開智未来高等学校が開校した年の第一期生OBでもある社会科の野中先生。高校時代の恩師である工藤智先生との出会いが、高校卒業後の進路・職業選択に大きく関わったと言います。恩師との思い出や、教育にかける思いなどについて語っていただきました。
開智未来高等学校が開校した年の第一期生OBでもある社会科の野中先生。高校時代の恩師である工藤智先生との出会いが、高校卒業後の進路・職業選択に大きく関わったと言います。恩師との思い出や、教育にかける思いなどについて語っていただきました。
社会科担当の工藤先生の公開授業があまりにも強く印象に残り、「この学校で勉強したい!」と思うようになりました。工藤先生は“人間国宝級”とも言われる開智未来の名物先生です。教室の隅々に響きわたる声、表情や動作で伝えられる言葉が頭に残ってしまう。そのおかげで、開智未来の生徒の多くが、世界史を得意科目としています。
工藤先生の授業を受けるまで、世界史は年号や出来事を暗記するだけの教科であり、私にとって特別な教科ではありませんでしたが、授業を通して世界史の面白さや魅力に強く惹かれるようになり、大学では世界史を専門に学びました。
世界史を深く学んでいくと、日本史や地理はもとより、教科・科目の枠を越えた幅広い知識も必要です。地形や気候、周辺の国々で起きていた出来事などが、国の政策や外交のあり方、貿易や産業に関わってきます。視野を広く持って、あらゆる角度からさまざまな事象を観察していくと、ある出来事を本当に理解することができ、世界史が断然面白く感じられるようになるのです。そのことを工藤先生はよく“ネタ集め”と言っています。
大学で学んでみて、工藤先生の授業が幅広く膨大な知識のうえに成り立っていることに気づかされました。改めて先生への尊敬と感謝の気持ちを抱くとともに、自分も工藤先生のような社会科の教員になりたいという思いが高まっていきました。
高校生の時に、「世界史を学ぶと世の中がわかるようになる」と、世界史を学ぶことの意義や目的を実感しました。それが社会科の教員を志した大きな理由であり、世界史を通して生徒たちに学んでほしいことです。社会経験のない高校生にとって、世の中はわからないことだらけです。たとえば2001年9月11日に起きた「アメリカ同時多発テロ」は、その後の世界を大きく変えた非常に重要な出来事ですが、その出来事を字で暗記するだけでは世界の出来事は他人事でしかありません。当事者しか知り得ないような体験談や、生徒たちを取り巻く今の社会に具体的にどう関わっているのかというところまで学んでいくと、世の中への理解や関心を深めていくことができ、自ずと知識がついていきます。
探究活動は生徒の知性を伸ばすだけでなく、世界に貢献できる人間性を育てることを目的としています。そのために、単に多くの知識を身につけるだけでなく、「Inquiry (探究)」「Internationalization (世界水準)」「ICT ( つなげる知能)」 の3つの知能の向上を掲げています。
世界史でも学びの喜びに触れ、知識が自ずと頭に入ってくるような授業を続けていく一方で、今後はよりいっそう知識を活用して、自分で考える学びに重きを置いていきたいと考えています。
たとえば第1次世界大戦後の世界をテーマに、グループごとに各国の担当を決め、フランス・イギリス・アメリカ・イタリア・日本という国々の立場になって、どのような講和条約を結んだらいいのかを考え、次に国同士の立場で話し合います。今までの世界史の流れやその国の状況を踏まえ、当事者として世界史の流れを体感しながら各国の課題解決に向けて話し合いを重ねていくのです。このような取り組みを通して、資料や文献を読み解く力や、論理的に自らの意見を表現する力などが身につきます。
まさに当事者としてグローバルな社会を生き、世界を作っていくのは生徒たちです。これからの未来に必要な力を育てるために、常に進化していける最先端の学校であり続けたいと思います。
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