
1日目に行われたセッション「アイドルを探せ」。メンバーが持っている断片的な情報をつなぎあわせて、謎を解いていく。
「全員の情報がなければ謎は解けません。積極的に発言し合うことで、メンバーをより知ることができました」(生徒)

「人との関わりあいの中で生きていくからこそ、集団の成長が大切。
『錬成会』は、その練習の機会として位置づけています」(青山先生)
小林聖心女子学院では伝統の一つとして、日々の学校生活における「ふり返り」と「分かちあい」が挙げられます。「ふり返り」とは、一つひとつの出来事や体験が自分自身にどのような影響をもたらし、どのような意義があったのかということについて、一人で静かに思いをめぐらすこと。「分かちあい」は、「ふり返り」で考えた内容について他者と共有することです。
その目的は、自らを見つめ、自己を知ること、他者の価値観に触れて、新たに発見した一面も含めて他者を認め、受け入れ、仲間とのつながりを広げ深めること。さらに、「自分の考えを大事にしながら、他者の意見にも耳を傾け、新たな選択肢として捉えることの大切さ」に気づき、「人とのつながり」の中で生きていることを実感し、共同体として他者と共に成長していくことを目指します。
その「ふり返り」「分かちあい」の実践に特化した宿泊行事が、高1の『錬成会』です。今年は、徹底したコロナウイルス感染症対策のもと、滋賀県の琵琶湖畔にて、2泊3日で実施されました。
『錬成会』では、まず卒業生でもある人間塾塾長の仲野好重先生による講演を通して「錬成会の目的や心構え」を学び、自己分析を行ったうえで、グループに分かれてセッションに臨みます。メンバーの個性を踏まえ、互いに野球のポジションに例える「ベースボール」をはじめとする各セッションでは、ファシリテーターである先生が見守るなか、班長が、全員が発言できるように気を配ったり、一人ひとりが異なる意見を否定するのではなく、共感を示しながらも自分の意見をしっかりと主張したりする姿が印象的でした。
「『錬成会』は、豊かな人間性の源となる知性・魂・実行力をつなぐもの。目に見えない根を深く張り、広げる場です。異なる考えを皆で共有し、掘り下げることで初めて集団として成長できるということを学び、将来に活かしてほしいと考えています」(青山礼子先生)

多くの卒業生が「印象深い行事」の一つとして挙げる『錬成会』。「世の中の闇を照らす光に育ってほしい。『錬成会』がその第一歩となればと考えています」(植村先生)
「2日目の夕の祈りは、自分も仲間も神様から愛されている大切な存在であることをあらためて実感する場となっています。共に支え合い生きていくという思いを、今後、後輩にもつなげてくれることを願っています」(植村京子先生)
まさに、“一人ひとりが神の愛を受けたかけがえのない存在であることを知り、世界の一員としての連帯感と使命感を持って、より良い社会を築くことに貢献する賢明な女性の育成をめざす”という同校の教育理念を体現しているこの『錬成会』。日々の行動や人生において礎となる心・姿勢を育む重要な取り組みとして受け継がれているのです。

2日目のセッションの一つ『富士山噴火』では、「救援隊のヘリコプターは1機のみで、操縦士を除いて5名しか乗ることができず、ヘリコプターで2度往復することは難しい状況」という設定で、現場のホテルに取り残された、年齢や社会的立場、人生観などが異なる8名のうちの誰を乗せるのかを話し合い、最終的にはコンセンサスによる集団決定をする。話し合いに向けて、まずは一人ひとりがヘリコプターに乗せる5名を選ぶ。

『富士山噴火』の話し合いでは「人間性を重視したい」「子どもがいる人は助けたい」「努力している人を優先しては?」など、各自の意見を共有して考えを深め、幅を広げていく。
「正解はありません。議論を通して“命の重さは等しい”ということに気づいてほしい」と青山先生。最初は「社会貢献度」などに目を向けがちだったが、他者の価値観に触れるなかで、「本当にそれだけで判断してよいのか?」という疑問が芽生え、新たな気づきへとつながる。

どのセッションでも必ず、個人の「ふり返り」と、グループでの「分かちあい」の時間を設置。分かちあいでは、「全く別の視点から意見を言うメンバーもいて、想像することの大切さに気づけた」「自分の価値観が、必ずしも正しくはないということを実感できた」など、それぞれの気づきを得た生徒たち。

夜には班長会を実施。全員が気持ちよく過ごせるよう、翌日のスケジュールや注意事項を確認するとともに、気づいたことを共有した。

話し合いの結果を班ごとに集計表に記入。「まとまらないときは、もう一度全員の意見を聞いてから議論を再開。多数派の意見に安易に傾かないように、少数派の意見も積極的に発言してもらうように心がけました」「1時間しかないので、話し合いの方向性がぶれないように意識。全員が納得できる話し合いになるよう、周囲の発言を尊重しながら、自分の考えを話すようにしました」と班長を担当した生徒たち。

2日目夜に行われた『夕の祈り』。まずは班長が大きなキャンドルから、キリストの愛やいのちを意味する“光”をいただき、その光を班のメンバーで分かちあう。
「光は人々に希望や安心を与えてくれるもの。自分はもちろん、他者の心にも光を灯し、その光を大切にできる人になってほしい。また、人生において挑戦するとき、『錬成会』を思い出し、自分自身を勇気づけてほしい」というお話に生徒たちは静かに耳を傾けていた。

最終日は学年で集合し、『錬成会』で得た気づきを分かちあった。「他者から見た自分を知ることができ、自信を持てるようになりました」「相手を否定せず、疑問や反対意見をきちんと伝える姿勢を培えたと思います」「好き嫌いではなく、愛の尺度で物事を判断できる人に近づく一歩になりました」と生徒たち。それぞれに変化や成長を感じられる機会となったようだ。