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私立中高進学通信

2022年特別号

新校長先生が語る「私学だからできる オリジナル教育」

桜美林中学校

キリスト教を通して平和主義的な価値観と学問探究の力を育成
明るい未来を創造できる“ピースメーカー”として世界へ羽ばたく人材に

新校長の堂本陽子先生

新校長の堂本陽子先生プロフィール
同志社大学大学院神学研究科前期課程修了(修士)、卒業。
日本キリスト教団近江八幡教会、倉敷教会で牧師として奉職し、特に青少年の教育分野での働きに尽力する。
2003年から桜美林中学校・高等学校にチャプレン(学校などで聖職者として奉仕する人)として赴任し、
2022年4月より校長に就任。父親の仕事の都合により幼少期を過ごした香港において、
異なる言語・文化をルーツとする人々と交流するなかで、互いを認め合い尊重し合う大切さを実感。
そこから世界の半数の人々が信仰するキリスト教や心理学に興味を抱くように。幼少時の夢は社会科の教員。

2021年に創立100周年を迎えた桜美林中学校・高等学校。「キリスト教精神に基づく国際人の育成」を建学の精神に掲げ、自分だけでなく人や社会のために学ぶ「学而事人」をモットーに、キリスト教を土台とした人間教育を行っています。「先が見えない現代において大切なのは、異なる価値観を認め合い協力し合い、よりよい世界を創造できる人間力。わが校の生徒には、そんな力を備えた“ピースメーカー”として世界へ羽ばたいてほしい」。そう語る新校長の堂本陽子先生に、桜美林が大切にする教育について伺いました。

――桜美林の教育理念について詳しく教えてください。

 創立者・清水安三は、早くから世界に目を向けていた人物です。彼が海外宣教師として中国へ渡り、教育を受けられない子どもたちのために設立した「崇貞学園」は、中国・朝鮮・日本の子どもたちが、互いの民族的・文化的背景の違いを受け容れ尊重し合う学校で、いわば現代の国際ボランティアとインターナショナルスクールの原型でもあります。その教育理念は、現在の桜美林の価値観にも受け継がれています。

 建学の精神である「キリスト教精神に基づいた教養豊かな識見の高い国際人への扉を開く」とは、キリスト教的価値観を土台に、グローバルスタンダードな教養を身につけ、社会・世界に貢献する人間であれ、ということ。モットーとする「学而事人」とは、自身が学んだことを用いて他者や社会に貢献するという意味です。神から与えられた恵みや学びを他者のために用いなさい、という聖書の考え方と結びついています。

 このようなキリスト教的価値観と確かな学力の両方を身につけ、よりよい世界をつくっていくために自ら行動できる生徒を育てること。それが我々の使命だと考えています。

――新型コロナやウクライナ侵攻など、先が見えない現代において、まさに必要とされる教育です。

 清水安三が大切にしていた言葉に“Pacifism(平和主義)”があります。国際化の真の意味は、語学というスキルだけではなく、人間の土台となる心の部分に“いかに世界の人々と協働してよりよい未来をつくっていくのか” “そこに自分はどのように貢献できるのか”という平和主義的な価値観を培うこと。我々は、そんな“ピースメーカー”を育てたいと考えています。そのために「国際性豊かなキリスト教精神をもった人間に成長していきましょう」と、日頃から生徒に伝えています。

香港で生まれ育ち、さまざまなルーツの人々と交流しながら幼少期を過ごした堂本校長先生。
「桜美林で学んだことを土台に、生徒にもどんどん海外に出ていき、広い世界を見てほしい」と語ります。

――具体的にどのように伝えているのですか?

 主に、週1回のチャペル礼拝、毎日のHR礼拝、週1時間の聖書の授業を通して伝えています。いずれの時間も、イエスの教えを学び、その学びを通して「あなたはどう考えますか?」という問い返しを行います。ただ聖書を読むだけではなく、「自分はどんな生き方をしていくのか?」といった、自己との対話を促す時間にもなっています。

 チャペル礼拝では、チャプレンや先生方が聖書の教えを通して生徒に語りかけます。生徒はその話を「礼拝ノート」に書き留め、それに対する自分の考えを書き、教員に提出し、教員はコメントを返します。生徒と教員がノートを通して心の対話を重ねていく感じですね。対話によって自分の考えが認められたという経験が自己肯定感を高め、先生は生徒自身が “このように考えているのだ”と気づき、生徒への理解を深めていきます。

――チャペル礼拝では、外部スピーカーもお話をされると伺いました。

 教育の現場として、生徒の人間形成や豊かな心を育むことにコミットしていきたいと考えているので、外部の方にも積極的に依頼しています。世の中のさまざまな生き方・考え方に触れてもらうため、さまざまな社会問題に取り組んでおられる方や、平和のために活動されている方々に来ていただくこともあります。

 礼拝を通してイエスの教えに出会い、それを通して自分自身を深めていく。同時に世界にも目を向け、世の中にはさまざまな生き方があることを知って、自分がどんな人生を送っていくのか考える助けにしてもらえればと思っています。

――HR礼拝でもユニークな取り組みをされているそうですね。

 毎日のHR礼拝では、生徒が順番に礼拝を執り行います。お祈りの言葉も生徒が考えます。中学生は、身近な学校生活にまつわることが多いですが、自分の祈りを言葉にし、皆で共有することを大切にしています。

 中2のHRでは、礼拝後に1分間スピーチの時間を設けています。思っていること、考えていることを言葉にし、他者に伝えることで、思考力・表現力・スピーチ力といったスキルのほかにも、自己開示力が培われます。自己開示力とは、自分をオープンにして、互いに受け容れ認め合うこと。そうすることで安心感や自己肯定感が高まり、信頼関係が構築されます。

――聖書の授業ではどのようなことを行っているのですか。

 グループワークを積極的に取り入れています。たとえば、「幸いな生き方」というイエスの教えがありますが、そこで「あなたにとって幸せとは何?」と問いかけます。グループで話し合うなかで、同じ答えであっても考えるプロセスが違っていたり、答えは違うけれど判断基準は一緒だったり、というような気づきがあります。つまりそれは、異なる考えを受け容れ認め合うという価値観の育成につながるのです。

 心がけているのは、イエスが語る真理に照らし合わせて、現代を生きる私たちが、この問題についてどう考えるのかというアプローチをすること。自分自身や現代社会に引き寄せてイエスの言葉や教えについて考えられるような仕掛けをしています。生徒は楽しんで盛り上がっていますね。

 このように、チャペル礼拝、HR礼拝、聖書の授業を通じて、聴く力・自分の考えを言葉にする力(書く力・スピーチ力など)を養うとともに、それらが自らの深い思考力や共感力へもつながっていくのです。

――毎年掲げる「聖書の言葉」とはどのようなものですか?

 今年は「見えないものに目を注ぐ」という言葉を年間聖句として選びました。私たちの生活は、命や心、愛情、友情、夢など見えないもので支えられています。始業式では「ロシアによるウクライナ侵攻という事実の向こうに、あなたは何を見ていますか?」と問いかけました。「戦火のなかにある悲しみの声が聴こえていますか?」「歴史的・政治的背景は見えていますか?」「世界情勢が大きく変わるこの出来事による未来を想像できていますか?」と。それらを見るためには、確かな知識技能と共に想像力や思いやりの気持ちが必要です。

 つまり、宗教教育とは、より良い生き方や人間の在り方につながる価値教育であると同時に、見えないものを見ようと思考する力、学問を探究する姿勢・態度をも育んでいるのです。

――キリスト教を通して、平和主義的な価値観と学問を探究する力を体得するということですね。

 明るい未来を創造していくために必要なものは、平和主義的な価値観と学問探究の力です。さまざまな場面で答えを出していく際に必要となるのは、知識やスキル、思考力・判断力・表現力といったもの。そのなかでも、判断力に影響を及ぼすものは価値観です。人を育てていくには価値教育が必要であり、桜美林では、それをキリスト教を通して行っています。学校の「時間割」というシステムは、カトリックの修道院で始まったもの。教育と宗教は密接につながっているのです。

立派なパイプオルガンを備えるチャペルは、心が澄み渡るような厳かな空間。
毎週、火曜日は高1生、水曜日は中学全学年、木曜日は高3生、
金曜日は高2生が、1時間目にチャペルに集い礼拝を行っています。
チャペルを彩るステンドグラス風のアートは美術部の生徒が描いたもの。

――桜美林での6年間を通して生徒たちはどのように成長するのでしょう。

 周りの方から「優しい生徒が多い」という言葉をよくかけていただきます。「誰かのために何かをしたい」と考える生徒が多いですね。東日本大震災が起った数年後、生徒が復興のためのボランティア活動「さくらプロジェクト」を立ち上げたのですが、卒業後も活動を続ける生徒が少なくありません。この活動をきっかけに救命救急の看護師になった卒業生もいます。そんな卒業生たちを見て思うのは、どんなに大変な場面であっても、決して負けないマインドが育っているということ。聖書のなかに「辛いこと、苦しいことの向こうには、希望、喜びがある」という教えがあるのですが、希望をもって生きる心の強さがしっかり根付いているなと感じます。

――桜美林は充実した国際交流プログラムで知られますが、コロナ禍においてはどのように対応されましたか。

 先ほどの、困難の向こうに希望があるという教えに通ずるのですが、現地に行くことができない状況下で、どうにかして国際交流を続けたいと奔走した結果、より多くの国と交流をもつ機会が広がりました。韓国や中国の姉妹校はもとより、国際センターを擁する大学付属校の強みを活かして、これまで交流のなかったインドの生徒とオンラインでつながることができました。これを機にインドの提携高校の在校生宅でホームステイできないかなど、コロナ後に向け世界各国と交流を深めていく動きも始まりました。わが校はもともと創始者が日本と朝鮮とアメリカをつなぐ構想のもとに設立した学校であり、つまりそれは世界ともつながるということ。今後も世界に羽ばたく人材育成に注力するつもりです。

――コロナ後は、国際交流がよりいっそう活発になりそうですね。

 海外に出ていくことは、本校が大切にする「世界の人と共に生き、それぞれの違いを認め合いながらよりよい世界をつくっていく」という願いを実践できる機会。どんどん世界に出ていってほしいです。そのために、生徒が自らの夢をもちながら平和な世界を創造する、希望をもって困難をのりこえる、そのようなマインドを育成するプログラムをさらに拡充していきます。

――海外大学進学という道を選択する生徒も増えていると伺いました。

 有名大学・難関大学だからというアプローチではなく、桜美林での学びを通して、どんな場所で何を学び、どんな生き方をしていくのかを考え抜いた結果、海外大学を選ぶ生徒も増えてきました。今後も積極的に生徒を海外に送り出していくつもりです。

桜美林では「多文化共生社会」のなかで生きていくために、独自の英語教育や多彩な国際交流を通じて、
文化の異なる人たちと十分なコミュニケーションがとれる力を養います。

――最後に桜美林中学校をめざす受験生にメッセージをお願いします。

 今はたくさんのことを控えて受験準備に集中しているかと思いますが、その先には楽しく明るい未来が待っています。頑張ってください。

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