学校も増えています。学校説明会の予約開始日が近づくと知らせてくれる学校もあり、説明会予約があっという間に埋まってしまう学校など、受験生保護者にとってたいへん利便性の高いツールとなっています。
- 今後の新型コロナウイルス感染状況により、来校型イベントは変更の可能性もあります。どのように変更になったか、学校の工夫や配慮はあったかなども、見どころといえます。
ここに注目!質問してみよう
学校説明会・学校公開イベント
注目ポイント
基本をしっかり確認することが、結果として無駄のないスマートな学校選びにつながります。このページでは、学校を知るうえで基本となる定番ポイントと、最近の動向から学校を見るポイントを挙げました。注意して話を聞いてみましょう。
今どきポイント
1 コロナ禍の対応
コロナ禍では、多くの私学でオンラインの授業が行われただけでなく、オンラインでホームルームや個別面談が行われました。学習機会の保証と同時に、生徒のメンタル面にも配慮があり、私学の面倒見の良さが発揮されました。コロナ禍の対応の中身をしっかりと見ることで、学校の生徒に対する思いがわかります。
2 ICT教育
一人1台の専用端末を持つことが当たり前になり、さらにコロナ禍でオンライン授業を行った経験から、これまで以上に学習でのICT活用を加速させている学校が多数あります。個別最適化の取り組みや探究学習など、活用方法は多彩です。
3 キャリア教育
キャリア教育は、「自分を知り、世の中を知り、将来どのように生きていくか」をテーマにした学び。学校の取り組みもバラエティに富んでいます。子どもの性格や興味・関心、保護者が子どもの将来に期待するものなどから、学校のキャリア教育に求めるものを考えましょう。
4 探究学習
探究学習は、自ら問いを立てて課題を発見し、知識を活用して課題解決を行う学習法です。今回の学習指導要領改訂において、探究学習は大きな柱の1つです。大学や企業などの外部機関の協力を得て実施する学校もあり、各校の取り組みに個性が表れます。探究学習での取り組みが大学の総合型選抜に結びつくケースもあります。
5 進学指導
2021年に始まった大学入学共通テストでは、知識に加えて思考力や判断力、表現力が評価されます。英語では、民間試験活用はないものの、得点配分やリスニング問題の読み上げ回数の変更がありました。多くの私学は早くからこうした改革に対応する指導を行ってきました。国公立大学でも募集人員が増えている総合型選抜や海外大学進学希望者への対応など、学校ごとの特色も見られます。
定番ポイント
1 教育理念
私学には、創立時のビジョンを表した「建学の精神」や「教育理念」があります。これは私学の教育の根幹であり、日々の教育活動をはじめ、学校生活のすべてに貫かれています。 家庭の教育方針や子どもの個性に合っているかをしっかりと見極めることが学校選びのカギとなります。
2 校風
生徒の自主性を大事にするタイプか、面倒見がよいタイプかなど、校風によって学校生活は大きく変わります。実際に学校へ足を運び、生徒や先生の雰囲気を感じ取って、共感できるかがポイントです。
3 価値観
難易度が同じぐらいの学校でも教育内容や指導方針が異なることはよくあります。その学校が「何を大切にして教育活動を行っているのか」をしっかり見極めましょう。
4 環境、施設・設備
施設の充実は私学の魅力。教育内容に即した施設はあるのか、実際にどのように使われているのかなどもチェックしましょう。自然環境など、学校の周辺環境も教育活動に関係しますので要チェックです。
5 通学
鉄道の接続が進み、通える学校が増えています。乗り換えのしやすさなどを含めた通学環境は、実際に足を運んでみてわかるもの。最寄り駅から学校までの道のりや、学校周辺の環境なども確認を。
塾の先生に聞いた!
先輩保護者のスマートな学校歩き
保護者から相談を受けることが多い塾の先生おふたりに、オンラインとリアルの学校説明会の活用法について語っていただきました。
スマートな学校選びは
「はずせないポイント」を
ご家庭で話し合うことから

栄光ゼミナール教務部
藤田 利通 先生
鈴木 登美子 先生
鈴木
最近、保護者の方から「来校型の学校説明会の予約が取れない」という声をよく聞きます。人数制限があるため、すぐに埋まってしまうそうで。
藤田
今年は文化祭などの行事も、予約制という形で一般公開する学校がでてきましたが、こちらもあっという間に満席だそうです。説明会は、開催日の1カ月前に予約受付を開始する学校が多いですが、実は、これらはWeb申込なので、気軽に申し込みしやすい分、直前にキャンセルが出ることも多いのです。どうしても参加したい学校イベントは、開催日の直前に学校に直接聞いてみるのも1つの手ですよ。
鈴木
それはいい方法ですね。それにしても、多くの学校でオンラインの情報発信にも力を入れるようになりましたね。HPを見ても、内容が充実していて面白いです。各校が特色をはっきりと打ち出すようになってきました。
藤田
特に最近はSNSが活発です。
鈴木
ある学校では、YouTubeでの配信に力を入れていて、校長先生が施設案内をしていらっしゃいました。それも堅苦しくなく、親子で楽しんで見られる内容になっていました。
藤田
LINEを活用する学校もありますね。学校としても、継続してつながりをもつために積極的に活用しています。また、満席となり申し込みできなかった行事も、ライブ配信をしていたり、その時の動画をアーカイブで見られたりするので、楽しみ方も増えました。
鈴木
行きたい学校のイメージがなかなかわかない場合には、合同説明会に参加するのもオススメです。さまざまな学校を見ているうちに、気に入った学校と出会うこともあります。
藤田
合同説明会で、行列ができている学校を見たお母さまから「先生、A校はどんな学校ですか?うちも見てみようかしら」と相談を受けたこともありました。
鈴木
Zoom相談会を行う学校もありますから、合同説明会後に申し込んでもいいですね。
藤田
ただ、手軽に情報を得られる反面、「あまりにも情報が多くて選べない」という声も聞こえてきます。
鈴木
それはよく相談されます。情報に流されず、志望校を絞り込むには、「はずせないポイント」をよく話し合うことが大切ですね。たとえば部活動や施設、あるいはご家庭の方針に合った教育理念や先生との相性など、ここが一番というポイントを決めて学校を絞り、その中から次善のポイントでさらに絞っていくといいでしょう。
藤田
志望校を絞る際、迷ったら塾の先生に相談してください。ある程度の希望を伝えると、いくつかの学校を提案してくれると思います。絞り込まれた学校について、HP等で情報収集していくのが、一番スマートで効率的な方法だと思います。
鈴木
併願校を検討するのに、HPやSNS、Zoom相談会などは、とても有効です。オンラインで絞り込んで、これぞという学校へ実際に足を運ぶのが良いと思います。保護者の皆さんも忙しいですから。
学校の真の姿は
学校に行って確認しよう
藤田
やはり実際に学校を見てわかることは多いですから、ぜひ学校には行ってほしいです。学校説明会で直接先生の話を聞くと、教育に対する熱意が伝わってきますよね。
鈴木
オープンスクールや体験授業などにお子さんを連れて行くと、モチベーションアップにつながることも多いですね。
藤田
私の教え子で、オープンスクールで理科の実験を見て感動し、その学校を志望校にした子がいました。
それから、秋~冬に行われる入試体験会などのイベントは、ぜひ参加してください。入試のヒントを得るだけではなく、学校に行くチャンスの一つとして捉えるといいと思います。ここ数年は学校に行ける機会が減り、入試当日に初めて学校に行くケースも多くなりましたからね。
鈴木
在校生の様子を見るために、登下校の時間に学校の前に行くだけでもいいと思います。
生徒たちを見ていて思うのは、「合格した学校は相性がよい」ということです。入試問題と相性がよいということは、入学後の定期テストとも相性がよいということ。学校見学などに行けなかった学校に入学したとしても、自信をもってほしいですね。