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私立中高進学通信

2025年特別号

未来を切り拓くグローバル教育

桜美林中学校

高1生がモンゴルでPM2.5 を測定
「グローバルリーダーシッププロジェクト」

『砂漠に緑をプロジェクト』では、大気の成分測定や現地の人々との交流を実施。日本とは環境も文化も異なるモンゴルで、多くの学びと体験が得られました(2025年8月実施)。

『砂漠に緑をプロジェクト』では、大気の成分測定や現地の人々との交流を実施。
日本とは環境も文化も異なるモンゴルで、多くの学びと体験が得られました(2025年8月実施)。

 桜美林中学校・高等学校では、世界規模の課題を自分ごととして考え、仲間とともに行動できる力を育てる「グローバルリーダーシッププロジェクト」が始動。高校1年生7名がモンゴルを訪問し、環境調査と国際交流に取り組みました。

モンゴルの高校生と協働
自分の目で見て考える学びを

「キリスト教精神に基づく国際人の育成」を建学の精神として掲げる同校。教育の柱の一つである国際理解教育では、異なる文化や価値観の中に身を置き、五感で学ぶリアルな体験を重視しています。

 2025年にスタートした「グローバルリーダーシッププロジェクト」もその一つです。教室での哲学対話などで問いを磨き、フィールドで調査を行い、分析・発表するサイクルで構成されています。同プロジェクトの一環である「砂漠に緑をプロジェクト」発足のきっかけは、モンゴルの大学の理事長・学生が来日し、桜美林中学校・高等学校を訪れたことでした。

「2050年の地球環境を見据え、地球規模の課題を自分の目で見て考える学びを実現したいと構想していた時期でした」。副校長の川原田康文先生はそう振り返ります。日本では春先に話題となる黄砂は、モンゴルでも社会問題化しています。「砂漠化が進み、緑地が減りゆく現状を自分の目で確かめてほしい」と考えた川原田先生は、同プロジェクトを企画し、7人の高校1年生が手を挙げました。

 モンゴル訪問は2025年8月3日(日)〜9日(土)の7日間にわたりました。訪問先は首都ウランバートルと、約370キロ離れたハラホリン。車で片道6時間半をかけての大移動です。

 現地の高校生と合流し、草原のゲルに2日間宿泊。モンゴルの高校生と協働でドローンを飛ばし、PM2.5、湿度、温度などを測定し、気候変化をデータとして捉えました。さらに、ハラホリンからウランバートルに戻る途中にはミニゴビ砂漠にも立ち寄り、撮影と大気の観測を行いました。

調査は、現地の高校生と協働で行いました。渡航前に校舎の吹き抜け部分を活用してドローン操作を練習し、現地での活動に臨みました。
生徒が2泊したゲル内部。「中に入ってみると意外と広く、よく眠れました」(田中さん)
日本式の教育を取り入れている「新モンゴル学園」を訪問。現地の高校生が受けている様々な教育について知ることができました。同日には日本大使館も訪れました。
帰国の前日にはJICAモンゴルを訪問し、日本が行っている支援などについても学びました。
帰国後は姉妹校と国際共同研究
体験から次の問いへ

 今回モンゴルで使用した測定機器と同じものを、モンゴル・アメリカ・韓国・香港・オーストラリア(2校)の姉妹校などにも配付。各校が同時期にデータを取得し、クラウド上で共有する国際共同研究へと発展しました。今後は各国のデータをもとに気候傾向を比較し、科学的に分析して報告書としてまとめる計画です。海外で学ぶだけでなく、科学的思考力やプレゼンテーション力として育んでいく点が、同プロジェクトの大きな魅力といえるでしょう。

同プロジェクトで使用している大気測定器

同プロジェクトで使用している大気測定器。
生徒たちは使い方にも習熟しています。

生徒インタビュー

異国の暮らしの中で実感した
“豊かさ”の意味
田中さん(高1)田中さん(高1)

 昨年修学旅行でオーストラリアに行って以来、海外への興味が高まっていました。とくに環境問題には関心があり、「地球のために自分ができることを見つけたい」と今回のプロジェクトに参加しました。

 行く前はモンゴルといえば“草原と砂漠の国”というイメージでしたが、実際に行ってみるとウランバートルは高層ビルが建ち並ぶ大都会で、交通渋滞にも驚きました。一方、泊まったゲルにはお風呂もなく、トイレも日本とは違っていました。ガールスカウトなどでキャンプには慣れているつもりでしたが、これまでに体験したことのない生活ができて、日本の便利な生活を見直すきっかけにもなりました。

 現地では発電について学ぶ機会がありました。モンゴルは火力発電が中心で、風や太陽光などの自然エネルギーが豊富であるにもかかわらず、十分に活かされているとは言えない現状にあり、「もったいないな」と感じました。

 今回のプロジェクトを通して、“豊かさ”の意味をもう一度考えるようになったのが大きな変化です。これからも、いろいろな国の環境や文化について学んでいきたいと思っています。

環境問題と人々の暮らしに触れ
「当たり前」の違いを知った
並木さん(高1)並木さん(高1)

 理系に進みたいと考えていたものの、具体的な分野が絞りきれずにいました。環境をテーマにしたこのプロジェクトが自分の進路を考えるヒントになると思い、参加を決めました。

 ウランバートルはとても発展した街ですが、水道水を飲むことはできず、うがいもミネラルウォーターでしました。「日本の当たり前が、世界では常識ではない」と強く実感しました。

 モンゴルには日本語学習者が多く、交流した高校生も日本語がとても上手でした。アニメや日本の観光地の話を通じてすぐに仲良くなり、「こんなにも日本に関心をもってくれているんだ」と嬉しく感じました。モンゴルの生活のことを詳しく聞けたのも楽しい思い出です。

 また、JICAの方からは水資源の話を伺い、環境問題が国の発展や人々の生活と深く関わっていることが分かりました。帰国後、水をこれまでより大切に使おうと意識するようになりました。今回のプロジェクトを経て、将来は水や環境の研究に携わるような仕事をしてみたいと思っています。

裸足で歩いた砂漠は
忘れられない思い出に
平山さん(高1)平山さん(高1)

 小学生のころから海洋プラスチックやヤドカリの生態を自由研究で調べていて、環境問題に興味がありました。

 モンゴルで印象に残っているのは、砂漠を裸足で歩いたことです。現地の方が「靴を履いていると砂が入ってしまうから、裸足で歩くといいよ」と教えてくれたので、靴と靴下を脱いでみました。砂は熱いと思っていましたが、実際に歩いてみると冷たくて、心地よかったです。

 モンゴルに行くまでは、大気汚染が深刻なのではと思っていたのですが、夏季は空気が澄んでいて、驚きました。しかし、冬になると暖房や排気ガスの影響で汚染が進むのだそうです。季節によって状況が大きく変わることを学びました。

 JICAの方から、環境問題は発電方法やエネルギー政策の問題だけでなく、人々の生活や経済的な状況とも関連があると聞きました。かと言って再生可能エネルギーを導入すればすぐに解決できるものではなく、人の暮らし方そのものを考え直す必要があるのだと知りました。現地で得た学びを活かし、帰国後の文化祭では発電をテーマに発表しました。

文化や考え方の違いを体験
語学への意欲も高まった
平坂さん(高1)

 海外に行ってみたかったこと、そして宇宙や星空が好きだったことが、このプロジェクトに参加した理由です。モンゴルの砂漠ではとてもきれいな星空が見えると聞き、「自分の目で見てみたい」と思いました。

 現地では、星の多さと輝きに圧倒されました。現地の人は「もっと自然豊かな場所なら、さらにきれいに見えるはずだよ」と教えてくれましたが、それでも東京とは全く違っていました。一番印象に残っているのは、モンゴルのお茶「スーテーツァイ」です。塩味のミルクティーで、最初は少し不思議な味だと思いましたが、次第においしく感じるようになりました。

 モンゴルの高校生は母国語・英語に加えて日本語がとても上手です。日本の教育制度に興味を持つ生徒も多いそうです。彼らの姿勢に刺激を受け、自分ももっと語学を学びたいという気持ちが強くなっています。

 今回の経験を通して、異文化に実際に触れる楽しさを実感しました。これからは海外で学んだり、旅行をしたりと、もっと外の世界に出てみたいと思っています。

「体験」の重みが
真の国際理解につながる
川原田康文先生(副校長)川原田康文先生(副校長)

 外国の人の考え方や生活習慣を本当に理解しないと、真の国際人にはなれません。生徒たちは今回のプロジェクトで、現地での生活や交流を通して貴重な体験ができたのではないかと感じています。

 帰国後の文化祭では、生徒が一人ずつ5分間の発表を行いました。発表内容はすべて生徒本人に任せたのですが、ドローンで撮影した映像やデータをふまえて自分の言葉で学びを語る姿に、「こんなふうに受け止めていたのか」と改めて感心しました。

 現在は、モンゴルをはじめ各国の姉妹校と連携しながら、世界中の大気のデータを集めています。今後は各校でそのデータをもとにレポートを作成し、互いに比較研究を行う予定です。同じテーマでも、国や地域によって結果や見方が違うはずです。その“違い”を知ることが、探究の学びにつながると考えています。

 今回の「グローバルリーダーシッププロジェクト」を通して、姉妹校との関係もより深まりました。生徒たちが長期的に世界とつながる仕組みとして、今後も発展させていきたいですね。

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