私立中高進学通信
2022年特別号
校長先生が語る「実践報告 私学の授業」
穎明館中学校
生徒の目標達成・自己実現をサポートする
学校改革「EMK未来プロジェクト」を推進中!
橋本好広校長先生プロフィール
1987年3月、早稲田大学第一文学部卒業。学生時代、小学校の夏季水泳指導のアルバイトを経験するなかで、
子どもの成長にかかわる仕事がしたいと、父と同じ教員の道へ。
1987年4月、穎明館中学校の創設と同時に社会科教員として着任。
以来35年間、同校で教鞭をとる。教頭(2011年)、副校長(2012年~)を経て、2019年より校長。
今年創立37周年を迎える穎明館中学高等学校。大自然に抱かれた広大な校舎で、のびのびと学生生活を送ることができる進学校です。「国際社会に羽ばたく真のリーダーの育成」という建学の精神のもと、Experience(経験)、Morality(道徳)、Knowledge(知識)の3つ(E.M.K.)を教育の柱に、時代に合わせて進化を遂げている同校。2019年、より良い教育実践のための「EMK未来プロジェクト」を始動しました。導入への想い、生徒の変化・成長などについて校長の橋本好広先生に伺いました。
どのような経緯で
「EMK未来プロジェクト」を導入しましたか?
創設時より「21世紀の時代のリーダーを育てる」という理念を柱に教育を行っています。急激に変化する現代において、そのリーダー像を描きながら、守っていきたい部分と改革する部分を明確にし、内外にアピールしていく必要性を感じるようになったのです。校長就任と同時に教員と改めて議論を重ね、「新時代のリーダー育成」を時代に合わせてアップデートしようと、プロジェクトを立ち上げました。
まず各教員に改革レポートを出してもらい、プロジェクトチームを結成。各チームの意見を吟味し、一つずつ具体化したのが、下の図にある5つのプロジェクトです。教員も生徒も何事にも主体的にのびのびと取り組める自由な校風のなかで、議論を重ね、練り上げられた内容となっています。

1年目は「進学指導の進化」「放課後学習支援の強化」「グローバル教育の活性化」が始動。
2年目より「ICT教育の充実化」「探究学習の整備」が加わりました。
「進学指導の進化=アドバンストクラスの設置」
について教えてください。
中高6年間一貫校なので、なかだるみに陥ってしまいがちな生徒もいます。より有意義な学生生活のためには、学び合い高め合い、励まし合う「切磋琢磨」の意識を高めることが必要だと考えました。そこで3年生(中3)から、成績上位者で構成するアドバンストクラス(以下AC)を導入したのです。全5クラスのうち1クラスがAC、そのほかがスタンダードクラス(以下SC)です。

これまで比較的のんびりしていた生徒も、1・2年生(中1・2)からACをめざして頑張るようになり、高みをめざそうという意識が生まれました。「自分はできると思っていたけれど、他にもできる生徒がたくさんいる」と、さらに努力するようになったACの生徒もいます。クラス内でわからないことを教え合い、SCの生徒がACの生徒に質問するという良い流れもできています。切磋琢磨の空気が醸成されたわけです。
わが校では4年生(高1)から英・数・古典が、5年生(高2)から英・数・国・理が習熟度(グレード)別授業となり、さらに理系・文系に分かれます。ACを設置したことで、志望大学に向けてより細分化した指導が可能になりました。また、生徒の意識としても3年生(中3)からACを、5年生から最上位のグレードをめさすという、継続して努力を続ける流れができたと感じています。

それを支えるのが
放課後学習支援システム「EMK未来サポート」ですね。
その通りです。わが校が大切にしている「丁寧に基礎学力を鍛え、定着させること」をさらに強化するための、“学校完結型”の学習サポートシステムです。
生徒は、個別ブースを備える自習室「EMK未来館」で自学自習をすることができ、1・2年生(中1・2)は必修登録、3年生(中3)以上は希望登録制です。チューターが常駐していて、いつでも質問できる環境が整っています。学習プリントも多く用意されていて自分のペースで学習をすることが可能です。入退室時に保護者にメールが届くので、保護者からも好評です。ACの導入とEMK未来サポートの相乗効果で、生徒の学習習慣が定着し、学力が底上げされているのを感じています。放課後に加え、朝始業前と昼休みの学習利用もできるようにしました。

「無窮館」1階と地下1階が、個別の自習ブースを備える「EMK未来館」、2階が図書室。最上階には天文ドームも完備。
「EMK未来館」入り口には、生徒一人ひとりのカルテがあり、
学習の進捗状況をチューターと担任が共有し、双方から学習をサポート。
「『EMK未来館』はスポーツジムのようなもの。チューター、学習プリント、環境すべてが揃っていて、
活用すればするほど成果が上がります」と入試広報部部長の斉藤直道先生。
「グローバル教育の活性化」でも
1・2年生での基礎学力向上を大切にされていますね。
1・2年生(中1・2)全員が週7時間の英語授業を受講します。うち1時間は外国人教員による20人ずつの少人数指導です。また、4年生(高1)、5年生(高2)にはマンツーマンのオンライン英会話も授業時間内に実施します。4年生(高1)の希望者は、第2外国語としてフランス語や中国語を学ぶことができるなど、全学年に幅広い外国語学習の機会を用意しています。

1・2年生の外国人教員による英語クラスは、20人ずつに分け、一人ひとりにきめ細かな指導を行います。
コロナ禍でこの2年間は、30年続く「USA・カナダ体験学習」(4年生全員)、「オーストラリアターム留学」(4年生希望者)、「イートンカレッジサマースクール」(3~5年生希望者)は中止となりましたが、国内にいながらグローバルな視野を広げるという意識をもってさまざまな取り組みを行っています。たとえば、国内でのグローバル教育のエンパワーメントプログラムの強化や、ALTによる講演会など、より国際理解を深めています。
わが校は英検会場となっており、生徒の受験率・取得率が高いのも特徴です。2022年春の卒業生は、半数が英検2級・準1級・1級を取得しています。さらに今後ニーズが高まるであろう海外大学進学を見据えて、海外大学進学協定校推薦制度(UPAS)も導入しています。今後も生徒の幅広い進路希望に対応していきます。
「ICT教育の充実化」は
コロナ禍において加速したと伺いました。
2018年からプログラミング授業を導入、2021年から1年生(中1)はタブレット一人1台体制を整えました。生徒も教員も、ICTツールを日常的に文房具として使えることをめざし、あえて使い方の制約を設けていません。探究活動のリサーチや、パワーポイントでの資料作りなど、生徒たちは上手に使いこなしていますね。

2018年から教育版レゴマインドストームを活用したプログラミングの授業を開始。
コロナ禍でオンライン授業にスムーズに移行できたのも、ICT環境が整っていたからにほかなりません。明日からオンライン授業、という場面でも教員・生徒とも柔軟に対応することができました。「ピンチをチャンスに」を実感しましたね。2022年2月・3月に実施した本校での「オンラインHR・オンライン授業」の一部の様子を動画にしていますのでよろしければぜひご覧ください。
ICTとも連動している
「EMK探究の整備」はいかがでしょう?
自ら課題を見つけ、問題解決する力を身につけることを目的に、これまで行っていた探究の時間をさらに整備しました。中学生は週に1時間「総合」の授業で探究学習を行います。まず自らがテーマを設定し、課題について情報収集・整理・分析をし、3学期に発表するというのが大まかな流れです。SDGsを基本に掲げながら、テーマは各自が自由に設定します。

探究学習に積極的に取り組むことで、生徒の主体性と社会性の育成をめざしています。
2021年は、八王子市の私学の中学1年生を対象とした「第1回プレゼンテーションコンクール」が開催されました。時世を鑑みてオンライン開催となりましたが、わが校の1年生も参加し、探究の成果を堂々と発表してくれました。2022年度も参加予定となっています。
また3年生には、自分を深く見つめ、将来のテーマ・進路につながるような指導をしています。各自のレポート、発表原稿を「現在・過去から未来を考える~私たちが考えるSDGs~」としてCDにまとめました。お互いのレポートや発表を見ることによって自らの視野を広げてほしいと考えています。

3年生全員のレポート、発表原稿が収録されています。
探究活動では発表の場も多いので、プレゼンスキルも、パワーポイントによる資料作りのスキルも年々向上しています。もちろん大切なのは中身なので、しっかり身につけた基礎学力をベースに探究を行い、魅力的なプレゼンを行う。その両方の力がついてきているなと感じています。
プロジェクトのこれまでと
今後の展望をお聞かせください。
3年が経過し確かな手ごたえを感じています。生徒はもちろん、教員にもプロジェクトにどうかかわり貢献してきたか、レポートを提出してもらいましたが、各自が趣旨を理解し、気概をもって指導にあたっていることに胸が熱くなりました。「EMK未来プロジェクト」は教員の熱意の結集であることを実感し、これからの学校の発展を確信しました。
これからも、そんな教員と一丸となり、穎明館らしさを大切にしながら時代に即した改革を行っていくつもりです。常に現在進行形で、未来創造型の教育を実践し、生徒・教員とともに成長し発展していきたいですね。
心に残っている
生徒とのエピソードはありますか?
2020年のコロナ禍で、文化祭と体育祭を一旦中止としたときのことが忘れられないですね。それぞれの実行委員長が、「生徒主体の文化祭・体育祭をつくるのが穎明館の伝統。それを途絶えさせてはいけないと思います」と直談判に来たのです。そんな姿を見て、どうにか実現させたいと、教員が一致団結し、リアルとオンラインで開催することができました。
今年の卒業式でその生徒は、この出来事が忘れられないと語ってくれ、私自身も学校は希望の場でなければ、と改めて感じました。そんな想いもあり、2年間歌えなかった校歌を、今年は私が独唱したのです。「創立者が作詞した“穎明館こそわが誇り”で終わる校歌は、人生の応援歌。同窓会で肩を組んで歌ってほしい」と、式辞にも想いを込めました。
※校長先生の式辞はHPでもご覧いただけます
最後に穎明館をめざす受験生に
メッセージをお願いします。
穎明館は、緑豊かな自然のなかに建つ、のびのびと充実した学生生活を送ることができる学校。じっくりと自分の将来を考え、力を養える環境が整っています。日々の学習にしっかり取り組んでください。皆さんの入学をお待ちしています。




穎明館中学校
〒193-0944 東京都八王子市館町2600
TEL:042-664-6000
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