私立中高進学通信
2023年特別号
未来を切り拓くグローバル教育
武南中学校
実際に経験して、考えたことを表現する英語力を育成
SDGsやSTEMを柱とする、独自の探究学習も展開
中学校開設時から実施してきた『アジア研修』(中)は、ベトナムとカンボジアを訪れ、遺跡の修復作業を体験したり、現地の中学生と交流したりと盛りだくさんの内容です。写真はカンボジアで、世界寺子屋運動を視察した際の様子。
1963年に創立された武南学園の建学の精神「自主・自立・自学・協同」の伝統を受け継ぎ、2012年に中高一貫の武南中学校が開設されてから約10年。次の10年に向けてさらなる発展をめざす、同校の取り組みについて取材しました。
新たな10年に向け、先進的な教育を展開
思考力、判断力、表現力の育成をめざす
武南中学校・高等学校は、新たに中高一貫コースを設けた当初から、国際化・情報化・多様化の進む時代を見据え、先進的な教育を実践してきました。
幅広い教養と探究心を身につけるため、理科・社会科・芸術科でのフィールドワークや日本文化に目を向けた芸術鑑賞会などさまざまな体験学習を実施しており、中2の『アジア研修』、高1の『アメリカ研修』など、新進気鋭の学校だからこそできる最先端のグローバル教育も展開しています。
多くの卒業生が国公立大学や難関私立大学への合格を果たすなど、成果を挙げ続ける同校は、新たな10年に向け、「国際社会で活躍する高い知性と探究心、豊かな教養を身につけた人材の育成」をコンセプトに掲げ、独自の異文化理解プログラム『BUNAN INNOVATION』をスタート。『B-STEM教育』『SDGs探究学習』も推進し、社会で求められている思考力、判断力、表現力の育成に力を注ぎます。
独自の異文化理解プログラム
『BUNAN INNOVATION』
中学校英語科の神殿朋宏先生。今年度(2023年度)からスタートする独自の異文化理解プログラム『BUNAN INNOVATION』について、中学校英語科の神殿朋宏先生は次のように話します。
「一般的な英語4技能の力を育てるのはもちろんのこと、物事を多面的に捉える力や論理的な思考力も養成し、自分の意見を英語で表現できるところまで育てることを目標としています。
中学初期の段階では、英語でのコミュニケーション、さらに自己表現の方法を学ぶことに重点をおいています。2名のネイティブスピーカーが常勤しており、授業外でも自然と英語によるコミュニケーションが生まれる学習環境にしています。また英会話授業は1クラス10名ほどの少人数で、ネイティブ教員によるオールイングリッシュの授業を展開し、生徒たちの発話量を確保をしています。
高校からは日本人教員とネイティブ教員によるチームティーチングになります。ここでのねらいは、日本人と英語圏の人との考え方や捉え方の違いを学ぶところにあります。TEDTalksや英字新聞を用いて、さまざまなトピックに触れながら、他教科で学んだ内容ともリンクさせ、論理的に思考し発信する力をつけていきます」(神殿先生)
表現力や思考力の強化を図る新しい英語学習は、中2の『アジア研修』、高1の『アメリカ研修』、高2の『古都研修』といった研修旅行や、日本文化の理解を深める『古典芸能鑑賞教室』などのフィールドワークとも密接に結びついています。
「アジア研修ではベトナムとカンボジアを訪れ、日本とアジア諸国のつながりについて学ぶとともに、現地では生徒と同年代の子どもたちとも交流をもちます。それにより、英語圏以外の国でも英語によるコミュニケーションが当たり前となっている国際社会の現状を実感してもらいます。
また、アメリカ研修はボストン・ニューヨークで実施し、ホームステイをしながらハーバード大やMITなど世界のトップの大学に通う学生と交流を図れる機会を設けています。そこでは日本の代表として自分の国について説明したり、自らの意見を伝えたりすることが求められます。自国の伝統や文化、歴史を正しく理解していかないと相手の質問に答えられません。ここで中学でのFWなどの経験が生きてきます。
これらの経験を通じて、生徒が実際にその場で考えたことや感じたことを英語で表現できるようにする。それが本校における英語学習のポイントです」(神殿先生)
アメリカ研修ではボストンを訪問します。研修先のボストンには、名門マサチューセッツ工科大学の大学院で学ぶ卒業生もいます(写真はハーバード大学体験授業の様子)。
取材中に偶然通りかかった中学生とモニファ先生は、英語で雑談を楽しんでいました。同校には2名のネイティブスピーカーが常勤しており、自然と英語を使ったコミュニケーションが生まれています。生徒主体の学びで思考力、表現力、課題解決力を
育成する『SDGsプログラム』
入試広報担当の鷲田雅幸先生。武南では、日々の授業の中に生徒自らが学び、自ら考える探究型学習を数多く取り入れています。中高を通して行う多彩なフィールドワークでは、 事前・事後学習を通して、自らの意見を述べ、他者と討論し、知識を深め合うことで、思考力や表現力、習得した知識を活用する力も培っていきます。
「これまでも本校ではフィールドワークなどを通して、日本や世界の課題に向き合ってきました。中1では埼玉県秩父の町おこしに取り組み、中2ではJICAやUNICEF、民間企業を見学して日本の経済支援について学んだうえで、アジア研修に出かけるなどしています。
コロナ禍で海外研修ができない間も、国内でさまざまな代替案に取り組みながら、再開に向けて準備を重ねてきました。
一例を挙げると、中2で行われる予定だったアジア研修の代替として、3泊4日の九州での国内研修を中3で実施しました。1日目は国際色豊かな立命館アジア太平洋大学で外国人留学生とディスカッションを行い、2日目は留学生たち5名と温泉地をめぐりながら「持続可能な街づくり」について英語による探究学習を行い、3日目には長崎総合科学大学の特別プログラム『海洋生物と海の環境をSDGsの観点から考える』プログラムを体験しています。
今後はSDGsの達成に向けた教育を、各教科の授業にも取り入れていきたいと考えています。これまで本校が培ってきた生徒主体の学びを、今後はさらに深化させていき、SDGsを探究学習の柱に据えていくつもりです」(入試広報担当/鷲田雅幸先生)
入学時のHR合宿での新たな取り組みとして、中1生が埼玉県秩父の町おこしに挑みました。
中3の芸術科フィールドワークでは、ただ能楽を鑑賞するのではなく、事前に講師の先生を招いて事前学習に取り組みます。調べ学習やプレゼンテーションなど、事前・事後学習を通して体験を確かなものにすることも武南のフィールドワークの特色です。独自のSTEM教育『B-STEM』を推進
主体的な問題解決者を育てる
武南では、Science(科学)、 Technology(技術)、Engineering (工学)、 Mathematics(数学)の4分野を横断的に学ぶSTEM教育においても、独自の取り組みを行っています。
「本校では2年ほど前から埼玉大学のSTEM教育研究センターと協力して、中2生を対象とする計6コマのプログラミング特別授業を行っています。今後は埼玉大学のSTEM教育研究センターと共同で、AIとともに社会を創造できるSTEM人材の育成をめざして、知識創造型の教育プログラムを推し進めていきます。
本校の特色は、国内外の文化の多様性を学び、国際社会で活躍する豊かな教養を身につけられる点にあります。これらの特色を組み合わせた独自のSTEM教育『B-STEM』を推し進めることで、新たな時代に必要とされる、主体的な問題解決者を育んでいきたいと考えています」(鷲田先生)
一段とブラッシュアップされた英語教育・国際教育に加え、SDGsやSTEMを柱とした独自の探究学習を展開する同校。次の10年に期待が高まります。
埼玉大学と連携してプログラミング学習も実施しています。
今後は、創造力や発想力、問題解決能力の育成にも役立つプログラミング教育を、
多くの教科の授業に取り入れていく予定です。
武南中学校
〒335-0002 埼玉県蕨市塚越5-10-21
TEL:048-441-6948
進学通信掲載情報
年度別アーカイブ
- 2025年度
- 2024年度
- 2023年度
- 2022年度
- 2021年度
