私立中高進学通信
2021年特別号
熱中! 部活動
本郷中学校/鉄道研究部
ジオラマ制作やレポート発表、合宿を通して
鉄道の“本質”を学びながら一生の仲間に出会える場
自分の好きなことを仲間とともに自由に探究できる「鉄道研究部」。部員たちは「楽しい!」と声を揃えます。
前列中央の部員が手に持っているのは、三陸鉄道を訪れた時の記念プレート。
文武両道を掲げ、8割以上の生徒が高2~高3まで部活動に参加している本郷中学校・高等学校。同校の「武」は運動部だけを指しているのではなく、文化部の活動も盛んです。なかでも、「この部があるから本郷を志望した」という生徒が多いのが「鉄道研究部」。毎年「全国高等学校鉄道模型コンテスト」に出展し、上位入賞を果たすなど、学校の内外で注目を集めています。
完成時の喜びと感動はひとしお!
絆が強まるジオラマ制作
30年以上の歴史をもち、学外でもその名を知られる本郷の「鉄道研究部」。現在中学生19名、高校生14名の計33名が在籍しています。中学生と高校生が一緒に活動するので、同学年のつながりだけではなく、先輩・後輩の仲がよいのも特徴です。
「鉄道という共通の趣味に対して、学年を越えて調べたり語り合ったり議論したりすることで、先輩・後輩の絆は強まりますね。OBとの交流も盛んで、本郷祭(文化祭)の後の打ち上げでは例年、鉄道関係の職についたOBがアドバイスやレクチャーをしてくれることもあります」と顧問の増田稔先生は語ります。
週3回の活動では、主にジオラマ制作とレポート発表を行います。本郷祭に展示する大きなジオラマを1年間かけて制作しますが、部員全員の意見をすり合わせ、小さなパーツ作りからスタートし、大きな作品へと作り上げていく作業は、想像以上に大変です。
「それぞれが思い描くジオラマを、一つの完成型へと落とし込む作業が最も大変で、ときには部員同士で衝突することもあります。また、小さなパーツを作る過程では、細かな作業を延々と続ける根気が必要です。それだけに完成したときの達成感と喜びはひとしおで、部員同士の友情はぐんと深まります」と、2021年秋から部長を務める高1の西澤謙佑さんは、ジオラマ制作のやりがい、醍醐味を語ってくれました。
ジオラマ制作では、中1生はまず先輩たちに教わりながらジオラマの小さなパーツを作る練習からスタート(左)。
こうして先輩から後輩へ脈々と技術が継承されていきます。また、学年が上がるに従い、難易度が高い部分を担当。
一緒に一つのものを作り上げるという経験を通して深まる、学年を越えた絆・友情も部員たちの大きな財産です。
「全国高等学校鉄道模型コンテスト」で特別賞を受賞したジオラマ。
レポート発表で探究力や発信力など
社会的スキルも身につく
一般的にジオラマ制作が主たる活動という印象の強い鉄道研究部ですが、本郷ではレポート発表にも力を入れており、活動日には毎回2~3名の生徒が自身で調べた鉄道に関する研究を、全部員の前でプレゼンテーションします。研究テーマは鉄道に関することであれば何を扱ってもよく、車両や音、電気系統など電車そのものを深堀りしたり、鉄道会社や駅、海外の鉄道事情などを調べたりと、多岐にわたります。
自分が興味のある分野を深堀りし、分析するという作業に加え、パワーポイントで資料を作り、プレゼンをするという経験を通して、部員たちは、より伝わりやすい資料を作成する能力や、プレゼンテーションスキルを高めています。好きなことに没頭しながら、そのような社会に出てから役立つ力を自然と身につけることができるのも、鉄道研究部の魅力です。
「ほかの部員の発表を聞くことで、『こんなアプローチがあったんだ』『この切り口は面白いな』と刺激を受け、さらに自分のテーマを広げていくという好循環が生まれています。また、プレゼンテーションをして終わりではなく、テーマの掘り下げ方やプレゼンの仕方、資料の見せ方、資料に使う写真の撮り方などについても、ほかの部員からフィードバックがあり、それがより精度の高い研究、効果的なプレゼンテーションにつながっています」と増田先生。
「特に意識しているわけではないのですが、好きなことを調べて発表し、次はもっと精度の高い内容にしようと努力することで、鉄道の知識だけではなくさまざまなスキルが身についていると感じます。毎年出展している『全国高等学校鉄道模型コンテスト』で、『ベストプレゼンテーション賞』が受賞できたのは、日々の研究・発表の場があったからこそだと思います」と、西澤さんは自分たちの成長ぶりを振り返ります。
全部員が1学期ごとに1度以上は行うレポート発表。パワーポイントを使った自作の資料を使用。
部員たちは、写真の撮り方やグラフ、図などにもこだわり、創意工夫を凝らしたプレゼンテーションを行います。
日本各地のローカル鉄道を訪れ
学びを深める年2回の合宿
こうした日々の活動に加え、部員たちが毎年心待ちにしているのが合宿です。この2年間はコロナ禍により実施できませんでしたが、例年、春休みは1泊2日、夏休みは2泊3日の旅程で、日本各地の鉄道会社を訪れます。行き先は、部員がそれぞれ意見を出し、話し合って決定。どこへ足を運び何をするのか、部員が主体となって細かいスケジュールを決めていきます。「地方にはローカル鉄道がたくさんあり、それぞれが異なっていて興味深い。許可をいただいて必ず車庫見学もさせてもらっています」(西澤さん)
東日本大震災以降は、3年に1度、岩手県の三陸鉄道への訪問が恒例となっており、久慈駅の清掃や除草作業といったボランティア活動も行っています。
「貸切り車両『震災学習列車』に乗車して、三陸鉄道の社員の方から沿線が被災した時の様子を伺ったほか、復興の様子も見学できて、とても有意義な時間でした」と西澤さん。
また、2019年の夏合宿では、2018年の西日本豪雨で被災した地域の鉄道網の調査として、岡山県倉敷市の水島臨海鉄道を訪れて車庫を見学し、臨時輸送の状況などを学びました。合宿後に部員たちはレポートを作成し、本郷祭の来場者に配布するとともに、ジオラマへの植樹を通して募金活動を実施。部員たちの募金と併せて、三陸鉄道や水島臨海鉄道の切符を購入することで、寄付を行いました。
「このように、外部とのコミュニケーションのなかで、社会奉仕活動も活発に行うことは、本郷の建学の精神『個性を尊重した教育を通して国家有為の人材を育成する』に通ずるものがあり、鉄道研究部の部員にもそうした意識が自ずと根付いているのかもしれませんね」と増田先生は語ります。
好きなテーマを自由に研究しながら、社会奉仕活動も積極的に行っている本郷の鉄道研究部。大好きな鉄道に没頭できるだけでなく、社会で役立つさまざまなスキルが身につき、一生の仲間と出会える場にもなっています。
ベビーカーに乗っている頃から電車が好きだったらしく(笑)、本郷を受験した一番の理由は、鉄道研究部に入りたかったから。今は好きな鉄道を思う存分探究することができてとても楽しいです。電車が好きだと自ずと地理も好きになり、そこから地質学や歴史も好きになるというように、どんどん興味の幅が広がるのも、鉄道研究の楽しいところ。そして全員に“鉄道が大好き"という共通点があるから、話が尽きることはありません。学びたいテーマの幅が広がり、一生の友人に出会える場でもあります。皆さんの入部を待っています!
ジオラマを作って終わりではなく、部員たちには鉄道の本質を体得し、学びを深めてほしい。そう考えてレポート発表にも力を入れています。コロナ禍中には、「鉄道会社は苦境たたされているが、どんな改善点があるか、どのように立て直しを図っているか」というテーマで発表をした生徒もいました。切磋琢磨しながらそれぞれの興味をつきつめ、高みをめざしてほしいですね。
【鉄道研究部データ】
■活動日/活動時間 | 火・木:15:30~17:30 土:13:00~16:00 |
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■部員数 | 33名 中1=5名 中2=5名 中3=9名 高1=6名 高2=1名 高3=7名 |
■近年の主な実績 | 全国高等学校鉄道模型コンテスト2021~ベストプレゼンテーション賞(モジュール部門)、理事長特別賞(HO車両部門) |
本郷中学校
〒170-0003 東京都豊島区駒込4-11-1
TEL:03-3917-1456
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