最先端のSTEAM教育を実践する駒込高等学校の「理系先進コース」では、『STEAM特別講義』が行われています。これは埼玉大学STEM教育研究センターとの共同授業で、同センター代表の野村泰朗准教授が、「理系先進コース」主任の中島遼先生(理科)とともに指導にあたっています。この共同授業に参加して研究成果をプレゼンテーションする発表会を取材。生徒を代表して高3生2名と中島先生にお話を伺いました。
最先端のSTEAM教育を実践する駒込高等学校の「理系先進コース」では、『STEAM特別講義』が行われています。これは埼玉大学STEM教育研究センターとの共同授業で、同センター代表の野村泰朗准教授が、「理系先進コース」主任の中島遼先生(理科)とともに指導にあたっています。この共同授業に参加して研究成果をプレゼンテーションする発表会を取材。生徒を代表して高3生2名と中島先生にお話を伺いました。
「理系先進コース」に進学した理由は、中学生の時、『LEGO』の大会に出場した経験があり、このコースで学べば『LEGO』を使ったモノづくりが楽しめると考えたからです。ドローンに興味をもったのは小学生の頃で、その構造や上空からドローンが撮影した美しい映像を見て感動しました。そして「理系先進コース」の課題でドローンを製作し、重量や基盤の配置に細心の注意が必要なことや、革新的な応用が利く技術だと知り、ますます魅力を感じるようになりました。
ドローンを“災害に役立てよう”と考えたのは、高2の修学旅行で東日本大震災の被災地を訪れ、悲惨な状況を目の当たりにしたこと、被災者のお話を聞いたことがきっかけです。食料などの物資があっても、津波によって道路交通網が遮断され、どの路線が使えて、どの地域に物資が足りないかが把握できずに届けられなかったそうです。私は複数のドローンを使って上空から情報を収集することで、解決できるのではないかと考えました。そのためのドローンの開発で苦労したことのひとつは、“逆起電力”という電圧によってモーターが作動しなくなることです。そこで、機械系を専門とする大学の先生方にメールで質問させていただくなどして解決先を導き出しました。
2024年の秋には、この研究の成果を電気通信大学Ⅱ類の総合型選抜でプレゼンテーションを行い、合格を手にすることができました。災害時にドローンを派遣するシステムの開発を、電気通信大学で続けていきたいと考えています。
もうひとつの探究活動は、“ドローンキャッチャー”の開発です。現在、さまざまな不安要素がドローンの普及を妨げています。例えば、過去に「ドローン操縦体験会」に参加した際、操縦を誤ってドローンを壁に激突させて壊してしまうケースがあることを知りました。そこで、ドローンの移動範囲をヒモで制限して衝突のリスクを回避したり、落下したドローンを緩衝材でキャッチしたりする仕組みを考案しました。
「小学校時代に得た感動を多くの子どもたちにも味わってもらいたい」「ドローンの魅力と技術を多くの人たちに知ってもらいたい」。そんな私の願いも、ドローンキャッチャー開発の背景にあります。こうしたSTEAM活動を通して、出場したコンテストで知り合った他校の生徒たちとメールで意見交換をしたり、アドバイスをもらったりして切磋琢磨する過程で、私は人間関係を構築していくことの大切さを知りました。一人ではここまでできなかったと思います。
「高校生直木賞」(主催:高校生直木賞実行委員会/後援:文藝春秋)のコンテストにも参加しました。全国の高校生たちが議論を繰り広げ、直木賞候補作の中から今年の一作を選ぶコンテストです。理系にとどまらず、多角的な観点をもっていることが、研究や開発には必要です。そこで文学的な素養も身につけたいと思い参加しました。ここで得た友人たちからはディスカッションやプレゼンテーションについて深く学ぶことができ、成長できたと感じています。
自分が興味・関心のある分野にフォーカスした研究に打ち込みたくて、「理系先進コース」を受験しました。このコースなら、放課後や夏休みに化学室が開放され、自分の研究に好きなだけ没頭できます。
私は幼い頃からプログラミング教室に通っていて、高1になってVRを使ったゲーム機を購入して以来、VRやARに強い関心を抱くようになりました。VRは「仮想現実」のことで、ARは「拡張現実」のことです。ARはスマートフォンでアプリを起動してカメラをかざすと、ゲームのキャラクターなどがそこに実在しているかのように見える世界を実現します。私は以前から、「多くの人たちがARによって、便利で楽しい生活を送れる未来が到来すればいいな」と考えていました。
その第一歩として、キーボードを使わずに指先の動きで、操作に必要な文字入力ができるアプリをプログラミングの技術を活用して作りたいと思ったのです。これが今回発表した探究活動でした。本来ならゴーグルに文字が浮かび上がるようにしたかったのですが、現段階では難しいのでPCのディスプレイ上に表示されるようにしています。苦労したのは、探究するために必要な情報を海外の文献から得ることでした。翻訳アプリを使っても不自然な表現が多く、英語を原文で正確に読めることの重要性を痛感しました。
このVRやARの探究活動を、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンスコースの総合型選抜でプレゼンテーションして合格しました。この学科にはAIに味を推定させ、産地の違いも再現できる“調味装置”を開発した教授が在籍されているなど、自分の興味・関心をどこまでも追究できる環境があります。ほかの学生から刺激を受けながら研究に励み、人々の健康に貢献できるようなアプリやシステムの開発をしたいと考えています。
「理系先進コース」で学んだことは、諦めないことの大切さです。高2の夏休みは、探究活動やコンテストへの出場のために毎日学校に来て、実験や実証を繰り返していました。この経験を通して、探究活動を続けるための忍耐力や集中力も身につきました。今、AIが急速に進化して1年後に社会がどう変化しているのか予測がつきません。このコースで身につけた“諦めないない心”で、こうした最先端の技術が人々の生活を豊かにしたり、平和に貢献したりできる研究者や技術者になりたいと思っています。
「理系先進コース」の3本柱は「授業・部活動・探究活動」で、探究活動が授業・部活動と同列になっています。探究活動のなかでも徹底して自分の好きな研究に打ち込めるのが、この「STEAM特別講義」です。ゼミ形式で生徒が思い思いの研究に没頭しています。
こうした探究活動において、私が最も大切な要素だと考えているのが行動力です。「できるか。できないか」を思い悩むよりも、先に行動へ移せる生徒が目標に向けて知識を吸収して高度なスキルを身につけていきます。そして探究活動の成果を活かし、総合型選抜で自分の研究を続けたり、発展させたりできる大学に進学しています。
私が生徒に望むのは、“自由に、勝手に”という姿勢です。このコースの生徒は教員が何も言わなくても、自主的にコンテストへ出場したり、探究活動を通じて他校の生徒と交流を図ったりしています。卒業生のなかには自由に勝手に好きなことをとことん追究して起業する生徒もいます。“STEAM”という言葉が示す通り、理系にこだわらずお菓子作りで起業した卒業生もいるほどです。好きなことで自分の未来を切り拓きたい人、行動力にあふれた人の入学をお待ちしています。
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