中学校検索

地域
学校区分
学校名
検索
閉じる

進学通信

2021年9月

この記事は1年以上前の記事です。

実践報告 私学の授業
自由闊達な“探究学習”の日常的な実践で
自ら道を切り拓き挑戦し続ける「自立型人間」へ

探究
公開日2021/10/31
大学受験や社会で
活きる力を育む探究学習
『社会総合』で実施している『新聞社出前授業』。この日は夫婦同姓規定を合憲とする最高裁判所の判断について、対談形式で解説や意見交換が行われた。また、夏に行う企業訪問での社員インタビューやその後の新聞づくりに備え、記事作成のレクチャーや模擬インタビューの実演が行われた。

『社会総合』で実施している『新聞社出前授業』。この日は夫婦同姓規定を合憲とする最高裁判所の判断について、対談形式で解説や意見交換が行われた。また、夏に行う企業訪問での社員インタビューやその後の新聞づくりに備え、記事作成のレクチャーや模擬インタビューの実演が行われた。

 創立以来受け継がれる、新しいことに挑戦し続ける「やってみなはれ」の精神に基づき、豊かな人間力と高度な学力を兼ね備えた「自立型人間」の育成をめざす雲雀丘学園。その実現に向けた学びの柱となっているのが、主体性・思考力・表現力・協働力を養う “探
究学習”です。
 同校では多彩な探究学習に取り組みます。週2時間の『探究』の授業では、まず中2で情報の収集・整理・分析方法などの基本スキルを習得。中3・高1では個々の興味に応じて、自然科学分野を扱う『サイエンスチャレンジ』、世界に目を向ける『グローバルチャレンジ』、人とのつながりを考える『アカデミックチャレンジ』の3つからいずれかを選択。幅広いテーマで調べ学習や発表を経験した後、高1ではその集大成として、自らテーマを設定して論文執筆に挑戦します。
 また、『探究』の授業だけでなく、教科の授業においても、知識の習得と活用を繰り返す学習サイクルを重視し、ディスカッションやプレゼンテーションを取り入れた探究的な内容となっています。
 この日の『社会総合』(中3)では新聞記者による『新聞社出前授業』が行われました。授業を見学して驚いたのは、その自由で活気あふれる雰囲気です。岡村美孝学園長と記者による新聞の一面記事に関する対談では、生徒から次々と質問が飛び出し、その解説を加えながらテンポよく展開。単に聴くだけという受け身の姿勢で臨むのではなく、社会問題に目を向けて理解を深め、自分で考えるという主体性を持って取り組む授業でした。
 さらに、大学や企業と連携した希望制の『探究プロジェクト』、有志の教員が校内で行う『探究ゼミ』も用意。これらの探究学習に共通するのは、チャレンジのテーマが担当教員の興味に沿って設定されていたり、『探究ゼミ』が教員の専門性を活かしたユニークな内容だったりと、自由闊達な実践であることです。
「教員自身が熱意を持てる内容だからこそ、楽しく継続的に学びを深めることができるのだと思います。課題を見つけること、答えのない問題に挑むことは、決して簡単ではありませんが、社会での活躍はもちろん、進路選択や、本校でも受験希望者が増えている国公立大学総合型選抜(旧AO入試)の突破などにも必要となる広い視野、多角的な視点、主体的に考え表現する姿勢を培うことにつながると信じています」(探究科主任・車多厚志先生)

CASE1課題へのアプローチ方法を学び
主体性や協働力を身につける『探究』の授業

 中2では、探究学習に必要となる基本スキル(情報収集・整理・分析)を学びます。また、自分たちでプランを考える『研修旅行』の企画・プレゼンなどの事前学習にも取り組みます。中3・高1の探究チャレンジ選択では、興味のある分野を学び、視野を広げます。
 この日の中3の授業で、『サイエンスチャレンジ』は「重力加速度を算出する実験でどこまでの精度が出せるのか」と「データサイエンス」、『グローバルチャレンジ』は「ステレオタイプとメディア」、『アカデミックチャレンジ』は「自然の中の人間」と「感染症」について、今後のグループ活動に向けた導入の授業が行われました。
「私は理科教諭ですが『アカデミックチャレンジ』を担当。感染症について、あえて生物学や医学ではなく、人とのつながりという観点から掘り下げます。“あらゆる事象はつながっている”と感じることで、多角的な視点を身につけてほしいと思います」(車多先生)

CASE2有志の教員の専門性を活かし
校内で展開される『探究ゼミ』

 学年を問わず参加可能で、2021年度前期は家庭科教員による『手作りみその商品化に至るプロセスから学ぶ』、博物館主催の研究発表会への参加に向けて活動する『堺研究プロジェクト』など10のゼミが開講されました。
「以前から教員が自由に展開していたものに『探究ゼミ』という名称がついたのです。私が担当する『日本の交通網』は、主に昼休みに開講。今週は新聞記事をもとに、横断歩道を渡る際の歩行者の意思表示について考えます」(板倉先生)

CASE3大学・企業と連携して行われる『探究プロジェクト』

 どのテーマも「事前学習+講義・実習・見学等+事後学習(レポート・ポスターの作成)」で構成されます。『建築ができるまで』(写真左)では、同校70周年記念事業として建て替え工事中の文化館を題材に、“建築”と“設計”の二本柱で学びます。『ジャイアントパンダからSDGsを考える』(写真右)では、アドベンチャーワールド(和歌山)の協力のもと、飼育員の方へのインタビューやバックヤードの見学を行ったり、餌の輸送について考えたりしながらSDGsを学ぶ宿泊プログラム。ほかにも『起業体験プログラム』など、同校の持つ外部とのつながりを生かした取り組みが展開されています。

Interview★2020年度の大学入試を通して
本校の探究的な学びの意義を実感
板倉宏明先生<br />
(入試広報部長)

板倉宏明先生
(入試広報部長)

 2021年春、国公立大学に合格した卒業生126名のうち、自己推薦書を要する総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜を突破した本校の生徒は29名にものぼりました。これは「大学で何をやりたいか」が明確で、それを自分の言葉で表現し伝えることができたからこそであり、以前から自由に展開されていた探究的な活動の成果だと感じています。さらなる進化を遂げた探究的な学びを継続することで、今後も「やってみなはれ」の精神を体現するアグレッシブな人物を育みたいと思います。

本当にやりたいことを見つける
きっかけにしてほしい
車多厚志先生<br />
(探究科主任)

車多厚志先生
(探究科主任)

 系統的な探究学習をスタートさせて2年目ですが、その1期生である中3生たちは、すでに「答えのない課題」にチャレンジすることに慣れ、着実に成長しています。高1での論文執筆に向けて、あらゆる分野・課題に触れ、考えることを通して、一人ひとりが本当にやりたいことを見すえ、進路実現につなげられればと考えています。