練習は平日が約2時間、休日は約3時間。あとは勉強にあてます。
「国士舘柔道は常に日本一であること」。この言葉を胸に練習に励みます。
目標はインターハイ三連覇、関東大会二連覇、個人戦全開級制覇。
高い目標を常に掲げ、トップアスリートをめざします。
オリンピックのメダリストを輩出し続ける、国士舘高等学校柔道部。2019年に続き、2023年には「全国高校柔道選手権」「金鷲旗」「インターハイ」の3大全国大会を制覇し三冠を達成しました。
柔道部の監督を務めるのは、百瀬晃士先生(武道)です。長野県出身の百瀬先生は小学生から柔道を始め、柔道部へ入部するために上京して国士舘中学校に進学。寮生活を送りながら6年間柔道に励みました。
卒業後は国士舘大学武道学科に進み、実業団で活躍した後、平成管財→国士舘大学柔道部コーチを経て、国士舘高校柔道部の監督に就任。現在、高3の担任を受け持ちながら、武道の授業を担当しています。百瀬先生と部長の山本由聖さん(高3)、マネージャーの竹久保吉宏さん(高2)に話を聞きました。
本校が掲げる建学の精神は、「誠意・勤労・見識・気魄」の修得です。この修得によって、さまざまな分野で活躍する人材を社会に送り出すことを目標としています。柔道部の方針はこの精神に則って、柔道を通じて人間的に成長し、世のため、人のために尽くせる人となることです。
柔道部のモットーのひとつに“文武両道”を掲げています。これまで柔道部には、柔道が強いことだけを良しとする空気がありました。このような姿勢では、これからの社会に貢献できません。今の柔道部がめざす文武両道は、学業が最優先です。そして勉強を50%、柔道を50%頑張るのではなく、どちらも100%頑張るように努めることです。しかし、勉強にも柔道にも個人差があります。ですから勉強で言えば、100点を取れとは言いません。自分で納得できる結果を出すために、どちらも力を抜かずに一生懸命に取り組む姿勢を養ってほしいのです。勉強や柔道の練習に全力を傾けたとしても、必ずしも結果が出るとは限りませんが、結果を出している生徒は、誰もが全力を傾けているのです。このことを部員全員が心に刻んでほしいと思っています。
そこで私が指導で心がけているのは“自主性の育成”です。私が高校生部員を指導できるのは3年間だけです。これから柔道を続けたい部員には、大学や卒業後のステージが待っており、私がこの3年間で1から10まで教えると、次のステージで苦労するでしょう。そのために自分たちでどうすれば勝てるか、どうすれば課題を解決できるかなどを考えられるように、あえて指導の手を離すこともあります。これは勉強に関しても同じことが言えると思います。高校を卒業すれば、大学という新しいステージで専門的な学問に打ち込む日々が待っているからです。
もうひとつ、部で大切にしていることは、挨拶と礼儀です。これらがきちんとできるうえで、相手の痛みがわかる人になってほしいと思います。痛みがわかる人は、人を言葉で傷つけたりはせず、困っている人がいれば必ず手を差し伸べようとします。こうした人間性豊かな人は、社会に出た際、周りから信頼され、応援してもらえます。そうでない人はいくら優秀で仕事ができても人々が離れていくものです。
そして試合を通して、人々に勇気や活力を与えられる選手になってほしいと思います。例えば、柔道部の監督である私のもとには、全国の卒業生から「後輩たちの活躍を見るのが何よりの生きがいです」といった声が寄せられます。こうした声を耳にしたり読んだりするたびに、監督として部員たちを誇りに思います。
国士舘大学出身である私の願いは、部員たちには全員、国士舘大学へ進んでほしいのですが、早稲田大学や慶應義塾大学、さらに国立大学へ進んで柔道を続ける卒業生もいます。また、現在の柔道部では柔道経験者だけでなく、初心者も受け入れています。多くの生徒に入部していただき、柔道を通して、人間性を磨いてほしいと思います。
柔道を始めたのは小3の時です。幼い頃から多くのスポーツに親しんできた私が柔道の練習を初めて見て、自分に最も合っていると感じました。以来、稽古に励み、柔道をするために兵庫県から上京して国士舘中学校に進学しました。今は校内にある寮で生活しています。
国士舘中学校に入学するまでは、「柔道で全国に知れ渡った学校なので、柔道部の先輩方が怖いのではないか」と不安でした。しかし、入部してみると先輩方は後輩に優しく、人間的にも魅力があり、信頼でき、尊敬できる方々ばかりでした。そのため、自分もこうした先輩方のような上級生になることをめざしてきました。
国士舘中学では中3の時に全国大会の団体戦で優勝を果たし、個人戦では3位に入賞しました。高2では団体戦で三冠を達成しています。現在、部長として部員たちに指示を与えたり、試合前にミーティングを開いて、どのような姿勢で試合に臨むかなどを話し合ったりしています。部長として学んだことは、“自分の言動に責任をもつ”ことと、“目標達成に向けて試行錯誤を重ねることの大切さ”です。部長としての経験は、私の財産となっています。
また、部員として文武両道がいかに大切かということに気づけました。百瀬先生の方針は、部員たちに柔道と勉強との両立を図らせることです。授業で宿題が出れば、練習よりもそちらを優先するように指導していただきました。そのため高校では勉強にも力を注ぎ、教科のなかでも特に数学が好きになりました。
柔道を続けてきた私にとって柔道の魅力は、試合で相手を投げた時に、応援席から歓声のシャワーを浴びられることです。この一瞬のため練習に打ち込んできたと言っても過言ではないほど、大きな喜びが胸にあふれてきます。
また、柔道を通して学んだことは、人に対する思いやりがいかに尊いものであるかです。柔道は一人ではできません。指導してくださる先輩方や先生方、励まし合ったり、良きライバルとして競い合ったりできる部員たち、対戦相手がいて柔道は成り立っています。こうした人たちに感謝しつつ、学校生活を送ることができています。
今後の目標は、まず百瀬先生が卒業した国士舘大学体育学部に進学して柔道を続け、体重無差別で柔道の日本一を決める「全日本柔道選手権大会」に出場して優勝することです。そして将来、オリンピックに出場するなど、柔道の第一線で走り続け、生涯柔道に携わっていきたいと考えています。
私は小1の頃から柔道を始めました。それまでアメリカに住んでいましたが、日本に移り住むことになった際、「何か習い事をしよう」と思い、柔道を選んだのです。また、尊敬する父が高校時代に柔道をしていたと聞いて興味をもったというのもあります。以来、柔道を続け、柔道部へ入るために国士舘へ進学しました。
自宅は千葉なので、通学にかかる時間を勉強や部活動にあてたいと思い、山本先輩と同じように寮生活を送っています。寮は快適で、自習室も完備されているため勉強に集中できます。アメリカで覚えた英語は今も得意で、中2の時に英検2級に合格しました。今、準1級取得に向けて勉強中です。
柔道では中2の時、東京都の新人体重別選手権大会で優勝を果たせましたが、高校では満足できる結果を出せていません。これから練習にいっそう力を入れて、多くの試合に勝ち進むことが目標です。
マネージャーの主な仕事は、連絡事項を部員に伝えることです。また、現在柔道をしているドイツからの留学生が部の練習に参加しているので、得意な英語を活かして通訳を任されています。
柔道部の自慢は、先輩と後輩の仲が良く、自分の意見を言ったり、わからないことを気軽に相談したりできること、練習や試合を通して、部員たちの絆が強まっていくことです。そして柔道の素晴らしさは、心も体も鍛えられること、礼儀が身につくことです。他校の柔道部員を見てもメンタルが強く、気遣いのできる高校生ばかりであることがわかります。
百瀬先生は、いつもこんな言葉を口にされます。「柔道は人間性の上に道着を着る競技だ」と。「人間性を磨かないと勝てない競技だ」ともおしゃっています。学校に通えて勉強や部活動に専念できるのは、両親や先生方、先輩方、部員たちなど、周りの人たちに支えられているからです。柔道部に入部してから毎日の学校生活を当たり前だと受け止めるのではなく、常に感謝しなければならないことに気づけました。これは大きな成長だと感じています。
また、柔道をしていてうれしいと思えるのは、試合で自分が研究していた技が決まった瞬間です。大きな達成感を得ることができます。高校を卒業したら国士舘大学へ進み、柔道部に入ってオリンピックに出場することが目標です。そして世界一になることが夢です!
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