中学 受験plus

言葉の魔法でやる気を引き出す!!

新学期を目前として、受験生はもちろん、保護者も緊張度が増してきていることでしょう。
不安な気持ちから、ついマイナスの言葉をかけてしまっていませんか?でも、言葉は“言霊”です。
良い結果を出すためにも良い言葉を使いましょう。
気持ちにゆとりをもって入試本番を迎えるための親子のコミュニケーションについて長年中高一貫校で校長を務めコーチングや心理学を研究されている川合正先生にアドバイスをいただきました。

掲載日:2022/4/18
子どものやる気を引き出す保護者の心得
燃え尽き症候群に陥る
子どもの共通点

 子どもにとって中学受験は、合否の結果が突きつけられる初めての経験ですが、目標に向かって努力を重ねる貴重な機会でもあります。頑張った結果、憧れの学校に合格できれば、モチベーションは上がり、その後の中学校生活は充実することでしょう。たとえ第一志望校でなくても、同じような目標をもった仲間と過ごせる環境を得られたら、それは幸せなことです。
 しかし、第一志望校に合格したからといって「成功」とは限りません。なぜなら、受験後に燃え尽き症候群に陥ってしまう可能性があるからです。
 特に“難関校”と言われる学校に合格した子どものなかには、今までずっとトップを走ってきたのに、入学後は勉強ができる人ばかりで自信を失い、心がポキッと折れてしまうことがあるのです。

勉強以外のすべてを
シャットアウト⁉

 燃え尽き症候群に陥ってしまう子どもの共通点として、「受験のために勉強以外のことをすべてシャットアウトして頑張ってきた」というものが挙げられます。そうした子どもほど入学後、ちょっとしたことで心が折れてしまうのです。
 そうならないためには、自分から「これをしたい!」という気持ち(内発的動機)、これがあるかどうかが大事になってきます。この時期にもう一度、お子さんと「どうして中学受験をするのか」「なぜその学校に行きたいのか」を話し合って気持ちを整理し、お子さん自身の「やりたい!」という気持ちを引き出してあげてほしいですね。

なぜその学校に行きたいのか
振り返りでやる気を引き出す

 中学受験は“親がレールを敷いて子どもを誘導する”のが一般的ですが、子どもにも「受験してみよう!」と思った理由があるはずです。特に第一志望校については、一度は学校見学などに出かけ、事前に情報収集をしていることと思います。その時に感じたことを思い出しながら話したり、中学で何をしたいかを話したりするのも良いと思います。コロナ禍で学校へ行けない場合は、ホームページを見ながら中学校生活をイメージするのも良いですね。

入試に向き合うための
保護者の言葉かけ

 子どもは想像以上に保護者の言葉に傷ついています。ここに『親に言われて嫌だった言葉、傷ついた言葉』を表にしたものがあります。皆さんも、このような言葉を口にしたことがあるのではないでしょうか?
 特に2学期後半から入試直前期にかけて成績が下がると、子どもは「受験したくない」「塾に行きたくない」と言い出す場合があります。そんな時、左の表にあるような言葉をつい言っていませんか? こうした言葉を使えば事態は悪いほうへ転じてしまいます。子どもがネガティブな言動をしてきた場合は、子どもの言葉に共感しながら聞いてあげましょう。
 たとえば「塾に行きたくない」と言われたら、「塾に行きたくないんだね」と共感する。すると子どものほうから「勉強についていけないんだ」と、行きたくない理由を話し出すかもしれません。そうしたら「勉強についていけないの?」と繰り返して共感し、本音が出てくるまで寄り添いながら聞いていきます。そうして自分の言葉を繰り返される形で話を聞いてもらっているうちに、子どものほうから「塾に行ってくる」と言い出すことがよくあるのです。子どもの気持ちに寄り添って話を聞いてあげましょう。

『親に言われて嫌だった言葉、傷ついた言葉』

❶ まったくあなたはダメね → 完全否定
❷ いつもこうなんだから、仕方ないわね → やめたいと言った時
❸ どうせ努力したって大したことはないでしょう →できないところにフォーカス
❹ やる気になったのはうれしいわ。でも続くかしら? → 逆説否定
❺ あなたなんかにできっこないと思うわ → 未来否定
❻ こんな成績じゃ、将来は真っ暗だね。社会では生きていけないよ →脅迫
❼ 今の時期は3時間勉強するのが当たり前だよ →責任転嫁
❽ さっさとしなさい。本当にのろまなんだから →言葉の暴力
❾ あなたのせいで、こんなに白髪が増えたわよ →見当違い。同情を買おうとする
❿ お母さん(お父さん)はどちらでもいいのよ。でも、やらないで困るのはあなたでしょう? →ダブルバインド 二重拘束 突き放し

心理学的アプローチで
子どもの可能性を引き出そう
“怒る”と“叱る”は違う

 ときには子どもを叱らなくてはならないこともありますが、“怒る”と“叱る”は違います。『ブラックエンジン』『ホワイトエンジン』とも言いますが、これはスポーツの世界でよく言われる言葉です。感情に任せて怒る『ブラックエンジン』は、相手の心に一瞬火はつきますが長続きしません。相手のことを考えて叱る『ホワイトエンジン』で勇気づけることで、自分から「やろう!」という気持ちがわいてくるのです。

意識と無意識

 図を見てみましょう。意識が考えて無意識が応援する時、人は行動できます。しかし、日頃から子どもにマイナスの言葉をかけていると、それが無意識の側にたまってしまい、頑張ろうと思っても、「どうせできない」「失敗したらどうしよう」という気持ちにつながって力を発揮することができないのです。思考が現実化するとはそういうことなのです。ですから日常的にかける言葉はとても重要です。「やればできる。大丈夫」というプラスの言葉かけをしてあげましょう。

プラスの言葉かけが
子どもの力を引き出す!

 スポーツの世界でも、昔は監督が上から指示・命令をして選手を従わせる指導が当たり前に行われてきました。選手は怒られるのが嫌だからとりあえず頑張りますが、モチベーションは長続きしません。それどころか失敗を恐れて、監督の顔色を見るようになります。
 これが『ブラックエンジン』です。女子サッカー日本代表チームの監督(当時)・佐々木則夫さんは、そんな選手の様子を見て、選手に考えさせる指導法『ホワイトエンジン』に変更し、W杯優勝という素晴らしい結果を出したのです。
 中学受験は最初こそ親が仕向けたことかもしれませんが、どこかで子ども自身から「頑張ろう」という気持ちがわき起こってくるようにサポートする必要があります。
 なかなかやる気を見せない、あるいは伸び悩んでいる子どもに対し、保護者は不安になって、ついマイナスの言葉をかけてしまうかもしれません。しかし、子どもにとっては初めての経験です。保護者が思う以上に緊張を強いられているため、失敗して保護者を失望させることが怖くなり、あらかじめ言い訳をするようになります。
 実際、「お母さんがうるさいからやる気がなくなった」「塾の先生の教え方が下手だからできない」「塾の仲間は必死に勉強しているけれど、バカバカしい。僕はやらないよ」などと極端な言動として出ることもあります。
 また、勉強すればするほど自信がなくなってしまうこともあります。これは、意識下では「勉強しなくちゃ」と思っているけれど、無意識下にある「どうせダメだ」「ムリ」といった言葉が邪魔をして、うまくいかなくなっているのかもしれません。
 そうした不安な気持ちを抱えている子どもに、「ほら、また失敗した」とマイナスの言葉を浴びせたらどうなるでしょう。ネガティブな言葉が潜在意識にたまっていき、「どうせできない」という気持ちが刷り込まれてしまいます。
 そうならないために、できないことではなく、やってみたらできたこと、つまり成功体験を話してあげて、その時の気持ちを思い出させてあげましょう。これを私は『ヤッター貯金』と呼んでいます。そして、「大丈夫、大丈夫!」とプラスの言葉をかけてあげましょう。

■ 意識と無意識
中学受験を親子の成長の
機会にするための会話術
入試当日の言葉かけと
結果が出た後の言葉かけ
『いいとこ探しは魔法の言葉─園長の問わず語り─』(銀の鈴社)

『いいとこ探しは魔法の言葉─園長の問わず語り─』(銀の鈴社)

 一人で試験会場に入っていく子どもの後ろ姿を見送る時ほど、切ない気持ちになることはありません。試験会場の雰囲気は独特で、緊張するなと言っても緊張してしまうもの。そんな時こそ励ましの言葉が力になります。
「緊張してきた……」と不安な顔をしている子どもに届く言葉をかけてあげましょう。

 ▼承認(気づかせる)
●「緊張するのは本気の証拠!」
 ▼変換(未来に導く)
●「今まで頑張ってきたこと、お母さんはすごいと思っているよ」
 ▼奨励(勇気づける)
●「思い切ってやっておいで。お母さんは応援しているから」
 結果はどうあれ、この経験を親子でプラスにしてほしいと思います。そのための言葉かけを最後に紹介します。
■成績が伸びたり、志望校に合格したときは「すごい!」とただ結果を褒めるのではなく、「毎日毎日努力してきたから合格できたんだね」など、これまで努力してきた過程を褒めてあげましょう。
■併願校に合格した場合、「○□中学に進学することになったね! お母さんはあの学校が好きなんだ。制服もカッコイイし、あなたが中学生になった姿を楽しみにしているよ」と、その学校の良いところに焦点を当てて話しましょう。
 保護者の言葉や態度はそのまま子どもの心に響き、受験期だけではなく、その後の中学校生活にも影響を与えかねません。緊張を強いられる受験生活をストレスなく過ごせるように、心がけたいものですね。

Profile
川合 正 ◉1950年三重県生まれ。学校法人東洋大学京北幼稚園園長、北豊島学園(幼・中・高・通信・専)理事。京北中学高等学校、京北学園白山高等学校の元校長。東洋大学文学部非常勤講師として教員養成に15年間携わるとともに、東京私学教育研究所をはじめ各地の教育委員会や幼・小・中・高教員研修、保護者会など全国で活動。『男の子がやる気になる子育て』(かんき出版刊)、『未来を支える君たちへ』『動ける子にする育て方』(2冊は晶文社刊)など教育関係書籍や論文も多数。

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