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私立中高進学通信

2025年特別号

学園長に聞く「グローバル教育のビジョン」

北鎌倉女子学園中学校

「世界の中の日本」を見つめ
未来社会を生き抜く力を育む

柳沢先生が指導にあたる「グローバル探究」の授業の様子。
取材したこの時は高1の生徒全員が講堂に集まり、
グループで「ジェンダーギャップ指数」について話し合いました。

 創立85年の伝統を礎としつつ、時代に合わせた教育改革に取り組む北鎌倉女子学園。近年は、英語力を強化し国際理解を深めるグローバル教育を柱の一つとしています。学園長の柳沢幸雄先生に、グローバル教育を重視する理由や、同校ならではの授業「グローバル探究」についてうかがいました。

AI時代に求められる力を養う
「グローバル探究」
学園長の柳沢幸雄先生。開成中学校・高等学校校長を経て、2020年4月に北鎌倉女子学園学園長に就任しました。ハーバード大学で公衆衛生を教えた経歴をもつ、シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の世界的第一人者でもあります。学園長の柳沢幸雄先生。開成中学校・高等学校校長を経て、2020年4月に北鎌倉女子学園学園長に就任しました。ハーバード大学で公衆衛生を教えた経歴をもつ、シックハウス症候群・化学物質過敏症研究の世界的第一人者でもあります。

 北鎌倉女子学園の高校1年生の必修科目「グローバル探究」は、世界や日本をテーマにしたトピックについて議論や論文執筆を重ね、1年間かけて思考力と表現力を磨く授業です。

 探究学習や総合学習は学校ごとの特色が出やすい科目といえますが、同校ではなぜ探究学習に「グローバル」の視点を取り入れているのでしょうか。その理由を学園長の柳沢幸雄先生に尋ねると、次のように答えていただきました。

「社会課題を考える時、世界と比較すると理解しやすくなるからです。日本における課題だとしても、『世界の中の日本』として考えれば見え方が変わってくることがあります。
 日本国内で国際化を感じるような事象が多くあるわけですから、これからの時代、誰もがグローバル化を避けて通れません。世界にはさまざまな人種・文化・伝統があることを知り、そのなかで自分がどう振る舞うのかを考えられるようになることが、本校の教育理念にある『のびやかな自立した女性』の育成につながるのです」

「グローバル探究」では、ディスカッションを通して、生徒一人ひとりが考えを深めていきます。そのうえで自分の意見を400~800字の論文にまとめ、お互いに読み合って推敲し、文章力や表現力を養います。柳沢先生はここで得られる「考える力」「相手に伝える力」こそ、AI時代に必要とされるスキルだと語ります。

「これまで日本の教育の多くは、偏差値の高い大学へ入学することをゴールとしてきました。しかし、記憶力や知識量を競うペーパーテストでは、いまや人間はAIに敵いません。それでは、いま人間に求められるのはどんな力なのでしょうか。 頭の使い方には3つの段階があります。①材料・知識を集め、②知恵を働かせ、③表現する、の3つです。①はAIの独壇場ですから、これから社会に出ていく子どもたちは②・③の力を伸ばしていく必要があります。つまり、知恵を働かせ、自分の考えをきちんと相手に伝えることができる人が、社会の中で確固たるポジションを築けるのです。『グローバル探究』は、まさに②・③を鍛える内容となっています」

世界が広いことを知り、
キャリア選択の幅を広げてほしい

「グローバル探究」以外にも、同校では、ネイティブ教員による少人数制の英語授業や、ICTを活用した海外校との交流、中学3年生からの国際コースの新設など、さまざまな角度からグローバル教育を推進しています。柳沢先生はその意義をこう話します。

「将来を設計する際、たいていの人は、自分の目で見たことのあるものの中からしか選ぶことができません。進路選択の第一歩を踏み出す中高の時期に“世界は広い”と知ることは、キャリアパスを考えるうえでとても大切です」

 グローバル教育は、キャリア教育とも密接に結びついています。続けて柳沢先生は、ロールモデル(お手本となる人物)の重要性についても触れました。

「子どものうちは、自分を教育してくれる人を選ぶことはできません。たとえば、親や学校の先生は選べませんよね。ただ、社会に出た後は、誰をお手本とするかは自分で選ぶことができるのです。ですから中高生のうちに、自分と相性の良いロールモデルを見つけるトレーニングを経験する意義があります。本校はそのための仕組みを用意しています」

 その一つが、大学生となった卒業生が自習室で生徒の相談に応じる「チューター制度」。勉強や進路の相談はもちろん、日常生活の悩みや相談にもこたえてくれるそうです。また、理科(S)・情報(I)・数学(M)を学びたい生徒が集まる課外活動「SIMクラブ」では、柳沢先生をはじめ理系教員がさまざまな質問を受け付けています。学校生活のなかで、生徒は“自分に合う相談相手を選ぶ”という体験を積んでいます。

「生徒たちには、社会人としてある程度のキャリアを積んだ30歳の時に、自信をもって自分らしく生きていてほしい。その土台づくりを私たちがしっかりサポートしていきます」

対話を通じて思考を磨く「グローバル研究」とは

 学園長の柳沢先生が自ら教壇に立ち、論文指導にあたる「グローバル探究」。「名画『モナリザ』を一度も見たことのない人に説明する」「小説『対岸の家事』を読み、共感する登場人物について考える」など、多彩なトピックを通して思考を深めていきます。

 この日は高1生全員が講堂に集まり、「ジェンダーギャップ指数」について考えました。まず柳沢先生がジェンダーギャップ指数の概要を説明したあと、生徒たちは3~4人程度のグループに分かれてディスカッションを開始。難しいトピックに思えますが、手元のタブレットPCで情報収集しながらアイデアを出し合う姿は活発そのものです。「昔から、男性が働いて、女性が家事をしていたのかな?」「天皇が女性でもいいと思う」「日本で初めて女性の総理大臣が誕生したね」など、率直な意見が飛び交っていました。複数の教員が生徒たちの間を歩きながら耳を傾け、質問や相談があればていねいに応じます。柳沢先生は、「ほかの国の女性の働き方を調べて、比べてみるといいよ」などとアドバイスしていました。

 翌週は「ジェンダーギャップ指数のなかで、どの指数に関心を持つか?」「その指数における日本の現状をどのように評価するか?」「その指数を改善するための方法は?」といった論点を整理し、各自が論文執筆に取り組みます。書き上げた論文は生徒同士で読み合い、ブラッシュアップしていきます。こうしたプロセスを重ねるうちに、当初は執筆に苦戦していた生徒も、しだいに構成が整った文章が書けるようになるといいます。

 後期の終わりには、自らの考えを言葉で伝え合う実践の場として、男子校との合同討論会が予定されています。

「グローバル探究」の授業で生徒にアドバイスを送る柳沢先生。積極的に生徒と関わりをもつ柳沢先生は、気さくな人柄で親しまれています。大学受験の面接指導を直接申し込んでくる生徒もいるそうです。「グローバル探究」の授業で生徒にアドバイスを送る柳沢先生。積極的に生徒と関わりをもつ柳沢先生は、気さくな人柄で親しまれています。大学受験の面接指導を直接申し込んでくる生徒もいるそうです。
会場となった講堂には、生徒たちの議論の声がにぎやかに響き渡ります。会場となった講堂には、生徒たちの議論の声がにぎやかに響き渡ります。
学園長の柳沢幸雄先生。学園長の柳沢幸雄先生。
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