明治30（1897）年、女性の自立を教育目標として東京の麹町区飯田町（現・千代田区富士見）に創設された和洋学園。令和の今、千葉県市川市の国府台に中学・高校・大学で同一のキャンパスを構え、多様な社会へしなやかにたくましく生き抜く女性を育成しています。そうした多様な社会を見据え、3つのコースを設置。ここ数年で内容も取り組みも充実した各コースの特色について、卒業生であり生徒指導部長の中澤美紀先生に伺いました。

　高3生の進路が決まり始めた2月、将来につながる新たな学びをスタートさせる生徒がいます。「和洋コース」「進学コース」「特進コース」と、それぞれ特色のある3コースから巣立つ生徒たちの学校生活は充実していました。目標とする将来に一歩踏み出すために、各コースに在席する3名が高校3年間で挑戦したことを語ってくれました。

「女子校って楽しそう」と思って選んだ和洋国府台女子には高大接続のカリキュラムがあり、和洋女子大学には私がめざす管理栄養士への道が開けていました。「和洋コース」は高2から和洋女子大学の授業を受けられます。高2で受ける授業は、和洋国府台生だけでアカデミックスキルなどの探究・研究をするための方法を学びます。高3では大学のシラバスをよく読んで、自分の志望を考えながら履修登録を行います。将来に関わることなので、間違えてはいけないと慎重になりましたが、詳細なガイダンスを受け、仲間と相談しながら決定しました。

　また、各講義には定員があり、人気の講義は抽選となります。もしも抽選にもれたら、ほかの講義を選ばなければならないと、頭をフル回転させて考えました。考えながら、「大学生は皆、こういうことで悩むのだろう。高校生のうちから貴重な経験をさせてもらっているのだな」と思いました。

　看護など資格試験を受けられる学科は高2で資格審査があり、それ以外の学科ならば、高2で必ずしも学部を決定する必要はありません。高1で健康栄養学科を希望していた友達も、高大接続で授業を受けるうちに学びたいことが変化して、和洋女子大学の国際学部に進学しました。

　履修登録を済ませると、高3では大学生と一緒に学ぶ講義が始まりました。グループワークも大学生と一緒なのですが、先輩たちは高校生も発言できるように気を配ってくださいました。部活動は「栄養部」に所属していたのですが、同じ「栄養部」の先輩もいて安心でした。同じ講義を取った「和洋コース」の友達と協力し合ってレポートを作成したこともあります。

　毎日通うキャンパスには大学もあるので、講義を受けるのも便利です。学食のメニューも学校内で作っていて、食堂は3つあります。最上階の展望レストランからは、晴れていると富士山、スカイツリー、江戸川と筑波山が見渡せます。

　高校時代に最高20単位くらい取得できるので、大学生になってから余裕ができて、留学したり資格試験に挑戦したり、ボランティア活動に取り組む先輩もいるそうです。私は大学受験のために時間を使う必要がなかったので、「栄養部」の活動も高3の学園祭までフルで活動できました。その後は自分の好きな料理を作ったり、“食”について考えたりするなど充実した時間が過ごせました。

　今、興味があるのは食品の成分表示です。消費者にわかりやすい成分表示を考えたら、食品企業のマーケティングにもつながるのではとワクワクしています。実際に食品会社へ就職した先輩が、自ら企画して商品開発した食品をコンビニで見かけてうれしくなりました。健康栄養学科の区分は文系ですが、大学生になったら実験の機会も多いので楽しみです。高校3年間、一緒に学んだ仲間と大学でもまた協働して学べるのが何よりも心強いです。

大学の校舎が一つのキャンパス内にあるのは、高大接続のために大変便利な学習環境です。
高校生も大学の食堂や図書館を利用できます。

　小学生の頃に観た映画『ウエストサイドストーリー』は、“女優になりたい”という夢を芽生えさせてくれました。中高で演劇部に入部し、演劇部のコーチにも大学受験に際して大変お世話になりました。

　演劇部は年2回の大会に出場し、私も千葉県の大会で「最優秀賞」と「優秀賞」を受賞することができました。何代も前の演劇部の先輩にはプロとして活躍されている女優さんもいらっしゃいます。演劇部員の多くは「進学コース」で、音楽大学の歌声学科をめざした友達もいます。彼女は志望大学が主催する歌のレッスンに通いながら夢を見つめていました。エンターテインメントだけでなく、みんながめざす進路は多様で、それぞれが志望実現に必要なことを探しながら勉強していました。

　日本大学芸術学部は、劇団員だった叔母の勧めです。「総合型選抜」では、第一次予選で高校時代の成績とエントリーシートを提出しました。エントリーシートの書き方はダンス部顧問で担任の先生の協力を仰ぎ、夏休みからずっと添削していただきました。面接練習は高1の時は友達同士で、高2は先生と練習を行い、高3では「総合型選抜」向けの対策授業のなかに練習する機会がありました。第一予選を通過すると、二次試験のための台本が送られてきました。私に課された役柄は30代と40代の男性で、それを交互に演じるという難しいものでした。

　合格発表は11月。クラスには「一般選抜」や「公募制推薦」などほかの入試形態で臨んだ発表待ちの人などさまざまだったので、それぞれが友達を気遣いながら過ごしていました。「進学コース」には多様な進路をめざす人がいるので、友達とお互いの夢を語り合い、高め合うことができました。和洋国府台女子は自分の気持ちに正直に向き合いながら、自分のやりたいことを形にできる学校です。

演劇部で女優になる夢を育んだ3年間。
よく練習した舞台にて。文化祭や大会で取り組んだ台本を自ら書いたこともあります。

　一般選抜に挑戦する人が多い「特進コース」のなかで、「総合型選抜」に挑戦した私は少数派です。最後まで一般選抜も考えていたのですが、探究学習で取り組んだことで高1・高2の2年連続で全国大会に出場できたので、総合型選抜をメインに受験に臨みました。

　探究活動は社会問題をゼロから見つけるところから始まります。私はグループワークのリーダーを務め、車椅子ユーザーがより生活しやすい社会の実現をするにはどうしたらいいかを考えました。現在、障がいをもつ方がヘルプマークをつけていますが、どのような手助けが必要なのか、その時に手助けが必要なのかどうかはわかりにくいものです。そこで健常者側が「今、私は手助けができる状況にあります」ということを表明する“チューリップマーク”を考えました。

　探究活動で全国大会に出場すると、さまざまな人と出会うことができました。チューリップマーク普及のためにアドバイスをくださったのは市議会委員の方で、スポンサーになってくださる企業の方も紹介していただきました。大学生になったら本格的に普及活動ができそうな人脈作りができました。

「特進コース」には勉強合宿もあるのですが、私は参加することができず、クラスメートからは「1日10時間、自学自習に取り組むので、自分と向き合うことができた」という話を聞きました。合宿に参加できなかった分は夏休みに学習計画を立て、達成に向けて頑張りました。クラス全体に高い志を実現しようという雰囲気があるので、お互いを高め合える環境でした。

　とはいえ勉強ばかりしているクラスではなく、受験以外のこともいろいろと語り合うことができました。部活動に打ち込む人や、自分なりの課外活動に取り組む友達もいました。学校行事ではどのクラスよりも盛り上がって、スポーツ大会の綱引きは1位を獲得。「特進コース」は1クラスなので、ほかのコースよりも絆が強いのだと思います。

　進路が決まった今、秘書検定と英語の勉強をしています。大学生になって自分の研究テーマを深めるためには、企業の方など社会人と接する機会も多くなるはず。そのためのマナーや礼儀を身につける秘書検定です。経営学部では、将来の夢である商品企画の仕事に結びつくことを学びたいと思います。将来を自由に思い描き、自由に学んだ学校生活。勉強だけでなく、やりたいことも、とことん追求できた3年間でした。

車椅子ユーザーが過ごしやすい社会実現をテーマとする探究学習では、
探究学習の祭典『クエストカップ』で優秀賞を受賞。
一般選抜も考えていたので、図書館の自習スペースでよく自学自習をしました。