洛星では毎年12月23日に、キリストの生誕を祝う聖劇『クリスマスタブロー』が上演されます。タブローとは〝活人画〟という意味で、聖書の朗読と聖歌・楽器の演奏に合わせて、演技者が、キリスト生誕の物語の情景を絵画のように描いていきます。舞台上の演技者にセリフはありません。
4年ぶりにコロナ禍における制限なしでの実施となった2023年のクリスマスタブローには、中1全員と高2までの有志、総勢約600名が集結し、全8幕・2時間にもおよぶクリスマスタブローをつくり上げました。
暗闇のなか、高校聖歌隊の歌声によって大講堂が厳かな雰囲気に包まれていきます。やがて音もなく、キャンドルを手にした中1聖歌隊と聖書朗読者が入場し、幕が開けました。
まず圧倒されたのは、力強い聖書朗読。先輩から後輩へ、全ての教えが口伝されてきたものです。さらに、多彩な音色が、耳を楽しませてくれます。あどけなさを感じさせる中1聖歌隊の歌声、それとは対照的な重厚かつ温かな高校聖歌隊のハーモニー、思わず引き込まれる独唱・独奏に、流れるように音を刻むハンドベル、存在感あふれるオルガンの調べ…。それらの音楽と舞台を彩る幻想的なタブローによって、観客は知らず知らずのうちに聖書の世界観へと引き込まれていきました。
★第1幕 かつての予言★(写真①)
キャストの中で唯一言葉を発する聖書朗読者がタブローを終始リードしていく。
★第2幕 マリアへのお告げ★(写真②③)
聖母マリアが大天使から神の子を身ごもったと知らされ、産むことを決意する場面。中1の生徒が、澄んだボーイソプラノで「アヴェ・マリア」を独唱した。
★第3幕 ヨセフへのお告げ★(写真④)
ヨセフの衣装の色は、正しさを重んじる人であることを象徴するような緑色。大天使が立つ台は、12年間使い続けているものなのだそう。制作時、人が乗った途端に壊れ失敗を重ねたことから、丈夫に作られている。
★第4幕 マリアとヨセフ★(写真⑤)
イエスが誕生することになるダビデの町ユダヤのベツレヘムを訪れるマリアとヨセフ。背後の黒い木は、かなりの重さがある装置パート泣かせの大道具。
総責任者・Yさんの「タブローの〝祈り〟と〝劇〟としての両面を大切にし、一つひとつの動きや場面の意味を考えながら取り組みたい」という思いの表れか、セリフはなくても、それぞれの場面が示す意味や登場人物の思いが伝わってきました。
〝祈り〟として行われるクリスマスタブローは、「世界に平和がもたらされるように」という願いを込めて、一人ひとりが祈りを深める場となっています。先輩に誘われて参加を決めたという衣装・小道具パートのチーフを務めたFさんは、「衣装を通して観客が物語を理解する手助けをしたい。キリスト生誕の情景を思い描いてもらうことで、何のために祈るのかを考えてほしい」と思うようになったそうです。
そして皆で目指したのは「後輩に、より良いタブローを伝統としてつないでいくこと」。使命感を持って一つのものを創り上げてやり遂げた経験と自信は、さらなる人間的成長の大きな原動力となることでしょう。
★第5幕 天使と羊飼い★(写真⑥)
天使が羊飼いたちに、救世主の御降誕を告げる。舞台外の場所に大天使が現れたり、ハンドベルが3曲を披露するなどの演出で、その喜びを表現。聖歌「まきびと羊を」は、タブローの中では数少ない全体合唱曲の一つで、歌声が講堂に響き渡った。
写真⑥
★第6幕 三博士★(写真⑦)
ヘロデ王と三博士が登場。豪華な衣装に負けないように、大掛かりな舞台転換が行われた。
★第7幕 星天使★(写真⑧)
東方で見つけた星を目印に進み続ける三博士。高校聖歌隊、中1聖歌隊のそれぞれによる合唱と、全体合唱&ハンドベルによる有名な聖歌「きよしこの夜」が演奏された。
★第8幕 御降誕★(写真⑨)
すべての人を救うためにイエスが生まれたことが全世界の人々に伝えられることを象徴する場面。「洛星のクリスマスタブローといえばこの曲」という聖歌「我らは来たりぬ」は、高校聖歌隊最大の見せ場。フィナーレは、高校聖歌隊とハンドベル。お互いの場所が離れているため合わせるのが難しいものの、心を一つに、荘厳かつ華やかな「神のみこは今宵しも」で観客を魅了した。