中学 受験plus

2022年度
関西圏中学入試を振り返る

2022年度の関西2府4県の統一入試日は1月15日。
昨年より引き続き新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、本番を迎えた受験生たち。
“コロナ禍2年目”となるこの状況は、受験生や学校、中学受験市場全体にどのような影響を与えたのでしょうか。
入試結果を振り返り、その動向を見ていきましょう。

※掲載データは弊社アンケートに基づいています。(2月2日時点)

掲載日:2022/4/18
コロナの影響が続くのか
それとも明るい兆しが見えるか

 2013年度入試の8・7%を境に、2020年度の9・8%に至るまで6年連続で上昇カーブを描き続けてきた関西圏の中学入試受験率(小学6年生人口に占める初日の受験者数の割合)。加えて2019年度・2020年度は、受験者数も2年連続で増加するなど、活気ある動向を示していました。
 その右肩上がりの傾向に水を差したのが、新型コロナウイルスの流行です。コロナ禍1年目となる2021年度(昨年度)入試は、受験者数・受験率ともにわずかながら減少傾向に転じてしまいました。多くの学校で説明会・イベント等が中止や延期に追い込まれるなど、受験生と学校が接点を持つことすらままならず、家庭ではコロナ不況による経済的な不安もあるなかです。今の時点では収入に影響がなかったとしても、中高6年間を私学に通わせるという長期的視野に立った場合、保護者としては慎重にならざるを得ない面があったのかもしれません。ただ、これほどまでの社会不安に直面しても微減で済んだのは、中学受験界自体の“基礎体力”が上がってきたからだと考えることもできました。
 そして、「来年にはコロナも収束しているのではないか」という希望もむなしく、第6波の真っ只中で受験シーズンを迎えた2022年度入試。感染状況だけを見れば、条件はむしろ厳しくなったと言えます。その影響がどこまで出るのか、昨年比でどう転じるのか、予測が極めて難しい状況のなかで注目が集まりました。

感染拡大の影響も少なく
受験率はコロナ前の水準へ

 不安視された感染拡大の影響でしたが、結果を見ると昨年比で受験者数は17170人→17010人と微減、受験率は9・7%→9・8%と微増となりました。この数字をどうとらえるべきでしょうか。
 この2022年度入試の受験生は、新型コロナの感染拡大が始まった時は、大多数の児童が本格的な中学受験準備を始める小5への進級時でした。当時、中学受験塾への入塾がいったん見送られる現象が起きました。その後、コロナがいったん落ち着いたタイミングで入塾が進み塾生は戻りつつありましたが、一定数が中学受験を見送った結果と言えます。
 一方では、コロナ禍によって、私学の価値が再認識されたことも見逃せません。
 2020年のコロナ休校期間に、「子どもたちの学びを止めるな」をスローガンに、日本中の学校がその対応に追われました。オンライン授業やオンラインホームルーム、オンライン部活動などで対応したのは記憶に新しいところです。家庭に端末や通信環境がない生徒には、パソコンやWi-Fi機器の貸し出しを行う学校もあるなど、手厚く小まわりのきいた対応も光りました。
 しかし結果として、実際にそれを実施できた学校は私学が目立ちました。公立校は、私学に比べると全体的にICT環境の整備で遅れを取っている傾向があったためです。もちろん、公立校の先生方も「いまできること」に全力を尽くしましたが、プリントで課題を郵送するなどが精いっぱいでした。仕方のないこととはいえ、公立校に通う生徒やその保護者からは「私学と比べると不安がある」という嘆きが出ていたのは事実です。

統一入試日の初日午前受験者数と受験率の推移
最難関校へのチャレンジを控え
安全志向が働いた可能性も

 このように、全体的には少なからずコロナの影響を受けた関西の中学受験界ですが、2022年度特有の傾向も見られました。いわゆる“最難関校”で受験者数が減少するケースが目立ったのです。
 コロナの影響で、受験生や保護者が積極的に情報を集めにくい状況下です。そのため、知名度の高い最難関校やブランド校に人気が偏るのではないかと見る向きも一部にありました。しかし実際には、予想と反する結果になったのです。
 これには心理的な「安全志向」が影響したのかもしれません。ただでさえプレッシャーのかかる中学受験。多感な年ごろの受験生たちが、コロナによる「非日常」を抱えながら受験勉強を続けるのは大きな不安だったことでしょう。国立成育医療研究センターの調査によると、約70%の子どもたちが、コロナで何らかのストレスを抱えていることがわかっています。もちろん保護者も日々の不安は平常時よりも多かったはずです。受験対策が十分に行えなかった、あるいはそのように感じたことで、チャレンジ的な受験を回避し、より確実性を求めたのではないかと推測できます。

来年度まで含めて
注意が必要

 引き続き、コロナの影響は中期的な視野で見ておくことも重要でしょう。2023年度〜2024年度の入試にも何らかの影響を与えると考えられます。
 もちろん、再び社会が落ち着くと同時に新年度が始まれば、中学受験熱は一気に加速することも予想できます。期待しつつ注視を続けたいところです。

2022年度 関西圏
中学入試6つのトピック
TOPIC1
午後入試は増加
日程を変える学校も

 多くの学校は統一入試日の初日、あるいは2日目に入試日程を設定します。学校側の視点だけで見れば、できるだけ早く入試を実施して、できるだけ早く合格通知を出したいのはどの学校も同じ。そのぶん入学者が増える可能性が高くなるからです。
 一方、受験生の戦略として、複数の学校を併願するのは一般的なこと。しかし、入試日程がこの2日間に集中してしまうと志望校の入試日程が重なり、うまく選んでも、最大で2校しか受験できません。チャレンジさえできないままあきらめた志望校もあったでしょう。
 そこで導入されたのが「午後入試」です。入試の開始時間を午後に設定する学校が出始め、1日に2校を受験できるようになりました。統一入試日から2日目を加えると、最大で4校に挑戦することも可能です。
 また学校側も、他校との入試日程の重複を避け、より多くの受験生に挑戦してもらいやすくなりました。
 このような両者のメリットから、ここ数年、午後入試の受験者数は右肩上がりが続いていました。2022年度も初日で9970人→10145人となり、2日目は6817人→7169人へと増加。トータルでは昨年を上回る活況だったと言えます。
 加えて注目したいのは、午後入試の「受験率」です。初日の午前に試験を受けた受験生のうち、午後も受験したのは59・6%。つまり、およそ6割の受験生が午後入試を活用するということであり、すっかり定着したと見てよいでしょう。
 この影響を受け、3日目以降に入試日を設定する学校は以前より少なくなりました。つまり、2日目までに勝負がつく“短期決戦化”が進んでいるのです。この傾向は今後も続くと思われます。
 また、こうしたなかで、全体のバランスや動向を見ながら入試日程を変更した学校もあったようです。たとえば、関西創価のように長らく2日目に設定していた入試日を、初日午前に移動させた事例もありました。
 多くの場合、受験生は初日午前に“本命”の第一志望校を、初日午後以降に併願で第二志望校を受験する傾向があります。翌日には結果が発表されるため、もし初日で合格できていれば以降の受験は辞退してしまえるからです。そこへこのような日程変更が出てくる場合もありますから、併願校選びや入試日程には、気をつけておく必要があります。

TOPIC2
コースの新設と
改編が進む

 2022年度入試では、11校がコースの新設・改編を行っています(P.35)。マイナーチェンジしたものから、大幅な刷新を行ったものまで多種多様ですが、目立ったのは東洋大学附属姫路。同校はこれまでコース制そのものを敷いていませんでしたが、新しく「一貫SP」「一貫SA」を設置しました。
 新設・改編されるコースの内容は、昨年度は“探究”をテーマにしたものが多く見られましたが、今回はそれに加えて“特進系”をさらに強化する動きが目立ちました。
 コース編成に動きがあるということは、その学校が新しいチャレンジを始めようとしていると言えます。大きな教育改革を行う場合もありますので、コース新設・改編の情報は要チェックです。

TOPIC3
選抜方法が多様化し
英語入試は50校に

 従来の中学入試における合否基準は、試験でどれだけ点を取れるかがすべてでした。良くも悪くも「1点に泣き、1点に笑う」世界です。
 確かに、ある意味フェアな方法ではありますが、たとえば80点で合格した子と、79点で不合格になってしまった子の間に大きな学力の差はないでしょう。特定の他教科に強みを持っていたり、試験の点数には表れない意欲や伸びしろを持っていたりすることは往々にしてあります。
 これは受験生本人にとって残念であるのはもちろん、優秀なポテンシャルを秘めた生徒を逃してしまうという点で、学校側にとっても大きな機会の損失です。そこで近年は、入試における選抜方法を多様化し、多角的に受験生を判定する動きが加速しています。新しい入試制度を導入する学校が増えているのです。
 具体的には「①英語入試」「②自己推薦型入試」「③適性検査型入試」「④思考力型入試」が挙げられます。これまで入試で広く用いられてきた、国・算・理を中心とした学力試験以外の要素で選抜を行う制度です。

① 英語入試

 小学校での英語必修化(教科化)などを受け、入試科目に英語を取り入れた選抜方法です。2015年度入試ではわずか6校が採用するのみでしたが、年々増加し、2022年度に導入校数は50校にまで達しました。
 試験は筆記、英語面接、リスニングテストなどが主流ですが、難易度はそこまで高くありません。帰国生対象や、英語エリート育成が目的のハイレベルなものもありますが、それらは例外と見てよいでしょう。
 確かに、小学校英語の教科化は始まったばかりで、これから児童がどの程度の英語力を習得できるのかは未知数です。結果次第で、今後の英語入試の難易度に変化が表れる可能性はあります。ただ現時点では、英検4〜5級に準拠して出題している学校が多いようです。入試と関係なくとも、英検対策を行っていれば十分対応できるものと思われます。
 また、英会話教室に通うなど、純粋に英語が好きで取り組んできたことが受験に活かせる点でも魅力と言えます。これまで趣味や習いごとにカテゴライズされがちだった英会話も、塾通いと同じような価値を持つことになるためです。以前は「塾に行くために大好きな英会話教室を辞めた」という子も多数いましたが、その必要もなくなるでしょう。
 中学受験のために“勉強一色”の生活にならないでよいという点では、このあと解説する「自己推薦型入試」にも同じことが言えます。

② 自己推薦型入試

 スポーツ、芸術、ボランティア、児童会活動、何らかの探究活動など、勉強以外に主体的に取り組んできたことをアピールする入試です。原則として、現有の教科学力を評価基準にしていないことが最大の特徴で、大学の総合型選抜(旧AO入試)とよく似ています。
 確かに、教科学力による判定要素を省くのは「生徒の学力が担保できない」「入学後に学業についていけず、かえって生徒が不幸になるのではないか」と不安視する意見もあるのは事実です。
 そのリスクを容認してでもこうした選抜を実施するのは、子どもの将来性を評価したいから。たとえば、夢中になって取り組んできた何かを持っているということは、主体性や継続力があると判断できます。そういう生徒は、入学後に学力は伸びる(伸ばせる)という発想です。
 また私学はその特質上、学力や環境が近い生徒で構成されがちです。自己推薦型入試を導入することで生徒層を多様化し、刺激を与え合う環境を作るという点で期待を寄せている学校もあります。2022年度入試では、58校が採用しました。

③ 適性検査型入試

 公立中高一貫校が採用している選抜方式で、答えだけでなく、そこに至る過程や理由、論理性なども説明することが求められる選抜方式です。その特殊性や難易度から、通常の受験勉強と同時進行で対策をするには時間が足りません。これ1本に絞るのが妥当でしょう。
 しかし、公立中高一貫校同士の併願はできないうえ、独特な出題方式はつぶしがきかず、私学との併願も難しくなります。
 そこで、彼らの“受け皿”となるべく生まれたのが「適性検査型入試」です。せっかくここまで受験勉強を頑張ったのですから、仮に公立中高一貫校に不合格でも、もっとチャンスが欲しいところ。そうしたニーズに応える形で支持を集めています。
 基本的に近隣に公立中高一貫校がある学校が採用することが多く、2022年度は15校が実施しました。

④ 思考力型入試

 その名のとおり“思考力”を見る入試で、たとえば「クラス内でもめごとが起こった。あなたならどう解決するか」など、特定の正解がない問題が出題されます。
 思考力が非常に重要な力であることは間違いありません。そして、それを評価しようという学校側の挑戦的な姿勢も評価されるべきものです。
 しかし正解がないだけに、塾や受験生としては対策が難しい面もあります。そのぶん不安のほうが強くなるのか、他の選抜方式ほど多くはありません。7校で実施しています。

TOPIC4
加点制度と
科目選択制度の充実

 選抜方法を多様化する以外にも、さまざまな評価軸を設けて受験生にチャンスを与える学校が増えています。
 代表的なのが英検などの取得資格による“加点制度”です。教科試験の合計点に上乗せして合否判定してくれます。採用校も53校と、年々増えています。
 少しユニークなところでは、同じ学校を複数回受験した場合に加点してくれる制度が20校で採用されています。同じ学校を何度も受けるということは、その学校に入学したいという熱意が高く、入学後にも伸びるであろうとの期待からです。〝難関〟と呼ばれる学校が採用していることが多く、どうしても行きたい学校があるならぜひ活用したい制度です。
 また、入試科目の選択にも柔軟性が目立つようになりました。最も標準的な入試科目は国語・算数・理科ですが、ここから選べるだけでなく、「国語のみ」「算数のみ」の1科入試を実施する学校も12校あります。加えて「英語のみ」のパターンも出てきました。
 さらに、社会科の重要性が見直され、選択科目の中に盛り込む学校や社会科受験を必須とする学校も増加しています。

TOPIC5
インターネット出願
さらに増加

 昨年度、ついに100校超の大台に乗ったインターネット出願システム導入校。2022年度はさらに10校増え、計113校になりました。これで全141校のうち、実に80・1%が導入している計算になります。もはや学校にとっても、受験生にとっても「一般的なこと」の流れになりつつあるようです。

TOPIC6
プレテスト
今年も94校が実施

 一昨年・昨年と同数の94校がプレテストを実施。新しくは京都産業大学附属、新設校である大阪国際でも行われました。
 学校ごとの模試としての意味合いもありますが、受験生にとって大きいのは、会場も時間も実際の試験と同じ条件で行われることでしょう。入試本番と同じ環境を一度でも経験してその場に慣れておくことで、本番では緊張も少なくリラックスして試験に臨みやすくなるためです。説明会やイベントなどオンライン化が進む学校環境ですが、プレテストに関しては、できるだけ現地での開催が望ましいと言えます。
 さらに、結果に対してていねいな解説やフィードバックを行う学校も多く、志望校が導入しているのであれば、ぜひ受験しておきたいところです。

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