今年で創立135年を迎える正則高等学校の教育理念の一つに、「社会で生きていく力をつける」があります。この力をつけるために沖縄への「学習旅行」や、「農業」「看護」「介護」「保育」といった職業体験など、さまざまな課外活動が行われていますが、正則高等学校独自の教育と言えるのが、高1「総合」で取り組む『人間の性と生』の授業です。
この授業がスタートしたのは、男子校から共学校になった2000年のこと。高校のカリキュラムに「総合」の授業が盛り込まれたタイミングでした。
「その頃、共学化に備えてどのような教育が必要かと、教員のあいだで議論を重ねました。そこでまず必要なのは、男女それぞれが自分の身体について知り、自分の性に対して肯定的な意識をもつことであると考えました。その先に人権に基づく価値観を形成し、男女が対等な人間関係を築くために、『人間の性と生』をテーマとする授業を行うこととなりました」(社会科/佐藤卓先生)
2023年度、高1の「総合」で行われた『人間の性と生』の授業は23回。1学期は、①セックスとジェンダーを考える ②すり込まれる性とメディアリテラシーなどがテーマとなり、CMや映画ポスターで描かれるジェンダーを題材に自分たちのジェンダー意識を確認しました。1学期の終わり頃から2学期にかけては、③多様な性のあり方を考える をテーマに、SOGIなどの多様な性のあり方について考えます。
2学期は、④関係性・性交・身体の性がテーマとなり、男女それぞれの身体の違いについて考えました。2学期の終わり頃から、⑤支配と強制の性を考えるがテーマとなり、「デートDV」や「痴漢」などの性暴力をテーマに学びを深めます。性や男女の身体について話すのは、生徒にとって最初は戸惑いもあるようですが、生徒たちの意識は徐々に高まりつつある様子。テーマごとに行った振り返り作文の文字数も、徐々に増えていきました。
この授業を担当して6年目という佐藤先生は、「例えばLGBTQという言葉について、年々認知度が高まっているように感じていましたが、今年度の1年生はほとんどの生徒が知っていました。社会全体が変化していることを実感しています」と話します。
授業における目標の一つに、「知識や批判的な考え方の上に、関係性・性行動の適当なスキルを身につける」とありますが、これはまさに将来生きていくための力、正則高等学校における教育の軸をなすものではないでしょうか。そこで昨年度、『人間の性と生』の授業を受講した生徒3名と佐藤先生による座談会を実施。1年間を通して考えたことを語ってくれました。

