2021年8月、城西大学附属城西高等学校軟式野球部は『第66回全国高校軟式野球選手権東京大会』で優勝し、『全国高等学校軟式野球選手権大会』(以下、全国大会)、さらに同年9月『東京都秋季高等学校軟式野球大会』では初優勝を飾り、二連覇を達成しました。そして2024年8月、同部は3年ぶりに『第69回全国高校軟式野球選手権東京大会』で優勝。3度目の全国大会出場を果たしたのです。これまでの軌跡を、主将でキャッチャーを務める石川雅規さん(高2)と、監督の佐藤聖先生(地歴公民科)が語ります。
2021年8月、城西大学附属城西高等学校軟式野球部は『第66回全国高校軟式野球選手権東京大会』で優勝し、『全国高等学校軟式野球選手権大会』(以下、全国大会)、さらに同年9月『東京都秋季高等学校軟式野球大会』では初優勝を飾り、二連覇を達成しました。そして2024年8月、同部は3年ぶりに『第69回全国高校軟式野球選手権東京大会』で優勝。3度目の全国大会出場を果たしたのです。これまでの軌跡を、主将でキャッチャーを務める石川雅規さん(高2)と、監督の佐藤聖先生(地歴公民科)が語ります。
野球に興味をもつようになったのは、小学生の時にWBCの試合を見て、キャッチャーの小林誠司選手が活躍する姿に憧れを抱いたのがきっかけです。でも、中学受験のための勉強をしていたので、友達や父とキャッチボールをする程度でした。
城西大学附属城西中学を志望校に選んだのは、高校に硬式野球部があったからです。まずは中学で軟式野球部に入部しました。高校の軟式野球部が夏の東京大会で優勝し、全国大会に出場を決めたのは、僕が中2の時です。一緒に練習していた先輩たちは、学習も野球も両立して頑張っていました。そんな先輩たちに憧れて、そのまま軟式野球を続けようと決めました。
現在、軟式野球部の部員は28人で、そのうち今夏の大会でベンチ入りしたのは20人でした。ベンチを外れた部員たちは献身的にチームを支えてくれていました。その姿を見て、「勝ち進まなければいけない」という責任感が湧いてきました。しかし、初戦から苦戦が続き、「このまま終わってしまうのではないか」という不安が脳裏をよぎりました。でも、「練習してきた」という自負がありました。準決勝まで進むと、「もしかしたら、3年ぶりに全国大会へ行けるかもしれない」という自信がわいてきたんです。
早稲田大学高等学院との決勝戦で僕がバッターボックスに立った時、三塁にいたランナーをアウトにしてしまう大きなミスをしました。落ち込んでいる僕を佐藤監督が励ましてくださり、次のバッターボックスに立った時は、スリーランホームランを放つことができたんです。結果は「5対3」で勝利し、全国大会出場を果たせました。
全国大会が行われたのは、兵庫県の「明石トーカロ球場」(明石公園第一野球場)と「ウインク球場」(姫路球場)です。開会式には全国の強豪校が顔をそろえ、地方大会では経験できない緊張感にあふれていました。この雰囲気のなか、普段通りの試合を展開することが僕の課題でしたが、試合が始まってからは、平常心を保ちながらプレーすることができました。
全国大会では惜しくも初戦で敗れてしまいましたが、多くのことを学び、大きな自信もつきました。これは部員全員に共通することです。また、部員たちの結束もさらに強まっています。これまでの経験を糧にして、来年も夏の大会で優勝し、全国大会という晴れの舞台で結果を残すことが目標です。
僕が軟式野球から学んだことは、チームワークの大切さです。また、挨拶や目上の方への言葉遣い、接し方などの礼儀作法が身につきました。
将来の目標は、建物など人々が集まる空間づくりに携わることです。尊敬する父が街づくりに関する仕事をしており、その姿を見て育ったため、同じような職業に就きたいと思うようになりました。
第一志望の大学はすでに決めていて、その大学で都市開発や街づくりなどを学びながら、野球を続けたいですね。硬式野球部への入部も視野に入れていますし、海外の街を見て見聞を広げたいので、好きな英語の勉強に力を入れ、留学もしたいと考えています。
石川くんを主将に選んだ理由は、チームを俯瞰して見ることができるからです。主将となることに、部員全員が賛成して決まりました。
夏の東京大会では、決勝戦序盤における彼の先制スリーランホームランが優勝に大きく貢献しています。投手力や守備力に定評のある早稲田大学高等学院も、まさかこのような形で先制されるとは思ってもみなかったと思います。勝敗はこの一打で決まったと言ってもいいほどです。
その前に石川くんがミスを悔やんでベンチに戻ってきた時は、これから守備につくのが危ぶまれるほど意気消沈していましたが、過去を嘆くより前を向こうと伝え、気持ちを奮い立たせてくれました。ただ、次の打席でのホームランは出来過ぎだと思います。
振り返れば、私が監督に就任した当時の軟式野球部は、部員が何人いるのかわからない状態で、練習に参加するのも自由でした。そこからスタートして2023年の夏、37年ぶりに夏の大会で優勝できたのは、私が野球から学んだ人と人とのつながりや思いやりの心を、指導のなかで大切にしてきた結果であると自負しています。
本校は東京都高等学校野球連盟 軟式部の理事校を務めています。そのため、部員たちはグラウンドの整備や場内アナウンスなど大会運営の手伝いをします。そうしたなかで他校の先生方や目上の方と接する機会が多くあり、部員たちは礼儀作法だけでなく、目配りや気配りを学ぶことができます。これがチームメートや相手チームを敬う心を育み、部員同士の絆も強まって、夏の大会に勝ち進むことができたのだと考えています。今夏の大会では、チームが大切にしてきたものを石川くんはじめ、部員たちが見事に体現してくれました。
監督として部員には、勝利を数多く手にしてほしいと考えています。いくら練習を積んでも、勝たなければ自分を肯定することができないからです。私は高校時代、硬式野球でベスト4までしか進むことができなかったので、夏の大会を勝ち進み、全国大会でプレーできた部員たちを誇らしく思います。指導者と部員という垣根をさらに越えて、心はひとつになっています。
現在、3度目の全国大会出場を果たした本校は、“軟式野球の強豪校”という評価をいただけるまでになりました。今後の目標は“全国大会優勝”です。しかし、野球が上手な部員だけを集めるつもりはありません。あまり経験がなくても野球が大好きで一生懸命な生徒にも入部してほしいと思います。「軟式野球部に入って、気がついたら本気になって優勝を目指していた。」という心理的な変化が大きく人を成長させます。野球を通して人間的にも大きく成長してもらいたいと願っています。
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