国公立大学の進学実績に加えて、全国レベルの実力を持つ強豪クラブの活躍などで知られる常翔学園。2023年7月には初の試み『富士山登山』が実施され、大きな注目を集めました。挑戦するのは中2生138名です。彼らはこれまでに富士山登山の練習も兼ねて金剛山と伊吹山登山を経験し、満を持してこの日を迎えたのです。
『富士山登山』の発案者である校長補佐・根来和弘先生は次のように語ります。
「難しいことにも果敢に挑戦し、皆で助け合い目標を達成する体験を通じて確固たる自信を持つ人になってほしいというのが、『富士山登山』の真の目的です。これは今後の学習への姿勢にもつながっていくでしょう。富士山登山以降は、驚くほど皆の団結力が強くなり、普段の学校生活でも落ち着きが出てきたように感じます。今回、大きな成果を挙げた根幹には『ルーブリック』の活用があります」
★五合目~六合目★
五合目~六合目までは平坦な道が続くため、生徒もまだまだ余裕たっぷり。登り始めからはゆっくりと約20分間歩き、こまめに休憩をはさみながら歩みを進めた。
「最初は皆『こんなにゆっくりでいいの?』と思ったようですが、山岳ガイドの方が、山の環境に体を慣らすために最初はゆっくり歩きますとおしゃっていました」 (学年主任・中野裕文先生)
『ルーブリック』とは、アメリカで開発された自己評価ツールで、近年は企業や教育機関でも取り入れられています。同校では、スクールミッションでもある〝自律的な学習者の育成〟に向けて、教科学習や行事で『ルーブリック』を導入し、生徒の自己評価と成長につなげています。富士山登山のルーブリックには、『凡事徹底編』『登山編』『番外編/夜の全体学習』の3編を軸に『時を守る』『場を清める』『礼を正す』など複数の項目を設け、自分はどの程度できているのかを5段階で評価し、振り返りの機会としています。ルーブリックを見て、自分はどの段階にいるのかを理解し、次に何をすべきかを考えていくのです。
高い目標を掲げて果敢に挑み、助け合いながら皆で山頂を目指した富士山登山。日本一を踏破したという達成感で、彼らは精神的にも人間的にも大きな成長を遂げたでしょう。そして得た自信は、大学受験をはじめ、その先の未来においても、一歩を踏み出す力、踏ん張る力として花咲くことでしょう。
★六合目★
六合目に到着!ここから道が険しくなるため、しっかりと休憩を取った。
「登山は下山のことも考えなければならないため、体調や体力の関係で、24名の生徒が自ら判断し、七・八合目でリタイア。苦しい判断でしたが、自分の状態を理解して、自ら決断したのは意義深いことです」(根来先生)
★八合目★
八合目。朝3時30分に起床して山小屋を出発。ヘッドライトを付けて登るうちに夜が明け始めた。
★九合目★
九合目を歩く生徒たち。山頂に近づくたびに空気は薄く、気温も低くなり、皆、無口になり黙々と歩く。ゴールはもうすぐ!
★山頂★
ついに山頂に到着!
「バスの中から富士山を見て『こんなん絶対に登られへんやん』って思ったけれど、登れた!無理そうなことでも挑戦すれば達成できるんやなって思った。夢も、あきらめなければかなうんやろなと思いました」(生徒)
「足が痛くて、夜はなかなか寝られずに辛かったのですが、みんなで励まし合って登れたことがうれしかった。絆が強まって、今まで感じたことのない一体感がありました」(生徒)
「今回の富士山登山は10名以上の教員とプロの山岳ガイド6名、登山専門の看護師2名が同行し、安全を最優先に進めたことで、保護者の方の理解・同意を得ることが
できました」(根来先生)
「多くの大人が支えてくれることに、感謝の気持ちが芽生えた生徒も多くいたようです」(中野先生)
★下山★
下山は、腰や膝に負担がかかるため、登り時よりも気をつけることが多く、疲労も溜まる。
★下山後★
下山後、旅館にて、富士山登山を通しての一人ひとりの思いを聴き、共感し合う時間を設けた。
「普段から他者の発表を“聴く姿勢”を大切にすることを心がけているので、この日も一人ひとりの発言に、真剣に耳を傾けている姿がすばらしいと感じました」(中野先生)