高校で必修となっている『情報Ⅰ』の授業とは、どのようなものなのでしょうか。もちろん、その内容は高校によって独自色はありますが、二松学舎大学附属柏の授業は、「教科書の知識×テクニカルなスキル習得」の二段構え。動画制作あり、プログラミングありの実践的な学び方で、大学受験からその先を見据えています。
高校で必修となっている『情報Ⅰ』の授業とは、どのようなものなのでしょうか。もちろん、その内容は高校によって独自色はありますが、二松学舎大学附属柏の授業は、「教科書の知識×テクニカルなスキル習得」の二段構え。動画制作あり、プログラミングありの実践的な学び方で、大学受験からその先を見据えています。
情報科の黒澤光先生。県内屈指のICT教育推進校でもある二松学舎大学附属柏高等学校には、メディアリテラシーや自問自答力を身につけた、社会に貢献できる人材を育む注目の『情報Ⅰ』の授業があります。
「そもそも中学生の皆さんが思い描く『情報』の授業とは、果たしてどのようなものでしょうか? 本校の『情報Ⅰ』の授業は、ICT教育を重視する教育システムのなかで非常に重要な位置づけにあり、生徒一人ひとりに貸与されているiPadを日常使いしながら、実践的に学んでもらいたい必須の授業でもあります」
そう語るのは、高1『情報Ⅰ』の授業を担当する黒澤光先生(情報科)です。
黒澤先生が担当する『情報Ⅰ』の授業における特徴を一言でいうなら、それは「ネット環境から自分を守るためのレッスン」です。
「これから高校受験へと向かう中学生の皆さんにとっても、既にスマートフォン(スマホ)やパソコン(PC)は情報収集をするうえで、なくてはならない身近な道具といっても過言ではないでしょう。しかし、身近にあるネット環境だからこそ、そこには危険が潜んでいることを、まずは知ってほしいと思っています」
黒澤先生のこうした“注意喚起”を具体的に表したワードが、「メディアリテラシー」です。メディアは「情報Ⅰ」、リテラシーは「ある分野に関する知識や能力を活用する力」を意味します。自分が必要な時に、必要な情報をネット上から探し出すとともに、見つけた情報を適切に評価・活用できる能力のことです。
「例えばメディアリテラシーが低いと、個人情報や機密情報などが外部に漏洩し、悪意のある第三者から、住所や通っている学校などが特定されるリスクがあります。そこで今回の授業では、事前に『個人情報の取り扱い』についての課題を与えたうえで、動画作成を前提にした話し合いを行ってもらっています」
この日の授業で与えられたテーマは、動画作成にあたり、最も重要なことはテーマ設定にあると黒澤先生は強調します。
「今日の授業では、一班3~4名になって動画のテーマを決めてもらいます。ポイントとなるのは、生徒たちが作成した動画を視聴したほかの生徒たちに、SNSの正しい使い方や、写真や動画撮影時における注意点などをわかりやすく伝えるところにあります。見せ方はゲーム風でも、ドラマ風でもまったく自由です。各班の発想力に期待しています」
黒澤先生の解説を基に生徒たちの様子を見ていると、非常に興味深いことに気づきました。どの班も活発な意見交換ができていることでした。ちなみに、班の構成はくじ引きで決めたそうで、単なる“仲良し”が集まってできた班ではない点にも注目です。
「あらかじめくじで割り振られた班ではありますが、最近の生徒の興味深い点は、相手の意見をきちんと聞いたうえで、自分の意見もしっかり伝えることができるところにあります。私はそこを高く評価しています。どんな時でも相手を選ばず、しっかりとコミュニケーションが取れることが第一で、そのような安心感のある環境が授業に整っていてこそ、高1の3月に予定している動画発表に向けての良い流れができていくものと考えています」
生徒たちの主体的な学び方に、あえて口出しをしないのが黒澤先生の教え方。「限られた時間のなかでなるべく実践的な学びが得られるよう、用意できる資料は全て授業前に整えて生徒たちに配布しています」
YouTubeから動画制作のヒントを得ようと試みる生徒たち。お互いのアイデア、発想を披瀝し合って、高1最後(3月)の動画発表に向けた準備を整えていきます。
ところで、「動画制作」といっても難しくはないのでしょうか。黒澤先生に本当のところを聞きました。
「動画制作そのものに関して、私は具体的に教えていません。ですがYouTubeを観ながら操作方法をマスターしている生徒も多く存在します。また、撮影やシナリオ、演出に力を発揮する生徒もいるのがクラスの面白いところです。
最終的に“一人1シーン”は、撮影なり編集なりをやってもらうように指導しますが、結果として一人も取り残されることなく、誰もが達成感を得られるように努めています。大切なのは班それぞれのチームワークにあると思っており、生徒一人ひとりの主体的な参加を呼びかけています」
黒澤先生に今後の予定を伺いました。
「1学期から動画制作と並行して行っていることの一つに、プログラミングがあります。例えば、大学受験の合否に影響する評定平均を計算するプログラムを、授業のなかで生徒それぞれが自ら作成する時間を用意しています。2学期からは、初心者でも比較的容易に学べるプログラミング言語『Python』(パイソン)を用いて、例えば、文理選択の判定ができるプログラム作成にも挑戦してもらいたいと思っています。要は、制作者側にもなることができれば、それを利用するユーザーにもなれるという、ちょっと欲張りな『情報Ⅰ』の授業です」
教科書を基本とする机上の学びだけでなく、大学受験からその先の進路選択にも役立つ、実践的な『情報Ⅰ』の授業がここにありました。
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