私立中高進学通信
2022年特別号
校長先生はこんな人!
北鎌倉女子学園中学校
「ジエシカ」改革のもと新しく生まれ変わった学園で
自ら考え、自ら行動する「のびやかな自立した女性」を育む

佐野朗子(さの・あきこ)校長先生
日本体育大学を卒業後、神奈川県内の公立高校で体育科教員として奉職。
教育委員会、神奈川県立体育センターでの勤務を経て、神奈川県の公立高校4校で校長を務める。
神奈川県立学校長会議、全国高等学校長協会などの役員を歴任し、2022年4月に同校の校長に就任。
創立80周年を迎え、大胆な学校改革に取り組んでいる北鎌倉女子。「のびやかな自立した女性を育む」という教育理念のもと、生徒個々の自主性を活かし、多様な価値観に心をひらく明るく国際性豊かな女性の育成をめざしています。2022年に着任した佐野朗子校長先生に、学校改革についてお話を伺いました。
心を育む伝統を継承しながら、
最先端の学びを充実させる「ジエシカ」改革を推進
創立80周年を節目にスタートした「ジエシカ」改革が形になりつつある2022年4月に、私は本校の校長として着任しました。着任してまず感じたのは、生徒が優しく温かいということです。本校では中1と高1の授業で小笠原流の礼法を学びますが、相手のことを考えて行動する思いやりの心や美しい立居振る舞いは、学校の伝統として先輩から後輩へと脈々と受け継がれています。
また、日本の伝統文化や芸術文化に触れる機会が多いのにも驚きました。高校では、鎌倉能楽堂での能狂言、鶴岡八幡宮の雅楽、新国立劇場で歌舞伎、中3では、劇団四季を観劇します。宿泊行事も、修学旅行の他、中1では6月に清里の「清泉寮」に宿泊し、自然に親しむとともに生徒同士が交流を図りました。年間を通して、さまざまな行事や授業で知性と感性を磨いています。
近年、多くの学校が、先行き不透明で予測困難な時代を生きる子ども達のために、グローバル教育やICT教育、探究活動に取り組んでいます。本校はそれらを先取り、ICTと英語のスキルを確実に身につけ、さらに自分の得意なこと、好きなことを伸ばす教育に取り組んできました。現在その教育活動のベースになっているのが「ジエシカ」改革です。「ジエシカ」とは、「自主性・受験/英語/施設/鎌倉」の4つの頭文字をとって名付けたものです。自然豊かな北鎌倉の丘陵で紡がれてきた伝統を大切にしながら、生徒一人ひとりが輝く未来を描けるように、常に最先端な学びを取り入れながら教育活動を行いたいと思います。
「ジエシカ」改革とは
受験に強い授業]
- 生徒が自分で考え、自らの意見を述べられるようにするために、学校教育のさまざまな場面で自主性を尊重します。
- 生徒の個性を大切にして、大学の各種推薦入試と一般入試の双方を教職員が全力でサポートします。
- 生徒一人ひとりの学習状況を把握し、iPadの学習アプリや教材を活用し、個人に合わせた学習内容を効率よく学べるようにします。
抜本的強化]
- ネイティブ教員3名が常勤し、日本人教員とのteam teachingで英語4技能を強化します。
- English Roomには、昼休みや放課後に生徒が自由に訪れ、ネイティブ教員と会話やゲームなどを楽しんでいます。校内は英語を使う環境にあふれています。
- 英検受検をしっかりサポートします。アプリを使った試験対策やネイティブ教員が二次試験(英語面接)の対策を行います。
一新]
- 教室はアクティブな学びを行いやすいよう刷新しました。職員室もオープンな空間にして、生徒が気軽に相談できるカウンターや個別指導用ブースを設けました。
- ICT環境を充実させ、全館WiFiを整備し、電子黒板機能付きのプロジェクターとApple TVを各教室に設置しました。
- 県内唯一の音楽科・音楽コースとして、視聴覚施設を備えた音楽室を2室、レッスン室を9室、練習室を12室設けました。
体験学習]
- 鎌倉という立地を活かし、円覚寺の境内で外国人観光客を英語で案内をする「English Guide」や、鶴岡八幡宮や鎌倉能楽堂の伝統文化鑑賞、地域と連動した探究活動など、さまざまな体験学習を行っています。
- 神奈川県埋蔵文化財センターの学芸員から鎌倉市や神奈川県の歴史について学び、土器や石器に触れるワークショップを行います。他の教科も地域を有効に活用して学習します。
ICT活用を促進し、想像力と創造力を高める
「先進的な学びの時間」と「KGプロジェクト」

本校の特徴的な授業の「先進的な学びの時間」と「KGプロジェクト」をご紹介します。
「先進的な学びの時間」は、中1で週に2時間、中2・3で週に各3時間行う授業です。通常、プログラミングなどICTについては「技術・家庭」の授業で学びますが、本校では独立した科目として、アクティブラーニングの視点で、ICTを本格的かつ実践的に学びます。
具体的には、ICTを活用したテーマ型課題解決学習やプログラミング学習、3Dプリンタを使ったものづくりなどを行います。生徒の自由な発想を、テクノロジーを駆使して形にする授業では、ペッパーくんやドローンを動かすなど、高校でも行わない内容を中学生が楽しく学んでいます。自分でアイデアを出し、テクノロジーを使い実現するスキルは、理系・文系の別なく、今後ますます求められる力なので、高校受験がない中学生の時にしっかり時間をかけて学んでもらいます。
スキルだけではなく、情報モラルなどについても実践的に学びます。今年度は、大学教授による著作権に関する講話や日本テレビ放送網のスタッフによって悪質な情報から身を守る術を知ったうえで情報を見極め、どう役立てるのかを「情報の海の泳ぎ方」というテーマで特別授業を行なっていただきました。
また、探究学習「KGプロジェクト」にも力を入れています。本校は文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会から「ユネスコスクール」に認定されていて、現代社会の課題を自らの課題と捉え、身近なところから取り組むことにより、持続可能な社会を創り出すことをめざしています。地元である鎌倉市を出発点に、地域理解・自己理解を深め、さらに国際理解へと視野を広げて、「世界」の中で生きる自分に考えを巡らせるのです。鎌倉とグローバルの頭文字をとって「KGプロジェクト」と名付けました。
「KGプロジェクト」では、中学生から高校2年生までが、「総合的な学習の時間」「総合的な探究の時間」や放課後、土日などを活用して、教員とともにグループで活動します。課題・テーマを設定し、フィールドワークや研究を継続的に行い、3月に発表会を行います。生徒もそして教員も、地域や外部の人の力を借りながら視野を広げ、新しい発想を生み出しています。「KGプロジェクト」をきっかけに、大学の専攻や将来の進路を考える生徒もいますし、研究成果を大学入試の総合型選抜で活用する生徒もいます。
2022年度の主な「KGプロジェクト」
- 「SDGsを探そう」をテーマに、鎌倉市内の商店街で新しいSDGsのアイデアを提案する。
- 鎌倉にゆかりのある商店を選び、自ら交渉し、販売・商品づくりを提案・体験する。
- 鎌倉市内の飲食店の動向、価格などを調べ、まちづくりの観点からデータサイエンスの手法を用いて問題点を洗い出し提案する。
- 学校近辺の川、空気、雨、植生などについて実験を通して環境について考える。
- 鎌倉市の団体「ファブラボ鎌倉」と連携し、地域振興イベントを開催。湘南モノレール「湘南江の島駅」で、3Dプリンタによる鎌倉の立体地図とプロジェクションマッピングを組み合わせた展示を披露する。
のびやかな自立に向け、女子校の利点を活用
着任後すぐに、神奈川大学や横浜薬科大学と教育協定を結び高大連携に取り組みました。他の大学と連携した新たなキャリア教育も考えています。2022年度から自由登校になった土曜日を有効活用するため、教員による補習や大学受験で難関校をめざす生徒に向けのZ会とコラボした講座も設けました。
また、進路相談室をリニューアルして、生徒一人ひとりの進路実現をさらに組織的にサポートする体制を整えています。本校は、もともと受験に関して生徒と教員がチームになって、みんなで良い結果を出そうと努力する雰囲気があります。教員だけでなく、卒業生のチューターが自習室で生徒に勉強を教え相談に乗っています。柳沢学園長が小論文の指導をしたり、藤崎理事長が面接指導をしたりと、まさしく学校をあげて生徒をサポートしているので、生徒のモチベーションも自然に高まります。
私は、本校に着任する前は、神奈川県内の公立高校で9年間校長を務めていました。公立の共学校から私学女子校に環境が変わりましたので、本校のすべてが新鮮で、アットホームな女子校の強みをとても感じています。
女子校では、文化祭などでの力仕事を自分たちで行います。性別によって割り振られがちな役割にとらわれることなく、自分のやりたいことに挑戦する機会が日常にあふれています。多様性を認め自然体で学校生活を送ることがジェンダーバイアスを取り除くことにつながっているように感じます。制服にスラックスがなかったので、コシノジュンコさんにデザインをお願いして、2023年度から導入することにしました。
今後も、生徒が新しいことへの挑戦意欲を高めるためにお手本となる第一線で活躍する女性の話を聞く機会や本物を見る目を養う機会を積極的に設けます。周囲の方や専門家にお力添えいただきながら、生徒がのびやかに自立し、心豊かに未来を生きるために必要な準備を重ねることができる学校つくりに力を尽くしたいと思います。

[沿革]
1940(昭和15)年3月、額田豊博士により財団法人北鎌倉高等女学校として創立。1948(昭和23)年4月、学制改革により北鎌倉高等学校と改称、併設中学校を設置。1978(昭和53)年9月、学校名を北鎌倉女子学園高等学校、北鎌倉女子学園中学校と変更。2020(令和2)年に創立80周年を迎えた。
北鎌倉女子学園中学校
〒247-0062 神奈川県鎌倉市山ノ内913
TEL:0467-22-6900
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