淑徳高等学校には高1夏から高2夏までの1年間、留学を経験できる「留学コース」が設置されています。同コースで過ごす3年間について、 留学コース担当で英語科の増渕陽祐先生にお話を伺います。
淑徳高等学校には高1夏から高2夏までの1年間、留学を経験できる「留学コース」が設置されています。同コースで過ごす3年間について、 留学コース担当で英語科の増渕陽祐先生にお話を伺います。
淑徳中学高等学校は、約130年の歴史を有する伝統校です。校祖の輪島聞声が掲げた「進みゆく世におくれるな、有為な人間になれよ」という理念のもと、近年は仏教の心を現代に活かす3つの柱にLIFE(生命) LOVE(愛) LIBERTY(自由)を掲げ、心の教育と合わせ進学指導にも注力し、生徒一人ひとりが希望する進路実現に努めています。
同校では高校から3つのコースに分かれて学びます。 東大や東工大、国公立大学医学部など、最難関大学をめざす「スーパー特進コース」、国公立大学・早慶上理・GMARCHなど多様な進路を可能にする「特進選抜コース」、そして1年間留学により国際人としての英語力や人間力を培ったうえで、国公立大学や早慶上智に加え、海外大学も視野に入れる「留学コース」です。
「留学コース」創設の経緯について、増渕先生は次のように話します。
「本校では1981年にアメリカのオレゴン州、1987年にイギリスのチェルトナムでサマーキャンプを開始しましたが、グローバル化が加速するなかで短期間の海外滞在だけではなく、より長期的な留学の必要性を感じ、第10代校長の里見達人先生(現・大乗淑徳学園常務理事)が1990年に『留学コース』を開設しました。同年にアメリカのセント・メアリー校と、イギリスのセント・エドワーズ校に計28名の生徒が留学を果たしました。
当時、高校生の長期留学はまだ一般的ではなく、留学先で取得した単位が日本の高校では認められていませんでした。そのため留学する生徒は1年間、高校を休学しなければならず、留学の手続きや準備も全て自分で行う必要がありました。しかし、本校はこの状況を打破し、留学先の高校やホームステイ先の選定も全面的に責任をもち、さらに留学先で取得した単位を本校で認める制度を導入しました。こうして誕生したのが、本校独自の『1年間留学制度』です」
「留学コース」の生徒たちは、高1の夏から高2の夏まで全員が1年間の留学を経験します。
「『留学コース』を選ぶ生徒たちは、将来の目標を明確にもち、留学に強い意志と目的を抱いて入学してきます。入学時には英検準2級相当の英語力を求めていますが、それ以上に大切なのは意欲や気持ちです。
留学することで、結果的に高い英語力は自ずと身につきます。言語力は後からでも鍛えられますが、『留学コース』で大切にしているのは、海外の問題を自分事として捉える意識を育てることです。また、高校時代に留学できること自体、恵まれたことです。その恵まれた機会を活かす責任があることを自覚して、取り組んでもらうように促しています。
そのため、高校入学から高1夏までの留学準備期間は、自分の力で問題解決できるようになること、つまり自主性と自立心の大切さを伝えています」
留学先はアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国。それぞれが希望する国の学校へ留学します。
「国ごとに学びや体験は異なります。アメリカでは、世界的企業が集まるオレゴン州やワシントン州で、最先端のハイレベルな教育を受けることができます。イギリスでは、歴史あるコッツウォルズ地方(現在でも古いイングランドの面影を残す建物が見られる)で寮生活を送り、格式高い英国私立学校で学び、英国文化を肌で感じます。
オーストラリアやニュージーランドは、観光学に興味をもつ生徒に人気で、豊かな観光資源が魅力です。カナダでは、多様な文化が共存する環境で、世界中から集まる留学生と共に学びます。いずれも1年間親元を離れて過ごすことで、自主性や自立心が大きく育つのです」
「留学コース」のクラス人数は約40名で、3年間コース替えがなく、留学を組み込んだ独自カリキュラムが編成されています。特徴的なのは、ネイティブ教員が担当する「Global Leadership Project」(以下、GLP)です。
「GLPは、1年間の留学を終えた生徒たちがグローバルまたはローカルの課題を自ら見つけ、その解決策を模索・実行することを目的とする授業です。授業内にとどまらず、民間企業やNGOなど外部機関へのインタビューやイベントに参加する生徒も多くいます。留学で得た社会問題に対する気づきを基に、インタビューやボランティア活動を行い、その経験を通じて進路を決めていきます。
GLPの集大成として、同じ課題に取り組むグループごとに、課題発見のプロセスや解決の難しさ、実現可能な方策について発表します。また、来校者とともにアクティビティを行い、課題解決へ向けた実践に取り組みます。
留学先で現地の社会問題に直面し、日常生活のなかで当事者意識を育むことが重要です。現地での生活を通じ、例えばヴィーガン(vegan:完全菜食主義者)やLGBTQの問題に触れることで、社会問題が身近なものとして実感します。これは高校生という多感な時期だからこそ深く向き合える経験であり、1年間の滞在を通じて当事者意識や問題意識が育まれます。
GLPではその気づきをさらに深め、問題意識をどのように社会へ還元するかを探究します。発表会や議論の場を通じてテーマを掘り下げ、さまざまな視点から意見交換できることが、この授業の魅力です」
1990年の創設以来30年以上にわたり、1,000人を超える留学生を送り出してきた「留学コース」。帰国した生徒たちは、高い英語力と国際的な視野を、大学入試やその後のキャリアに活かしています。
(人数)
海外大学 | 留学 | ワシントン大学 | 1 |
---|---|---|---|
留学 | マンチェスター大学 | 1 | |
国公立大学 | 横浜国立 | 経営 | 1 |
筑波 | 人文・文化 | 1 | |
東京都立 | 経済経営 | 1 | |
私立大学 | 早稲田 | 国際教養 | 2 |
慶應義塾 | 法 | 2 | |
上智 | 国際教養 | 2 | |
上智 | 外国語 | 1 | |
上智 | 文 | 2 | |
上智 | 総合グローバル | 2 | |
国際基督教 | 教養 | 3 | |
青山学院 | 地球社会共生 | 2 | |
青山学院 | 文 | 2 | |
立教 | 経営 | 1 | |
立教 | 法 | 1 | |
立教 | 異文化コミュニケーション | 1 | |
中央 | 国際情報 | 1 | |
中央 | 国際経営 | 1 | |
中央 | 文 | 1 | |
法政 | キャリアデザイン | 1 | |
法政 | グローバル教養 | 1 | |
成蹊 | 経営 | 1 | |
成蹊 | 文 | 1 | |
日本 | 松戸歯科 | 1 | |
東洋 | 情報連携 | 1 | |
立命館アジア太平洋 | アジア太平洋 | 2 | |
立命館アジア太平洋 | 国際経営 | 1 | |
学習院女子 | 国際文化交流 | 2 | |
玉川 | 文 | 1 | |
東京音楽 | 音楽 | 1 | |
専門学校 | 文化服装学院 | 1 |
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