中村 孝子 先生(国語科/教科指導部長)
高2の授業選択は例年、高1の11月までにガイダンスを行い、それぞれの志望に沿った授業選択が完了しています。しかし2020年は新学期から休校となったために、初めての選択授業を受けることができませんでした。そこで授業のシナリオのようなものをつくりました。たとえば「〇分頃からこのような取り組みをします。そして問いの解答は〇分頃に配信します」というように、1日のタイムテーブルをつくって授業を行いました。
分散登校が始まった日、生徒の体力が衰えていることに衝撃を受けました。休校期間中に一度も外出しなかった生徒もいたようで、部活動をやってきた生徒でも、筋肉が落ちて顔色が白くなって別人のようでした。そこで、それぞれの学年が直面する問題点を解決して、生徒を励ます教員たちのリーダーシップが問われました。帰宅時間が早まったために、授業の質問や進路指導も、限られた時間内で行わなければならなかったのですが、職員室に訪れた生徒たちの姿を見ていると、対面での指導を求める生徒たちの気持ちが伝わってきました。
制約の多い学校生活でしたが、全クラスが5分間の動画を制作して配信した学院祭には、大きな成長を感じました。初めての行事を体験した新1年生の動画は、「これをきっかけに正則生になれたのだ」と実感できました。正則の大きな行事である体育祭はできなかったけれど、クラスのみんなで一つの動画を作り上げたという達成感も感じました。
上級生は休校期間中に抱いた問題意識を見事に表現していました。「教育が不要不急のものになってしまった」という憤りも感じました。一方で、このような状況になってもいろいろな発想やアイデアを生み出して、「みんなで乗り切っていこう」という気概も感じました。本校はさまざまな教科で新聞を活用して社会問題を考える機会は多いのですが、新しい大学入試や誰も経験したことのない感染症など、社会で起きている問題を“自分ごと”として捉えて考え、議論して、表現した5分間の動画は、生徒たちの成長のドキュメンタリーでした。
進路や授業選択に関する面談は、限られた時間の中でも綿密に行っています。コース制のない本校では、授業選択は一人ひとりの将来に関わる問題であり、リモートだけでは難しいものです。3年生の論文指導に関しては、ICTを有効に活用して進められる可能性が見えてきました。国語の授業でも、普段発言しない生徒の意見も共有できるなど、多くの生徒の意見を共有し、読み合う授業を進めたいと思います。
この経験を語り継ぎ、活かして、教育の財産にしたいと思います。