
『樹心 ~人と成る~』という理念のもと、「今、生きている私」を大切にすること、新しい自分を発見すること、人と分かり合うこと、失敗を恐れずに本気でやり遂げることができる人を育む教育を実践する大谷高等学校。
35にのぼるクラブ・同好会も、そうした学び・成長の場の一つです。
今回は女子ハンドボール部・軽音楽部の部長と顧問の先生にインタビュー。部の雰囲気や目標、活動を通した自身の成長についてお話していただきました。

部のモットーは堅守速攻。新人大会で京都の強豪校に勝ったことは最高の思い出です。すごく集中してプレーができていたと思います。うちのチームは個性的なメンバーが楽しみながらもひたむきに活動しています。

マジメなメンバーが多いチームなので、不調なときは沈んでしまうことも。勝つためには技術だけではなく、心から楽しんでプレーすることが大事。それが士気や技術力アップにも影響するので、常に楽しむ気持ちを忘れずに競技に集中してほしいです。

●日々の活動や部の雰囲気を教えてください。
MKさん
部員数は25名。週6日、アリーナで練習を行っています。女子ハンドボールは明るい雰囲気が特徴ですが、加えて今年は、個性的なメンバーが集まっていて、それぞれに考え方が異なるので面白いです。
石川先生
そんななかでも一番個性が強いのがMKさんです(笑)。マッチアップ(1対1の対決)に強く、相手のディフェンスを突破して倒れ込んでシュートすることもあれば、自分がディフェンスを引き付けて味方を活かすこともできる、オールラウンドにプレーできる選手。型にはめるのではなく、一人ひとりが持っているものを存分に出すというのが、チームカラーですね。
MKさん
小・中とハンドボールを続けてきて、高校でもハンドボールをやりたいと考えていたのですが、大谷を選んだのは「ここなら楽しくプレーできる」と感じたからです。ハンドボールは、1分間に何点も入ることがある、点を取り合うスポーツ。ゲーム展開が早く、試合終了ギリギリまでどうなるかわからないところに面白さがあります。
石川先生
試合中のポジションチェンジもよくあります。もともとそういうスタイルなのですが、今のチームは特に、個人の判断で自由に動くシーンがよく見られます。

明るい雰囲気の中にも真剣な表情が見える練習。アリーナに響き渡るかけ声やスピード感あふれるプレーから、「勝ちたい」という強い思いが伝わってくる。
●キャプテンとして心がけていることはありますか?
MKさん
自分のことだけではなく、周囲のことも考えることです。「何かに悩んでいるのかな」と感じたら声をかけたり、プレー面で気づいたことがあればアドバイスしたりするようにしています。
石川先生
以前からポイントゲッターとして活躍してくれていましたが、キャプテンをするタイプではありませんでした。MKさんが立候補したとき、皆が驚いたと思います。
MKさん
自分には向いていないと思っていたのですが、インターハイ京都府予選は決勝で、近畿高校選手権大会は準決勝で負けた悔しさから、「自分がキャプテンになって、このチームで勝ちたい」という気持ちが強くなりました。
石川先生
自らキャプテンをやると決断したことが、一つの大きな成長。私は、MKさんならできると思っていましたよ。
MKさん
キャプテンとして求められるものは想像以上に多くて、最初は不安もありました。たとえば皆が落ち込んでいるとき、キャプテンは前を向かなければならないのですが、そう簡単にはできません。
石川先生
そういうときは、プレーで表現してくれていますね。コートの外から見ていて、「皆の心に火がついたな」と感じる瞬間があります。
MKさん
キャプテンを務めることで、皆の前に立って引っ張っていく力が身についてきたかなと思います。自信を持てるようになりました。
●最後に一言お願いします。
石川先生
良いプレーは、ハンドボールを心から楽しんでこそ生まれるもの。楽しいと思えたら、練習に対するモチベーションが高まり、スキルアップにつながり、チームもまとまっていくはずです。そうした積み重ねをしていこうと思います。
MKさんが特に印象に残っているのは、高2のとき、僅差で強豪に勝った『京都府高校ハンドボール新人大会』。
石川先生は「チームの皆が生き生きと楽しそうに笑顔でプレーしていて、『勝てる』という空気が続いていた試合でした」と振り返る。

先生は厳しいですが、そのおかげで部員のメンタルはとても強くなっています! 大会をめざしたい人、楽しむことに重点を置きたい人など、皆のモチベーションが異なっているので、とても個性豊かな部になっています。一つの部としてまとめるのは大変です(笑)。

バンドとして何を表現したいのかを見せてほしいです。大会に出る上位のバンドはだいたい決まっているので、もっといろいろなバンドが活躍してほしい気持ちはありますが、自分たちでやりつくして、納得したものができたという達成感を持ってもらえたら、順位には特に意味はないと思いますね。

●軽音楽部の特徴や日々の活動について教えてください。
MRさん
部員数131名の大所帯で、22のバンドがあります。バンドで練習できるスペースは一つしかないため、1バンド45分の時間制。平日は3~4バンド、土曜には10バンド以上が順番に練習に入ります。バンド練習の時間以外は、パート練習を行っています。
小川先生
バンドのメンバーは、最初は私が決めます。そのメンバーで継続するケースもありますが、活動の方向性の違いなどから組み替えたいとなった場合は、まず顧問に相談してもらい、調整していきます。未経験者から経験者まで幅広い部員が入ってきますが、レベルで分けることはしていません。
MRさん
私はクラシックギターを触ったことがある程度で、未経験からのスタートでした。入部のきっかけになったのは新入生歓迎会。演奏する先輩方の姿を見て「かっこいい!」と思ったことを覚えています。パートはギターです。最初のバンドのメンバーは退部してしまいましたが、現在は新たなバンドに所属して活動しています。
小川先生
MRさんのように運動部出身の生徒もいれば、文化部出身の生徒、部活動未経験の生徒もいて、各バンドのカラーやスタイルもさまざま。多種多様な部員で構成されていることが、軽音楽部の特徴の一つだと思います。
●大会前は、部内でオーディションをされるそうですね。
小川先生
オーディションにエントリーするかどうかは、各バンドに任せています。
MRさん
何を目指すのか、どのように取り組むのかはバンド次第。だから自由な雰囲気なのですが、先生のご指導は厳しいほうかなと思います。
小川先生
オーディションや定期演奏会のリハーサルでは、顧問と部員全員が各バンドの良い点と改善点を書き、本人たちに渡します。意欲の高いバンドは顧問に直接、講評を聞きに来ることも。大会はオリジナル志向ということもあり、大会出場を目指すバンドは、高2から高3にかけて、作詞・作曲に挑戦します。

学園祭『大谷祭』では第2体育館にて、一日を通して恒例ライブを実施。来校者を魅了している。
●活動を通して、気づきや成長はありましたか?
MRさん
もともと人見知りするタイプだったのですが、たくさんの部員や顧問の先生方と接するなかで、コミュニケーション能力を磨くことができたと思います。中学の陸上部で身につけた、礼儀・マナーが役立ちました。とはいえ、先生から「部長をお願いしてもいいですか?」と聞かれたときには、不安がよぎりました(笑)。
小川先生
部長は、部員アンケートの結果を踏まえて顧問が決めるのですが、一番多く名前が挙がっていたのがMRさんでした。個性あふれる生徒が集う軽音楽部で求められるのは、強い統率力ではなく、「この人なら」と皆に思わせるような人間性を持ったリーダー。心地よい雰囲気を作り出したり、言葉で指示するのではなく自分の行動で模範を示したり、部員一人ひとりにていねいに接したり。そうした資質・素養を備えたMRさんは、ぴったりだなと思いました。
●今後に向けて、目標や思いをお聞かせください。
MRさん
部内のオーディションを突破できるように、技術を磨いていきたいです。そして大会に出たいです!
小川先生
多彩なバンドが、自分たちの表現を作り上げていくさまを見たいという思いがあります。結果はあとからついてくるもの。音楽を楽しみ、自分たちが納得できる最大限の表現を追求しながら、人として成長を遂げてほしいと思います。

高校軽音楽部の日本一を決める全国高校軽音楽部大会「we are SNEAKER AGES(スニーカーエイジ)」でのグランプリ受賞をはじめ、強豪として知られる大谷の軽音楽部。部内のオーディションなどを通して切磋琢磨できる環境が、その礎となっている。

印象に残っているできごととしてMRさんが挙げたのが、同校で開催され、京都の他校のバンドも参加する⾼校⽣軽⾳楽部コンテスト『AREA OF YOUTH』。高2の時、先輩のバンドの一員として、グランプリをかけたステージに初めて立った。「モチベーションの高い先輩方との演奏は最高に楽しかったですが、『もっと腕を磨かないと!』と思ったことを覚えています」