「Think & Challenge!」をモットーに、「明日の世界をより良くするために考えて行動のできる人」を育てる横浜翠陵高等学校。2024年度より、高1と高2の「総合的な探究の時間」を活用し、社会・企業とつながる体験ができる探究プログラム「翠陵クエスト」を実施しています。今回は、高1と高2のそれぞれの集大成となる発表会を取材。「翠陵クエスト」の目的やプログラムの流れ、今後の展望について、秋山健一先生と塚本賢志先生にお話を伺いました。
「Think & Challenge!」をモットーに、「明日の世界をより良くするために考えて行動のできる人」を育てる横浜翠陵高等学校。2024年度より、高1と高2の「総合的な探究の時間」を活用し、社会・企業とつながる体験ができる探究プログラム「翠陵クエスト」を実施しています。今回は、高1と高2のそれぞれの集大成となる発表会を取材。「翠陵クエスト」の目的やプログラムの流れ、今後の展望について、秋山健一先生と塚本賢志先生にお話を伺いました。
高1では探究学習の“スモールスタート”として、1年間かけて新商品の企画に挑戦します。題材となるのは、身近な“高校生あるある”です。例えば、「すぐにお腹が減ってしまう」など、自分たちの日頃の悩みを解消する商品企画を考えた際、クラスごとに5名前後のグループに分かれ、話し合いを重ねて夢の商品を考えます。ここでの商品企画は、多少実現が難しそうな内容でもOK。まずは自由な発想で探究の面白さに触れていきます。
取材日当日は、1年間かけて考えた商品企画の発表会が実施されました。生徒たちはグループごとに舞台に上がり、自分たちで作成したスライドを見ながら、商品のコンセプトや“悩みの解決にどう役立つか”を発表していきます。商品企画だけでなく値段も設定、競合他社商品などを調べ、適正価格を検討しました。
あるチームは、「常に集中して授業に参加できる」ようにするため、人間の動きを感知し、もし眠そうだなと判断されたら自動的にレモン汁を噴射する“へび型”ロボット『Sniper』を発表。企画の経緯や商品コンセプト、値段などをプレゼンテーションしました。生徒たちは、良いと思った商品企画に投票。後日、最も好評だった商品企画が発表されます。
商品企画のアイデア源となるのは、自分たちが日頃困っていることや感じていること。高2の「翠陵クエスト」で取り組むのは、企業からのミッションに挑む「コーポレートアクセス」です。2024年度の「コーポレートアクセス」に協賛した企業は、イオンリテール、オカムラ、キモノハーツ、鴻池組、富士通、LINEヤフー、ロート製薬の7社。生徒自身がインターンとして仕事したい企業をセレクトし、同じ企業を選んだ生徒をクラスの垣根を越えてチーム分けしています。
「生徒同士の交流の良い機会にもなるため、あえて友達同士ではない、あまり知り合う機会のない生徒同士でチームを編成しています。チームを組んでから初めて話をする生徒も多いですが、自ずと役割分担ができているようです。翠陵生には、他者の意見を傾聴したり、受け入れたりする力がある優しい生徒が多いため、目立ったトラブルなどは起きていません」(秋山先生)
4~5月には、グループワークのウォーミングアップとして、ブレインストーミングやさまざまな手法を駆使した“アイデア出し”の練習を行います。円滑に話を進めるための手法を学んだ後、企業からのミッションがスタートし、6月には企業イメージを探るための「街頭調査」を実施しました。
「来校した保護者や、駅やスーパーなど近隣の方々への街頭調査を行いました。躊躇してしまう生徒が多いのではという予想に反し、学校の外に出て活動できるということで、生徒たちもワクワクしながら取り組んでいました」(塚本先生)
9月に最終プレゼンまでのミッションを受け取り、11月には中間発表を実施。企業の方も参加し、アドバイスやフィードバックをもらいました。そこでの反応も踏まえて内容を修正し、最終プレゼンまでの準備をしていきました。
取材当日は1年間の集大成となる企業へのプレゼン発表会です。生徒たちは5教室に分かれ、各教室に1名の企業の方が加わります(一部はオンライン参加)。1チームのプレゼンの持ち時間は7分間。生徒たちがプレゼンをした後は、3分間、企業の方からのフィードバックがありました。
生徒たちは各チームのプレゼンを、「評価シート」に基づき評価。ロート製薬のミッションに取り組んだ『チーム甘党』は、「ロート製薬×ユニバーサルデザイン」をテーマにプレゼンを行いました。ロート製薬でユニバーサルデザインを取り入れた商品を例として挙げながら、なぜユニバーサルデザインが必要なのかを解説。チームからの新たな提案として、「QRコードの活用」「点字や音声ガイドの活用」「商品成分の具体化」という3つの案をプレゼンしました。
プレゼンでは、タブレット端末やノートパソコン、スマートフォンなど、企業の方からのフィードバックでは、「スライドの作り方や論理的なプレゼンの組み立て方がとても良かったです」など、良い点を評価するコメントのほか、「課題の分析が非常によくできていたので、そのうえで『私たちはこう考えます』など、自分たちならではのアイデアが発表できるとより良くなったと思います」といった改善点を指摘するコメントも。改善点も含めた建設的なコメントで、生徒たちの「探究力」の向上につなげていました。
1教室に1名の企業の方が参加(写真中央)。
秋山健一先生(外国語科)「翠陵クエスト」導入の目的や活動を通した生徒の成長、今後の展望について、高2の学年主任を務める秋山健一先生(外国語科)と担任の塚本賢志先生(理科)はこう話します。
「『翠陵クエスト』は、生徒が学校の外の世界に目を向け、社会を経験し、世の中の仕組みを理解するきっかけにつなげてほしいという目的で2024年度よりスタートしました。学校というのは、ある種“閉鎖的な世界”でもありますから、外の世界とつながる機会は貴重です。生徒にとっても良い刺激になるはずです。
教科の学びには必ず着地点や正解がありますが、探究には正解がありません。自分たちの考え方次第で、多種多様な答えを導き出すことが可能です。生徒の思考力や独創性を鍛える絶好の機会になっています。こうした探究の学びは、今後、未来の予測が難しい“答えのない社会”に踏み出していく生徒たちにとって不可欠な経験になっていると感じます」(秋山先生)
塚本賢志先生(理科)「本校では、『Think & Challenge!』をモットーに、『自ら考え、自ら判断し、自ら挑戦する人』の育成を目標としています。『翠陵クエスト』は、まさに『Think & Challenge!』の絶好の機会です。また、人前に立って話す機会が格段に増えたため、生徒たちのプレゼンテーション能力に成長が見られます。グループ内でのアイデア出しで積極的に発言したり、意見を出し惜しみせずにどんどん発信したりする力が伸びていますね。こうした力は、今後、社会に出てからも役立つはずです。
『翠陵クエスト』は、次年度以降も同様に続けていく予定です。自分のために、社会のために、何かに挑戦したいと思っている受験生の皆さん、共にチャレンジができる日を待っています」(塚本先生)
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