中学・高校・大学が1つのキャンパス内にある環境を活かし、講義や講習、部活動などを通じてさまざまな高大接続プログラムを展開している和洋国府台女子高等学校。そんな同校が2026年、大きく変わります。副校長の河口竜行先生にお話を伺いました。
中学・高校・大学が1つのキャンパス内にある環境を活かし、講義や講習、部活動などを通じてさまざまな高大接続プログラムを展開している和洋国府台女子高等学校。そんな同校が2026年、大きく変わります。副校長の河口竜行先生にお話を伺いました。
2024年度より高等学校で『総合的な探究の時間』が導入されましたが、本校の探究学習はそれ以前から積み重ねてきました。探究型学習「WIQ (WAYO Inqiry/探究)」という名称で、探究の基本的スキルを学び、問題解決型のグループワークに加え個人研究に取り組むというものです。
探究型の学びとは、授業のなかで実践するものとは限りません。クラブ活動のなかにも探究はありますし、学年全体で取り組む講座や、企業と協働するプログラムへの参加もあるでしょう。そこで考えたのは、土曜日の授業をなくして自由参加型の体験学習を行うことで、従来の探究学習をより拡充できるのではないかということです。
土曜日は登校しなくてもいいので、幼い頃から続けてきたお稽古事を極めるための時間に使うこともできますし、地域のボランティア活動に参加することもできるでしょう。どんな形にせよ選択するのは生徒自身、しかも自由に選択できるのが土曜日の『ツナグヒ』です。
もちろん、探究型学習を進めるためには基本的なスキルが必要ですから、テーマの見つけ方や調査の仕方、他者と協働する方法などは授業のなかで学んでいきます。
そもそも本校はWIQを実践してきましたので、探究の基礎的な土壌が整っています。昨年度より『ホウカゴシンロ』と題し、放課後に参加できる和洋女子大学のプロジェクトや外部のプログラムを紹介していますが、そうしたものへの参加も放課後限定ではなくなるでしょう。
次に、1コマの授業時間を50分から45分に変更します。基礎学力を養うために平日の4日間は7時限授業を確保しますが、水曜日のみ14時40分に授業を終了させ、放課後はクラブ活動ではなく自分の好きなことに充てる時間とします。本校には水泳部や卓球部、ダンス部など全国レベルで活躍するクラブがあるので、“水曜日はクラブ活動禁止”というわけにはいきませんが、ゆとりのある放課後を予習・復習に充てたり、探究学習へ取り組む時間に充てたりしてもいいのです。
土曜日が『ツナグヒ』になり探究学習が活発化すれば、普段の授業にも探究型の学びを浸透させることができると思います。また、探究・研究は授業のなかだけで実践するものではないので、ゆくゆくは休み時間にも友達と活発な議論をするなど、学校生活の全てを使って探究に取り組む意識を育てていきたいと考えています。
本校には「和洋コース」「特進コース」「進学コース」があります。なかでも和洋女子大学への進学を前提とする「和洋コース」では、高校2年から和洋女子大学の科目を履修でき、大学入学後に履修単位として認定されます。これにより大学での学びに時間的余裕が生まれ、その時間を活用して探究活動を続けることが可能です。大学の単位数に余裕ができるため留学や学校外の活動など、自分の好きなことに時間を使えるのが「和洋コース」の魅力と言えます。
大学生の多くが「高校時代にもっと勉強しておけばよかった」と言いますが、「和洋コース」の生徒たちは大学の授業を受けながらそのことに気がつき、授業を受けるモチベーションを高めています。例えば、プレゼンテーションの方法や調査・探究の仕方も大学の先生に直接指導を受けられるので、高校生のうちからアカデミックな探究活動が可能です。和洋女子大学の先生と日常的につながりがもてる点もメリットと言えるでしょう。
さらに、2026年度より和洋女子大学に「AIライフデザイン学部」が新設されます。AIを開発するのではなく、AIリテラシーを学ぶ学部です。未来はAIに仕事を奪われると心配する声も上がっていますが、AIを使いこなす人に仕事を取られる可能性のほうが高いと私は考えています。だからこそ、高校時代から安心できる学習環境のなかで、AIを使いこなすスキルを磨いてほしいと思っています。
改革でめざすのは、一人ひとりが将来への道を選択する“きっかけ”に出会うことです。
大人が「なぜ今の仕事をしているのか?」と問われた時、「子どもの頃からやりたいことがあって、この学部・学科に進んだ」とか、「将来、こんなことをやりたいと思っていたので」というように色々な回答をすると思いますが、どんな選択にも“きっかけ”があります。本校の『ツナグヒ』が、将来を決める“きっかけ”の1つになるといいですね。
河口竜行 副校長2026年始動の『ツナグヒ』について、「私たちの在学中に実施してほしかった」という声が高3生から上がっていると言います。そこで河口副校長は「君たちが大学生になったら、後輩のために探究講座を開催する側になってほしい」と呼びかけているそうです。
「『和洋コース』の高3生は約60名、そのほとんどが和洋女子大学に進学しますから、高校時代の探究・研究が継続できます。『和洋コース』に限らず、生徒たちの取り組みにはさまざまな探究テーマがあり、そこに共通するのは『困っている人を助けたい』ということ。
人間は自分のためよりも人のためになることのほうが、いいアイデアは浮かぶものです。人の役に立てたら自信にもなりますし、達成感も大きいでしょう。そのようなきっかけをたくさんつかんでほしいですね」(河口副校長)
大学入試において、ここ数年は「学校推薦型」や「総合型選抜」と「一般選抜」の割合は「8対2」。入試形態の選び方は「全て本人の希望次第」と広報部長の中澤美紀先生は話します。
「例えば指定校推薦のための評定平均が取れていても、自身が希望する学部・学科に一般選抜で挑む生徒がいます。『○○大学の□□先生のゼミで学びたい』というように、“行ける大学”ではなく“自分のやりたいことができる大学”を選んでいるのだと思います。これは探究学習を積み重ねてきた成果だと感じています。
常々思うのですが、大学のランク付けは、その大学へ行く人間までをもランク付けしているような気がします。受験科目の成績だけでは測れない能力を生徒はたくさんもっていますし、女子校という環境も気概のある人間を育てていると思うのです。自分のやりたいことを素直に開示し、自己表現できる環境が別学の良さでもありますから、そうした環境に身をおいて経験を積むことで、臆することなく社会へ出ていけるのだと思います。
河口副校長が『学校は社会の産業に直接関わることだけを教えているのではなく、これからの社会を作っていく人間を育てているのだ』とよく話しています。確かに私たち教員もまた、生徒たちの未来を作っているということを日々実感しています」
教育改革は現在進行中。企業とのコラボレーションや他大学との連携も企画されています。
和洋国府台女子にはワクワクが満載なのです。
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