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合格をつかみ取れ!併願大作戦2022

コロナ禍2年目の2022年入試に向け、そろそろ併願校を決定する時期になりました。併願作戦で大切なことは、「第一志望校でなくても行きたいと思える学校を選ぶこと」「安全校を受けること」「最後の最後まで粘り強く挑むこと」です。併願作戦を見ていきましょう。

掲載日:2021/10/31
『併願』はなぜ必要なのか?

 いまや、中学受験において併願で複数校を受験することは常識となっています。
 もし1校だけを受験して残念な結果に終わった場合、数年に及ぶ努力の成果は目に見えず、その後に残るのは予想以上のダメージです。しかし複数校を併願し、何校かの合格を手にできれば、“努力は無駄ではなかった” “合格を得ることができた”という達成感が得られるはずです。これはこの先の人生を生きるうえでも、子どもにとって大きな自信となります。
 たとえば、1校だけ受験して不合格だった場合、公立中学校に進学して3年後の高校入試で再挑戦という展開になりますが、その際に中学入試で受けた精神的ダメージが悪影響を及ぼす怖れがあるのです。その経験が起爆剤になればよいのですが、そのようなケースの場合、あまり良い結果を得られてはいません。第一志望校でなくても、たとえ実際には入学しなくとも、合格を勝ちとったという自信が心の支えになりますし、新しい目標設定の目安にもなります。高校入試にも前向きに挑んでいくことができるのです。小6生のメンタルは、極度の緊張で不安定になりやすく、萎縮して力を発揮できないケースが多々見られます。併願には計り知れないくらい大きい“精神面でのメリット”があります。お子さまの『心』に配慮し、ぜひ、複数校を受験させてあげてください。

『コロナ禍』が受験校の選択と併願作戦の流れを変えた

 2021年度の入試はコロナ禍の影響をダイレクトに受けましたが、このパンデミックはいまだに世界を席巻し続けています。ただ、コロナ禍に実施された2021年度入試では、受験者総数・受験率は前年より微減しましたが、受験率は直近10年で2番目の高さという結果になりました。これは近年の『中学入試人気の高まり』を明確に表す結果と言えるでしょう。そして2022年度に関しても、現段階では『コロナ禍入試2年目』となるわけですが、中学受験の人気は継続する傾向が出ています。
 ただし、数年後の入試動向には注意が必要かもしれません。たとえば塾通いなど、中学受験を考える家庭の多くは小4頃から準備を始めるためです。もし、コロナによる経済的な不安や先行きの不透明感から、中学受験に二の足を踏む層が増えていたとしたら、その影響は彼らが小6となる2〜3年後に表れます。
 実は過去にも似た傾向がありました。リーマンショックです。その世界的金融危機が起こったのは2008年度でしたが、2年後にあたる2010年度の中学受験は受験者数・受験率とも激減し、その後数年にわたって低迷を続けました。
 一方で近年は、自己推薦型入試や英語入試の導入などで、従来は中学受験と無縁だった層にもチャンスが生まれています。この追い風にうまく乗って中学受験の裾野を広げられるか。リーマンショック時のように、社会的不安が尾を引くのか。2021〜2022年度入試は、今後の中学受験界において、大きな分岐点となるかもしれません。
 そのほか、2021年度特有の傾向としては“地元志向の強まり”も垣間見えました。たとえば大阪府在住の受験生が兵庫県の学校を受験するのは従来よくあるケースでしたが、これもコロナの影響か、控える傾向があったようです。特に、首都圏などから関西の超難関校を受験する“遠征組”の減少は顕著でした。
 いずれにせよ、数値的な減少にコロナ禍の影響があったのは間違いありません。

学校情報の入手方法も変わった!そして来年度は……

 昨年は感染を避けるため、学校説明会など学校紹介イベントは開催中止が多くなり、また文化祭や体育祭などの見学もできなくなりました。そんな中、各校は『オンライン学校説明会』を開催するなどの方法で受験生に学校情報を発信しました。2022年度はどうなるのでしょうか。
 今年はプレテストもほぼ例年通りに開催されており、進学塾の授業も従来と遜色ないレベルで展開されています。
 また、オンライン学校説明会と並行して、人数を絞る、複数回に分ける、予約制にするなど感染対策を施したうえで、人を集めての学校説明会を開催する学校も増えてきました。また合同の学校説明会なども開催されるようになっています。つまり『コロナ禍以前』の状況に戻りつつあるといえます。
 オンライン説明会の長所は、学校に足を運ぶことなく、多くの学校情報が短期間で手軽に入手できること。そのため学校それぞれの内容を比較しやすくなりました。今年もこの方法を活用し、さまざまな学校の情報を集めたいところです。逆に短所は、実際に学校に足を運ぶ機会が減り、通学路の様子や校内の雰囲気がわからないこと、生徒や先生とじかに接する機会がないため、その学校を“肌で感じられない”ことでしたが、これも、プレテストで学校へ行く機会を大切にする、学校説明会の予約を逃さないようする、個人的に実際に学校に行ってみるなど、工夫をしながら進めていきましょう。
 さまざまなことが流動的な昨今です。今後の情報に注意を向け、受験校選択、併願作戦立案に取り組んでください。

併願作戦のセオリー

受験校選択と併願作戦立案には、中学受験の長い歴史の中で確立されてきた『定石』があります。そのうちのいくつかを紹介しましょう。

セオリー➀学力を基準に受験校を選択する

 第一志望校は校風や教育理念など“学校の中身”で選ぶことが鉄則ですが、併願校の場合は学力を目安に選択することが一般的です(もちろん“学校の中身”も考えに入れて)。
 具体的には、視野に入る学校を偏差値別に❶チャレンジ校、❷実力相応校、❸安全校の3グループに分け、その中から条件に合う学校を選ぶという方法です。ここで大切なのは『難易度のレベル差』をつけて学校を選択することです。学力に見合うからと実力相応校ばかりを選択すると、入試時期に心身の状態が悪かった場合、予想外の不調に陥ってしまうこともあります。

セオリー➁まずは併願作戦の『基本方針』を決める

 チャレンジ志向で、安全志向で、短期決戦で――など併願作戦にはさまざまな方針があります。
 具体的な併願作戦を立てる前に、受験生の性格や個性、第一志望校との兼ね合いなどさまざまな条件を考え、まずは併願作戦の基本方針を固めてください。最初に手をつけるべきは『基本コンセプト』を考えることです。

セオリー③第一志望校は最後まで『不動』

 受験学習が終盤に入ったのに、学力が第一志望校のレベルに届かない。だから第一志望校をあきらめて他校を受験しよう。このような決断をするときは、十分に検討しましょう。目標を下げることにより受験へのモチベーションがダウンし、併願校の入試にも悪影響が及ぶ怖れがあるからです。
 親子でずっとめざし続けてきた憧れの第一志望校は、合格可能性が35%ぐらいあれば、敢然とチャレンジしましょう。ただし、同時に併願校の精査に力を入れて、「入学したい!」と思える第二、第三志望校を見つける努力をすべきです。そして、その学校に入学することも考えて、第一志望校と遜色のない準備を行い、受験に臨んでください。
 第一志望校に関するもう一つのセオリーは、「統一入試日に受験する」こと(その日に入試を行わない学校以外)。なぜなら、その日は最も多くの学校が入試を実施する日時であり、そのため受験生が分散し、より合格しやすい状況となるからです。

セオリー④午後入試の組み入れ方に注意!

 2021年度は統一入試日(1月16日)の午前入試を受けた受験生の6割近くが、同日の午後入試にも挑戦しています。このデータが示すように、併願作戦に午後入試を組み入れることは、常識となっています。
 組み入れる際の注意点は、まず「午前の受験校から、あまり遠距離でない学校」を選択すること。移動時間を十分にとったつもりでも、昼食をとる時間が不十分だったり、途中で交通機関の遅れに見舞われたりする可能性もあるでしょう。余裕をもって到着できる午後入試校を選択してください。
 また、同じ学校でも難易度が違うので注意が必要です。多くの学校では、午前より午後のほうが難易度が高くなっているからです。午後入試は、その学校のレベルより高い学力をもった受験生たちが〝押さえ校〟として受験してくるケースが多く、難易度がアップしてしまうのです。

セオリー⑤算数1科入試など特色ある入試に挑戦!

 近年は算数や国語の1科、あるいは受験生が自らの得意教科を選択して受験するといった、従来の2科・4科入試ではない特色ある入試を実施する学校が増えてきました。
 これは「この教科なら誰にも負けない」という得意教科をもつ受験生にとっては絶好のチャンス。自信をもってチャレンジしましょう。
 ただし難関校の1科入試は午後に実施されるケースが多く、かなりの難易度となっています。挑戦する際は、事前にしっかりとした対策を行っておいてください。

セオリー⑥『同日ダブル出願』も視野に入れる

 同日ダブル出願とは、「同じ日時に実施される『難易度の違う複数の学校』に出願しておく」こと。そして、その前日の入試結果が不合格、または思わしくない場合は『安全校』を、合格、または強い手応えが得られた場合は『チャレンジ校』に挑むという、かなりの高等戦術です。
 インターネット出願が普及したことで、入試直前まで出願できるようになりました。ぜひ上手に活用しましょう。ただし、複数の学校の入試を想定するため、それぞれの志望校対策を行わねばなりません。その分、学習の負担が大きくなるというデメリットがあります。

セオリー⑦『同じ学校への連続挑戦』にはメリットもデメリットも

 何としても、この学校に入りたい!」と強く志望する学校があれば、迷わず『連続挑戦』を選択しましょう。合否判定の際、複数回受験者には何らかの優遇を与える学校は数多くあります。また連続挑戦する中で実際に入試問題への対応力が高まり、合格ラインに届くまで得点力がアップするケースもあるようです。
 ただ、難関レベルの学校に連続挑戦する場合は、不合格を重ねる過程で、受験生が大きくダメージを負ってしまうというデメリットもあります。心理面も考慮し、慎重に併願作戦を立ててください。

セオリー⑧後半日程も視野に入れる最後の最後まであきらめない

 近年は前半戦で納得のいく学校に合格すれば、そこで入試を終了させる『早期決着型』の受験生が増加傾向にあるようです。しかし、統一入試日以降も「魅力的な学校」が数多く入試を実施しています。安易に妥協することなく挑戦を続け、やり切った充実感をもって入試を終えてほしいと思います。

要check!公開模試の活用法
1種類の模試を最後まで受け続けよう

 模試の問題は志望校の入試問題とは当然違うので、良い・悪いにかかわらずその結果がすべてではありません。しかし多くの参加者の中で「自身の学力がどの程度のレベルか」を把握することはできます。合格可能性に関しては、「第一志望校が30%くらい、第二志望校が50%、第三志望校が80%くらいあれば受験してみよう!」というイメージです。9月の現時点で「合格可能性が低い……」と悲観することは全くありません。模試と志望校では、問題が違うのですから。
 公開模試は秋以降、本格的に開催され始めますが、大規模な模試の場合、その数回の試験の中に「すべての学習内容をまんべんなくちりばめる」という方向性で問題が作成されています。したがって1種類の模試を最後まで受け続けることがポイントです。正答率に対し、自分が得点できていない箇所をあぶりだし弱点克服に役立てましょう。

悲喜こもごも!併願作戦のリアル
ケース・スタディ

「併願に救われた」「併願の作戦ミスが命取りに」など、さまざまドラマが巻き起こる併願作戦。
進学塾の現場から、いくつかの事例を集めました。参考にしてください。

ケース ➀
第一志望校への合格可能性30%未満! 
それでも『過去問との相性』で、
見事合格を果たす

 第一志望校の場合は、模試の合格可能性が35%あれば、アグレッシブに挑戦してほしいものですが、可能性が30%未満となると、背中を押すのをためらってしまいます。しかし、そんな学力状況の女子に、第一志望校へのチャレンジを勧めたことがありました。
 女子の最難関校を第一志望とするAさんですが、合格可能性は30%未満で、彼女自身も受験を尻込みしている様子でした。過去問演習の結果をチェックしてみると、算数は苦手で合格にはほど遠い点数。しかし国語は記述形式の問題も含め抜群にできていたのです。その国語の答案を検討した結果、彼女が第一志望校の国語の入試問題と非常に『相性』が良いことに気づきました。そこで記述の添削など過去問演習の指導にさらに力を入れ、第一志望校の入試に送り出すと結果は見事に合格! 逆に難易度が少し下の併願校は不合格でした。つまりAさんは入試問題との『相性』により合格を手にしたのです。模試の問題と志望校の問題は違います。もうすぐ始まる過去問演習で、「志望校の問題との相性」をじっくりと確認してください。

ケース ➁
第一志望校に連続挑戦するも2回とも不合格。
それでも最後の粘りで3回目に逆転合格

 近年、人気と難易度が上昇中の学校を第一志望校に据えたBくん。その学校に強い思い入れがあり、「初日から3回連続で第一志望校に挑戦する」という受験作戦を立てました。しかし、合格できる学力はあるはずなのに、1回目、2回目と残念な結果に。これにはBくん自身も「3回目はもうやめようかな」と諦めムードでした。
 学力的に合格の可能性は十分あるので、そんなBくんに「ここで諦めるのか!」と叱咤激励し、答案を綿密に分析してみました。すると算数の前半部分で惜しいミスを連発し、それが不合格の主たる要因であることが判明。そこで「ここを直せば合格ラインに届いたのでは?」とアドバイスしました。必要なケアを施して「最後のチャンスだから前半部分だけは全力集中で!」と励ましの言葉をかけ、3回目の入試に送り出しました。
 そして結果は、見事合格。受験生の多くは緊張感からか、本来の実力を発揮し切れていないことが多いようです。そんな彼らの心理をいかに支えられるか――周囲の大人の良き言葉かけが、合格のカギになると思います。

ケース ③
“付属校しばり”で併願を組み、
全体のパイの小ささに苦闘。
だが『隔年現象』で狭き門をくぐり抜ける

 大学付属校の人気は近年上昇傾向です。なかでも関関同立など有名大学の付属校は数自体が限られています。Cさんとその保護者は、そんな大学付属校を希望しており、「付属校だけを受験していく」という併願作戦を立てました。
 しかし校数が少ないため、人気の大学付属校はすべて“狭き門”。全滅の危険性もある作戦でしたが、そのうちの1校が合格しやすい状況にあることに気づき、積極的に挑戦することを勧めました。その学校は『隔年現象』(前年に志望者増となった学校は、受験生側から敬遠傾向が出て次の年は志願者減に。その逆の動きもあります)がかなり鮮明に出る学校で、そのデータにかけ、あえて前年に志願者が増えたその学校への挑戦を後押しすることにしたのです。そしてCさんは目論見通り、合格しました。併願作戦を立てる際は「前年の入試状況を分析し、挑戦する年の状況を予測する」という作業も大切となるのです。

ケース ④
午後入試に関する保護者の疑問………
「算数1科入試!? 算数が得意なだけで入学後は大丈夫?」

 午前入試には詳しいものの、午後入試については、まだまだ周知されていない部分がたくさんあります。
 Dくんのお母さまから午後入試の受験校選択に関して相談を受けていた時のこと。Dくんは算数が得意でそれに相応しい学力を有していたので、私はある学校の算数1科入試をお勧めしたのですが、その際にお母さまから素朴な質問をいただきました。
「算数だけが得意な子を合格させて、入学後にきちんと育てられるのですか?」
 その心配はいりません。算数1科で受験したとは言え、その受験生は入試まで4科、あるいは2科で学習しているはず。そのため他教科でも基礎的な学力は身についているのです。また、たとえ算数のみに学力が偏っていたとしても、その学校は「そんな生徒を育てる自信がある」からこそ、算数1科入試を実施しているのです。こうした疑問はたくさんあると思います。遠慮なく塾の先生にぶつけてください。
 ちなみに算数や国語の1科入試は、どれもかなりの難易度になります。併願に組み込む前に塾に相談のうえ、十分な対策を行っておいてください。

ケース ⑤
合格可能性の高い学校で不合格。
自信喪失に陥るが、その後のケアで
第一志望校の勝利をつかむ

 第一志望校への合格可能性が十分のEくん。「まずは一つ合格を得て、本命に向かう勢いを」と程よいレベルの学校にチャレンジしました。ところが意外にも結果は不合格。Eくんは一気に自信喪失状態に陥ってしまいました。
 私たちは「このままでは第一志望校が危ない!」と、急遽不合格の原因究明と彼の心理面での立て直し作業に入りました。原因は中学入試初体験から来る『緊張』のし過ぎ、そして合格可能性の高さからくる『油断』だったのです。私たちはEくんにそのことをストレートに伝え、注意を促し、実際的なケアに入りました。幸い第一志望校の入試までは少し時間があったので、気持ちの立て直しに成功。Eくんは無事、その学校の合格を勝ち取りました。
 まだ幼い受験生の心は、入試本番が近づくにつれ大揺れに揺れていきます。そのことに配慮し、保護者の方々は『子どもの心を守る』ことに全力を尽くしましょう。

大切なのは「平常心」で、いつもの力を出し切ること。
そのために、併願作戦を組みましょう。
最後の最後まで諦めず、粘り強くいきましょう。
そして「やりきった!」という気持ちで、受験を終えましょう。

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