

少子高齢化や人口減少、グローバル化など、さまざまな社会課題を抱える現代社会では、自ら課題を見つけ、周囲を巻き込みながら解決に向けて主体性をもって行動する力が求められています。そうした力を育む教育に取り組んできた東山で、教育関係者を対象とした『主体的な学び実践研究フォーラム2025』が開催されました。
第5回となる今回のフォーラムは「こんな生徒が生まれた!探究的な学びの実践〜教員が学び合い、実践を共に創る〜」をテーマに、公開授業や授業検討会、ポスター発表・講演・パネルディスカッションなどのプログラムが展開されました。
多彩なプログラムのなかでも、生徒が興味のあるテーマをもとに探究し、その成果をポスターにまとめて発表する『ポスター発表』は、フォーラムのテーマを象徴する取り組みです。東山から13グループ、他校から8グループの生徒がプレゼンターとして発表を行いました。
「眠気と脳の関係」「熊と人間の関係性の変化」「日本人はなぜ消極的?保育から考えるオープンマインド」「AIを活用した自動給水システム」など、幅広いテーマが並びます。プレゼンターの生徒たちはポスターの前に立ち、来場者に向けて10分間のプレゼンテーションを実施。メモを取りながら聞き入る来場者や、質疑応答に応じる生徒の姿が見られ、会場はアカデミックな熱気に包まれていました。
なかでも、多くの来場者が足を止めていたプレゼンターの東山生3名にお話を聞きました。

上田蒼空さん/高2・エースコース(2025年度)
2025年にカンボジアに行きボランティア活動を行った。現地では都市部と地方を訪問し、生まれた環境によって将来が左右される現実を知り、教育格差について考えはじめた。
★今回の発表を行うために行動したこと、学んだことを教えてください。
カンボジアで教育格差の現実を知り、高校生としてできることは何かを考えるきっかけとして海外の大学に目をむけました。そしてスタンフォード大学が開講する日本人対象のオンライン講習『スタンフォードe-Japan』を見つけました。日米関係やアメリカの文化などをテーマに、スタンフォード大学の教授の講義をライブで受講できるのが魅力で参加しました。これを機に、日本とアメリカの教育に対する考え方、教育をかたちづくる社会構造などを調べて相違点を抽出しました。この作業を通じて、日本の教育制度の完成度は高く、貧富の差による格差も少ないが、学生の考え方や行動が画一化されやすい傾向があると感じました。一方アメリカでは、大学に進学するために自らアクションを起こし、実績を積まなければ合格を手にすることは難しいとわかりました。グローバルに活躍するためには、環境に甘えず、自分で考えて行動しなければならないということを学びました。

★その学びを経て、ご自身はどのように変化しましたか?
今回の学びを通して、海外大学への進学も視野に入れるようになりました。海外の大学に合格するには、高校の成績だけでなく課外活動での成果が重視されるのです。
そこで、以前から興味があった「神経科学とロボットの融合」に関して研究をすすめている京都大学の研究室に自ら連絡をとり、受け入れていただきました。現在は週に一度、研究室に通わせてもらいながら先端の研究に触れています。
受け入れてくださった京都大学の先生方に感謝をしながら、毎日、頑張っています。

的場範晃さん/高2・エースコース(2025年度)
カンボジアでは教員不足が原因で水泳を教える授業がほとんどなく、年間約2,000人の子どもが水難事故で亡くなっている。自身の経験をもとにAIを使ってこの問題を解決できるのではないかと考えた。
★探究のテーマを考えたプロセスを教えてください。
小学校時代の先生がカンボジアに行ったことがあり、現地での話を聞かせてくれました。高校生になり海外に興味が出てきて、その先生の話を思い出し、JICA海外協力隊に連絡を取りました。青年協力隊としてカンボジアを訪れた人の話を聞くと、現地は教員不足で困っているということでした。
僕は中学生のとき野球部で頑張っていたのですが、肘を故障してしまいました。そのとき、正しいフォームを身につけるために『AIスマートコーチ』というアプリを発見し、そのアプリを使ってトレーニングをしたことで、「指導者がいなくても練習できる」と感じた経験があります。同様に、カンボジアの教員不足もアプリで解決できるのではないかという仮説を立てました。
そこで実際に現地に行きたいと考え、『東山チャレンジ』(※)と、文部科学省の留学支援制度に応募して採用されました。そこで、2025年8月に1カ月間カンボジアを訪問しました。
水難事故で年間2,000人の子どもが亡くなっていることを知ったのはこのときです。体育の授業で水泳を教える教員がいないことも原因ということを知り、それならばアプリを使えば解決できるのではと考えました。
※『東山チャレンジ』とは、生徒のチャレンジを公募し、採用されると助成金を支給する東山独自の取り組み。

★この探究を通して、的場さんにどのような変化がありましたか?
調べていくと、教育の問題は政治なども密接に関わっていることがわかりました。将来は教育格差のある国の格差解消に貢献できる人材になりたいと思いました。そこで大学で教鞭を執って、現場で力を発揮する人材を育てたいと考えるようになりました。
今回の発表を通じて国際社会に興味が湧き、カンボジアから帰国後、慶應義塾大学主催の国際社会をテーマとした小論文コンテストに応募したことも大きな変化です。
さらに、友だちに声をかけて3人で「スマイルグラウンド」というグループを組み、カンボジアのことを知ってもらう活動を始めました。今後、寄付やボランティア活動に取り組む予定です。

玉手崇磨さん/高3・エースコース(2025年度)
『ロボット研究会』に入会したいと考えて東山に入学。研究会で仲間と切磋琢磨したことで将来の夢、目標が明確になった。ロボット研究会での6年間の活動を振り返り発表を行った。
★ロボット研究会の活動で思い出深いできごとと、その体験が玉手さんにどのような影響を与えたのかを教えてください。
たくさんあるのですが、特に『FLLチャレンジ』があげられます。これは主催団体から与えられたテーマワードをもとに社会課題を発見し、ロボット製作やプログラミングで解決策を考える取り組みです。高1の時にうけたテーマワードは”Master Piece(傑作・名作などの意味)”でした。そこで僕たちは「芸術を広げる活動をしよう」と決めました。
芸術に関して多くの人の意見を聞きたくて、『東山マルシェ』(※)で来校者にアンケートを取りました。その結果、「芸術作品の鑑賞方法がわからない」という意見が多いことがわかりました。
※『東山マルシェ』とは、同校にゆかりのある京都の名店などが出店し、地域住民も参加する独自のイベントのこと。

そこで、作品を観た人がQRを読み込むと簡単に感想が書き込めて、皆と意見を共有できるアプリ『あるコメ』を開発しました。開発後、堺市にある美術館に協力をお願いすると、一定期間、QRコードを設置して僕たちのアプリを活用してもらえました。アンケート調査・課題発見・アプリ開発・外部への協力依頼など、すべてチームで行いました。
僕はプログラミングが得意なのですが、この経験を通して、リーダーとして皆の士気を高めることも自分に向いているのではないかと感じました。このことが将来の夢、目標設定に大きな影響を与えています。
★将来の夢、目標と東北大学工学部を選んだ理由を教えてください。
F1の車両デザイナーもしくはチームエンジニアをめざしています。進学先の東北大学工学部では流体力学を学びます。この大学を選んだのは材料力学など流体力学に関係する事柄を幅広く学ぶ機会があるからです。また、大学入学前に7つものF1チームがあるイギリスへ短期留学に行くことが決まっておりワクワクしています。このワクワクする気持ちを大切にしてこれからも学び続け、いつかF1で仲間と一緒に優勝を勝ち取りたいです。