2023年12月、教育・研究分野の基盤拡大をめざし、台湾の實践大学と協力協定を締結した十文字高等学校。2024年7月には同大助教授による出張授業、8月には同大での2週間の交流プログラム「Asia Summer University」が開催され、高1から高3までの希望者が参加しました。
2023年12月、教育・研究分野の基盤拡大をめざし、台湾の實践大学と協力協定を締結した十文字高等学校。2024年7月には同大助教授による出張授業、8月には同大での2週間の交流プログラム「Asia Summer University」が開催され、高1から高3までの希望者が参加しました。
協力協定締結の背景について、国際教育係の本多弘佳先生は解説します。
「協力協定締結について、實践大学は課題解決型・探究型の次世代における学びを英語で実施している世界に開かれた大学です。企業とコラボレーションして商品開発を行うなど、さまざまな側面から探究学習を実践する本校と親和性が高いと考えました。
また、本校はこれまで北米やオセアニアへの留学プログラムを展開してきましたが、“英語を母語としない人々と世界共通語の英語を使ってコミュニケーションをとり協働する”という場面は、生徒たちが社会へ出る際には当たり前となっているでしょう。そうした観点からも、アジアの大学と協力協定を結ぶことは大きな意味があると言えます。さらに、台湾は“親日国”であり、距離的にも行き来しやすく時差が少ないため、オンラインでの交流も気軽にできる点がメリットです」
7月の出張授業では、スイス国籍とアメリカ国籍をもつNick Vasiljevic国際ビジネス助教授が大学生20名とともに来校し、「イノベーション思考」「デザイン思考」をテーマに英語による3日間のワークショップを開催。グローバル企業を渡り歩いてきた同助教授による実践的な内容で、参加した18名の高校生は、英語でのレクチャー、ディスカッション、プレゼンテーションに苦戦しながらも充実した時間を過ごしました。
8月に実施された「Asia Summer University」には、出張授業に参加した2名を含む7名の高校生が参加。台湾、日本、韓国、ラオスなど多国籍なクラスメートと共に4人部屋の学生寮に住み、大学へ通い、クラスメートと協働し、課題解決に挑む14日間を過ごしました。
午前中の「英語」の時間には毎回、「動物を商品として使うことに賛成か、反対か」といったような社会課題に関連するテーマが与えられ、5~6名でグループワークを行います。ディスカッションをして全員が納得のいく解を導き出し、資料を作り、全員の前でプレゼンテーションを行い、最後は各自がその課題についてエッセイを書く、という内容の濃い授業が展開されました。
「初日のプレゼンテーションでは、自信なさそうに発表していた生徒も、日を追うごとに度胸がつき、堂々と発表できるようなりました。プレゼンそのものはもちろん、『英語を話して間違ったら恥ずかしい』という気持ちを取り払えたことが、生徒たちにとって大きな意味をもたらせたようです」と、同行した国際教育担当の土谷先生は生徒の想像以上の成長ぶりに目を細めます。英語を母国語としない国ならではの学びの利点でもあると話します。
「英語の授業を担当してくださった台湾人のMelissa教授は、英語がとても流暢なのですが、授業初日の冒頭で、『私も母国語ではないから間違えることはあるのよ。それに高校生を教えるのは初めてだから緊張もしているの』と生徒たちに伝えていました。そして『間違ってもいいからとにかくSpeak outすることが大切よ』と。
Melissa教授のこの言葉に後押しされ、生徒たちは徐々に『間違ったら恥ずかしい』から、『間違ってもいいから伝えよう』というマインドセットへと変わっていきました。台湾や韓国、ラオスからのクラスメートも、全員英語が堪能というわけではないけれど、お互いに一生懸命伝えようとしている環境に身をおいて、さらに英語を話すことへの心理的な壁が取り払われたようです」(土谷先生)
午後は、“お面作り”や“水墨画”など台湾のカルチャーを学ぶ時間。7月に出張授業を行ったNick助教授による「ランゲージサロン」、パイナップルケーキや餃子を作る「クッキングクラス」「實践大学キャンパスツアー」など、夕方まで毎日多彩なカリキュラムが組まれ、生徒たちは台湾滞在を大いに満喫しました。
「そのほか蘭陽女子高級中学を訪問して交流したり、人気の観光地を訪れたりと盛りだくさんの内容で、全行程に現地の大学生が付き添ってくれました。現地学生とのやりとりも英語なので、困ったこと、わからないことは英語で伝えざるを得ないため、そこでも英語を話すことへの心理的な壁を取り払うことができたのではないでしょうか」(土谷先生)
「寮生活という環境も生徒を大きく成長させてくれた」と土谷先生は話します。
「例えば“空調が効かない” “虫が出る” “部屋の鍵を部屋の中に置いたまま出てしまった” “ルームメートの具合が悪くなった”というようなトラブルに、自分たちだけで対処しなくてはなりません。洗濯や掃除といった、日本では親任せの家事も自分でやらなくてはいけません。日本の生活に比べるともちろん不便はありますが、ある生徒は『不便を楽しむことができた』と言っていました。
何か予想外のことが起こっても自分たちで対処し、解決するというサバイバル力が身についたようです。帰国後、保護者からは『自分のことは自分でやるようになった』『自立した』と、我が子の成長ぶりに驚く声も多く寄せられましたね」
参加した生徒からは、「積極的に英語で話す力や勇気が身についた」「台湾の学生は英語が上手。習ってきた英語が思った以上に使えなくて苦労したけれど、翻訳アプリなどを使わず自分でとにかく話すという姿勢が身についた」などのポジティブな感想が聞かれたそうです。なかには「實践大学に進学したい」「将来は自分で開発した商品を海外に広めたい。その魅力を説明・交渉できる語学力を身につけたい」と、将来の進路選択が海外へと広がった生徒も。「とても素晴らしいプログラムだったので、もっと多くの生徒に知ってもらいたい」という生徒もいたそうです。
生徒に同行した本多先生、土谷先生も、その高度な内容に驚いたと言います。今後は實践大学とより良い連携体制を築きながら交流を深め、生徒にさらなる学びの機会を提供していきたいと話します。
「来年度以降、より多くの生徒にこのプログラムに参加してほしいと考えています。そこで得た力・グローバルな視点を土台に、實践大学を含め、進路選択の幅を海外に広げる生徒も出てくるのではと期待しています」(本多先生)
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