私立中高進学通信
2024年特別号
2024年特別号
武南中学校
世界を知り、視野を広げる
全員参加の中2『アジア研修』・高1『アメリカ研修』
海外研修についてお話を聞かせていただいた吉越愛莉さん(中3)と、山田
全員参加で行われる海外研修と国内研修は、武南中学校の特色の一つです。中2『アジア研修』、高1『アメリカ研修』、高2『古都研修』、これらの研修プログラムを通して、日々の教育活動と連動しながら、真の国際理解につながる「世界を知る心」を磨いていきます。今回は中2『アジア研修』・高1『アメリカ研修』について、担当する先生方に紹介してもらい、さらにこの海外研修を経験した生徒たちから感想を聞きました。
開校当時からグローバル教育に力を注ぎ
独自のプログラムに取り組む
武南中学校は、1963年に設立された武南高等学校に併設する中高一貫部として、2012年に開校しました。開校以来中高一貫部ではグローバル人材の育成に力を注いでおり、今回紹介する『アジア研修』や『アメリカ研修』を含め、授業をはじめとする教育活動のなかに探究型の取り組みを多く実施しています。
英語でプレゼンテーションやディスカッションなどを行い、思考力・判断力・表現力を育む異文化理解プログラム『BUNAN INNOVATION』、理科・社会科・芸術科での多彩なフィールドワーク、埼玉大学STEM教育研究センターとの共同研究による教科横断型のSTEM教育、古典芸能を学ぶリベラルアーツ教育など、独自のプログラムを打ち出してきました。こうした取り組みが評価され、ここ数年は受験者数が大幅に増加。また卒業生が少数精鋭の躍進を見せていることもあり、入学者数も増えており、活気ある校風のなかで多くの生徒がイキイキと学んでいます。
英語科・入試広報主任の
「本校では英語4技能だけにとどまらない、国際人としての素養を身につけることに重きを置いています。海外研修はそのための核となる取り組みです。たんに英語力を伸ばすことを目的とするものではなく、英語を使って交流したり学んだりすることを目的としています。
海外研修では生徒の気づきや学びにつながる多彩な体験を多く盛り込んでおり、同世代の生徒同士による交流の機会も設けています。現地の中高生や大学生などと交流することは、世界の中にいる自分を見つめ直すよいきっかけとなり、国際人としての意識を高めることにつながるのです」(神殿先生)
「海外研修はゴールではなく、中高6年間における成長のきっかけになるものです。英語の得意・不得意や海外に対する興味・感心による希望制ではなく、すべての生徒が参加することで、それぞれが自分なりのやり方で体験を乗り越え自分自身の成長につなげていけるようにしています。
研修で得た経験をそのままにせず、『海外研修報告会』を開催し、自分の意見や考えを英語でまとめて発表する事後学習を実施しています。こうした取り組みを通じて、本校の海外研修は単に英語を学ぶだけでなく、その場で感じたことや考えたことを英語で表現する力を育むことを重視しています」(津島先生)
ベトナムとカンボジアを訪問する
アジア研修
2024年度の海外研修プログラムは、コロナ禍を乗り越え5年ぶりに再開しました。
「今年度のアジア研修は、昨年度に実施できなかった分を補うために中3と中2が合同で実施しました。5泊6日の日程で、初日はカンボジアを訪れ、現地の中高一貫校との学校交流や女性の社会進出を支援する認定特定非営利活動法人・『SALASUSU』(サラス―スー)の活動見学を通じて、カンボジアの文化を実際に肌で感じる貴重な体験をしました。
その後、カンボジアからベトナムへ移動しました。ベトナムはカンボジアと比べて発展が著しく、空港に降り立つとその都会的な景色に驚かされます。本校のアジア研修は、開校当初はベトナムのみで実施しておりましたが、近年ではカンボジアも加え両国の違いを学ぶことを重要視しています。この研修を通じて、急速に発展するベトナムの現状と共に、その発展に伴う課題についても考察する機会となりました。また、ベトナム訪問ではベトナム戦争の傷跡を見学し、平和学習の一環として歴史の重みを感じる体験も行っています。
このようにカンボジアとベトナムの両国を訪れることで、生徒たちは異なる文化や歴史、そして現代の課題について深く学ぶことができました。この研修は、生徒たちの視野を広げ、国際理解を深める貴重な機会です」(神殿先生)
吉越愛莉さん(中3)は、アジア研修を次のように振り返ります。
「アジア研修では、日本では見られないたくさんのものを見学し、驚きの連続でした。なかでもトンレサップ湖の水上生活を見学したことは、強く印象に残っています。水面に浮かぶ集落には学校やレストランなどがあり、そこでワニを飼育していることにとても驚きました。人々は湖の水を使って生活していて、日本のように生活用水や電気などが整っていませんが、その表情を見ると、日本にはない豊かさや幸せがあるように感じました。研修前の事前学習で『幸せ』について考える取り組みを行っていたこともあり、日本との『幸せ』の価値観の違いについても考えさせられました。
また、世界遺産のアンコール遺跡群を見学し、保存・修復作業を手伝う貴重な体験もしました。それから、水上人形劇もとても印象に残っています。人形の表情が独特で、芸術や美しさの基準が国や文化によって異なると感じました。
ベトナムでは戦争の傷跡を実際に目の当たりにし、平和とは何かを考えるきっかけになりました。クチトンネルでは戦争に使われたトンネルを通る機会をいただいたのですが、私は足がすくんでしまって入ることができませんでした。実際に通り抜けた友人は、『とても狭くて暗くて怖かった』と話していました。
次のアメリカ研修では、アジアと欧米諸国の違いや、日本とアメリカの違い、ベトナム・カンボジア・日本・そしてアメリカの違いなど、さまざまな切り口で文化の違いを比べてみたいと思っています。これらの研修を通して、もっと世界のことを知り、自分の視野を広げていきたいです」(吉越さん)
ボストンとニューヨークを訪問
アメリカ研修
「今年度のアメリカ研修は、さまざまな社会情勢を考慮し、16日間から14日間に短縮して実施しました。この研修ではボストンとニューヨークを訪れ、メトロポリタン美術館やボストン美術館の鑑賞、国連ツアー、ニューヨークのグラウンドゼロと9.11博物館の訪問に加え、ニューヨークとボストンの市内観光や5日間のホームステイなど、充実したプログラムを用意しています。期間は短縮されましたが、非常に内容の濃い研修となっています。
ボストンではハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)のキャンパスを訪問します。MITでは現地の大学院で学んでいる本校の卒業生に会い、さまざまなお話を伺いました。生徒たちは大いに刺激を受け、今後の学習や進路に対する意欲を一層高める機会となりました。
5日間のホームステイ期間中は現地校に通い、英語のレッスンを受けたり、バディ(現地生徒)と一緒に現地の授業に参加したりします。ここでは、日頃の授業とは異なる高度な英語力を求められますが、生徒たちはこれまでの学びの成果を大いに発揮していました。『リスニングができるようになり、自分の意見を表現できるようになった』と手ごたえを感じる声が多く寄せられています。
生徒たちの成長と新たな挑戦に対する意欲を目の当たりにし、私たちも大変励まされました」(津島先生)
山田埜英塁さん(高2)は、アメリカ研修を次のように振り返ります。
「今回のアメリカ研修は、本当に素晴らしい経験となりました。現地校の生徒たちはとても意欲的に授業へ参加していて、その姿勢に圧倒されました。そのような雰囲気に背中を押され、自分もどんどん積極的になっていきました。授業は全て英語で行われるため、授業についていくのは大変でしたが、休憩時間など含めてバディや周りの生徒たちが協力してくれたおかげで、とても楽しく過ごすことができました。
市内観光では、ニューヨークで目にしたホームレスの人々が特に印象に残っています。ギターを弾くなどして懸命に生きようとする姿は、とても力強く感じました。また、彼らに寄り添う人々の姿も見られ、人の温かさを目の当たりにして感動しました。
MITでは、先輩の話を聞いて大いに刺激を受けました。大学院というと勉強するところだと思っていましたが、起業に携わるなど、とても自由で充実している先輩の姿が印象的でした。もっと英語力を向上させ、自分も海外の大学で学びたいと思うようになりました。
この経験を通じて、自分の将来に対する視野が広がり、新たな目標をもつことができました。今回のアメリカ研修に限らず、この学校はフィールドワークがとても多く、さまざまなことを体験できるのでとても楽しいです。これからも、このような貴重な体験を大切にしていきたいと思います」(山田さん)
武南中学校
〒335-0002 埼玉県蕨市塚越5-10-21
TEL:048-441-6948
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