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進学通信

2024年3月

実践報告 私学の授業
“本物”に触れる体験を通して視野を広げ、社会で生きる力の礎を築く

公開日2024/4/15
一貫コース長/森 昌範 先生

「中2のテーマは他者との関わり。幼稚園交流はその一環です。ほかにも著名人の人生や企業を探究したり、自分の人生を振り返る作文に取り組むなど、さまざまな取り組みを並行・連動させることで、心や生きる力を育んでいます」

社会科・技術科教諭/川村 圭希 先生

ラグビー部の顧問・監督にして華道の免状を持つ川村先生。
「茶道や華道などの日本文化を体験していることで、ふとした所作や語れる内容も大きく違ってきます。講師からきちんと教わる経験は、国際交流の際にも大いに役立つでしょう」

“本物”に触れる体験を通して視野を広げ、社会で生きる力の礎を築く

 「熱心であれ(探求心)」「強くあれ(自学自習・人間力)」「優しくあれ(思いやり)」を校訓に掲げる常翔啓光学園。これらはいずれも、多様性を理解し、他者との協働によってグローバルな社会課題を解決していくうえで、土台となる力です。その力を着実に育むために、同校で長く受け継がれてきたのが、〝本物〟に触れるプログラムです。たとえばキャリアデザイン教育では、学園内大学の学部・学科で実際に授業を受けるプログラムが設置されています。

 さらに、心の教育においても、〝本物〟に触れるユニークな取り組みが展開されています。
 まず情操教育として、中1で『茶道』、中2で『華道』を、経験豊富な講師から学びます。いずれも一回で終わらせるのではなく、『茶道』の授業であれば、夏休み前と冬休み前の全6回実施されるという本格的なものです。
「楽しいと感じて興味を持つきっかけになればより良いことなのでしょうが、『抹茶が苦かった』という感想でもいいと思っています。何を感じるかは一人ひとり違いますからね。大切なのは、日本の伝統文化を知ること。自国の文化を理解することが、グローバル社会で求められる異文化理解や他者理解につながると考えているからです」(一貫コース長・森昌範先生)

 また、中2では『幼稚園交流』を2回実施。近隣の幼稚園児を招き、校内にある「啓中農園」で育てたジャガイモやサツマイモを一緒に収穫し、ランチタイムを楽しみます。
「園児たちに楽しんでもらえるように、それぞれの生徒がベストを尽くします。普段しっかり者の生徒がどう接すればいいのかわからずに戸惑っていたり、おとなしい生徒が園児たちのサポートが上手く、細かいところまで目が行き届いていたり…。個々の意外な一面を発見できる機会にもなっていますね。生徒にとっても、自身の課題や変化を実感する、貴重な場となっているのではないでしょうか」(森先生)

 さらに、中2は技術科で栽培学習として『啓光米作り』に取り組みます。苗作り~田植え~タブレットなどを用いた観察を経て、秋からは稲刈り~脱穀~籾すりまで、すべて手作業で行うというから驚きです。
「野菜やお米作りは、手間がかかっていること、スーパーに並ぶようなきれいな野菜ばかりではないことなどの気づきを得るところに、この活動の意義があります。初めて農作業を体験する生徒も多いなか、手順や注意点をしっかりと伝えたうえで、栽培は生徒の自主性に委ねています。失敗を経験することで、『なぜ上手くいかなかったのか』を考え、今後に活きる力を身につけてほしいですね」 (技術科・川村圭希先生)

Act.1自国文化を知ることは異文化理解の第一歩
経験豊富な講師から学ぶ『情操教育』

中1『茶道』では、正座の仕方、立ち方、座り方、扇子の置き方、菓子の取り方、お茶のたて方など、ペアワークなどを取り入れながら、繰り返すことで習得していきます。「初回1コマは、ほとんどが正座の練習だった…」というケースも。

 中2の『華道』は未生流。最初は花を切ること、剣山に挿すこと、一つひとつが思うようにいかず、苦労するそうです。学校で生けた花は持ち帰り、家で飾ることができます。

Act.2小さな子どもに頼られることで自己肯定感を育む『幼稚園交流』

 中2生約70名に対して、年長組の園児の数は約100名。混合グループを作り、一緒にイモ掘りや、ランチタイムを過ごします。生徒たちは担当の園児を一人ぼっちにしたり、園児がつまらない顔をしないようにサポートします。
「虫を見ると騒いでいた生徒が、園児たちには『大丈夫!』とやさしく言葉をかける姿が見られたり、逆に、園児たちをその場に置いたまま一人で逃げてしまう生徒もいたり(笑)。想像もしていなかった姿が見られます」(川村先生)

 イモ掘りのために栽培したジャガイモは3種類。各自が持ち帰り、それぞれの種類に適した料理に使って食べ比べ、レポートを作成しました。
「レポートには保護者からもコメントをいただきます。『3種類ともカレーに入れてしまって子どもに怒られました…』というコメントがありました。違いを確かめたかったんだなという探究心が伝わってきて、うれしかったですね」(川村先生)

Act.3手作業にこだわった『啓光米作り』

 田植えを行い、割り箸と牛乳パックを使って脱穀し、籾すりはすり鉢にソフトボールをこすりつけて行うという、ほぼ手作業によって進められる『啓光米作り』。農作物を作る大変さを知り、食べ物を大切にする心を養います。
「畑や水田での作業の日、『通学の革靴で大丈夫だろう』と自分で判断して、指示をしたスニーカーを持参せず、案の定革靴がドロドロになったり、蚊が多いから長袖・長ズボンでやるように声をかけても、暑いからと半袖・短パンで作業して刺されてしまったり…。失敗から身をもって学ぶ場にもなっています」( 川村先生)