今年の2月に開催された『横浜薬科大学 理科系研究発表会 高校生発表』。同大会で国士舘高等学校科学研究会の部員4名が『最優秀分析科学賞』『最優秀環境科学賞』そして『最優秀物理科学賞』を受賞しました。同部の部員は6名。少数精鋭で研究に励んでいます。主な活動は上記のような研究発表会に年2回程度参加すること、また、近隣の小学校を訪問して子どもたちに向けた実験教室やワークショップを開くことです。同部の特色を部員、顧問の先生に聞きました。
今年の2月に開催された『横浜薬科大学 理科系研究発表会 高校生発表』。同大会で国士舘高等学校科学研究会の部員4名が『最優秀分析科学賞』『最優秀環境科学賞』そして『最優秀物理科学賞』を受賞しました。同部の部員は6名。少数精鋭で研究に励んでいます。主な活動は上記のような研究発表会に年2回程度参加すること、また、近隣の小学校を訪問して子どもたちに向けた実験教室やワークショップを開くことです。同部の特色を部員、顧問の先生に聞きました。
部長のOさん(高3)は『横浜薬科大学 理科系研究発表会 高校生発表』で『最優秀環境科学賞』に輝きました。研究題目は『イカダモの群体形成に関する研究』です。イカダモとは、池や水田などの淡水に棲むプランクトンの一種。川に浮かぶイカダのように並んだ群体を作ることから、この名がついたそうです。
「イカダモは環境要因によって一定数の群体を形成することが知られています。群体とは簡単に言うと、単細胞が集まって身体ができているもののことです。研究では、このイカダモがどのような化学的環境下で群体形成を行うのかを検討しました。
私は以前からプランクトンに興味がありました。図鑑に載っているミジンコなどのプランクトンの写真を見て単純に“かわいい”と思ったことがきっかけです。私が進学をめざしている東京理科大学には物理生物学を専門とする研究室があり、国士舘高校に入学した時から同大学の同研究室に入ることが目標となっています。
科学研究会の顧問である馬場信悟先生は東京理科大学、東京都立大学の出身で、研究会には高度な実験器具がそろっているので、高校の教科書の範囲をはるかに越えた研究ができます。そうしたこともあって入部しました。今回、私の研究が横浜薬科大学で評価をいただいたことで大きな自信を得ることができました。これからも今まで積み重ねてきた貴重な体験を糧にして、大学では好きな研究に打ち込み、自然環境の保護に貢献できたらと思っています」
『最優秀物理科学賞』を受賞したSさん(高3)の研究題目は『クリスタルバイオレット(CV)の退色反応について』です。クリスタルバイオレットとは色素(紫色)の一種で、治療薬などに用いられているものです。
「シャンプーなどの洗剤を界面活性剤と言い、これを水に溶かすと『ミセル』という溶液状態になります。ミセル内にはクリスタルバイオレットと反応する物質が含まれていて、水酸化物イオンと反応すると退色します。そこで2種類の界面活性剤を用いて退色反応速度を比較しました。僕は小学生の頃から実験が大好きで、いつか薬品を使った高度な実験をしてみたいと思っていました。科学研究会には数多くの実験器具があり、幅広い実験が行えると聞いて入部しました。
実際、大学レベルの実験が好きなだけでき、顧問の馬場先生から的確なアドバイスがいただけることは、この部の大きな魅力です。将来の目標は薬剤師になることです。高校時代に実験の基礎を身につけていれば、大学に入ってからも有意義に学ぶことができるはずです」
Cさん(高2)は、Sさんとともに『クリスタルバイオレット(CV)の退色反応について』の研究を行いました。
「小学生の頃に、ドイツのミュンヘン大学の研究を知って感動したことがあります。“人間の体内に葉緑体を入れれば、植物のように光合成できるかも”というのが研究テーマでした。僕が科学研究会に入部したのは、このような人のためになる研究がしたかったからです。
今回、賞をいただいた実験を通して、『高分子のミセルを作り出すことができれば、アルツハイマー病の治療に役立つかもしれない(ドラッグデリバリーシステム:DDS)。これからそんな研究をしていきたい』という目標ができました。
科学研究会の魅力は、自分の好きな研究に時間を忘れるくらい没頭できることです。今回、発表会に参加するため横浜薬科大学を訪れたことで、大学で研究することへの憧れがいっそう強まりました。将来は、研究によって社会に貢献できる起業家になることが夢です」
Tさん(高1)は、もともと化学に興味をもっており、新入生向けの部活動紹介で科学研究会が小学生に行った『象の歯磨き粉実験』やマグネシウムに火をつけて酸化鉄とアルミニウムを反応させる『テルミット反応』を見て感動したことが入部のきっかけになったそうです。“象の歯磨き実験”とはユニークな名称ですが、これは過酸化水素水にヨウ化カリウムと洗剤を加えることで発生する巨大なモコモコの泡が象の歯磨きのように見えることからこう呼ばれているそうです。
「2つの物質を反応させると、まったく違う物質ができたり、驚くような現象が発生したりします。化学のそんな点に魅力を感じて、科学研究会に入部しました。私は今、3年生の先輩のもとで、メチルオレンジやメチルレッドといった色素の合成に関する実験に取り組んでいます。色素が混ざりきるにはかなり時間と手間がかかります。私は4月からずっとこの研究のお手伝いをしていたので、色素の合成に成功した時は大きな達成感を得ることができ、うれしさがこみあげてきました。
科学研究会の自慢は、先輩方や顧問の馬場先生、副顧問の伊東慎弥先生がとても優しいことです。先生方は科学のことだけでなく、数学の勉強も教えてくださいます。知らなかった薬品を扱うこともでき、知的好奇心を満たすこともできます。今後は部の活動を通して問題解決能力を養い、将来に役立てていきたいと考えています」
Kさん(高1)も理科が大好き。併設の国士舘中学校出身で、当時の担任だった伊東先生に勧められて入部しました。
「高校生になって体験入部をしたら、先輩方が優しく、関心のあることをひたすら研究できると知って入部しました。先輩方はどんなに実験に夢中になっている時でも、わからないことを聞きに行くと、手を休めていねいに教えてくださいます。
理科の魅力は、科学の知識が得られれば、日常生活で使っているものが、どのような理論で作られ、どのような仕組みで動いているのかを知ることができることです。また、なぜそうなっているのかを考えることにも喜びを感じられます。例えば、スマートフォンを充電すると本体が熱くなります。その理由も科学の知識で解き明かせるはずです。
今、興味があるのは宇宙に関すること。宇宙は現在でもわからないことだらけだからです。その秘密に迫ってみたいと思っています。大学では宇宙の研究をしたいのですが、薬剤師の仕事にも関心があります」
顧問の馬場先生(理科・工学博士)は次のように話します。
「『横浜薬科大学 理科系研究発表会 高校生発表』では、もう一人、『最優秀分析科学賞』を授賞した部員がいます。3年生のIさんです。研究題目は『アゾ化合物の合成と紫外可視吸収スペクトルの測定』です。
IさんやOさん、Sさんのように、研究したいことを自分で見つけ出す部員もいれば、何を研究したらいいのか決められない部員もいます。そうした部員には、私が“こんな研究があるよ”とヒントを与えるようにしています。その場合、高度な内容を提案することが多いので、できるだけ難しい専門用語を使わず、絵を描いたり模型を使ったりして理解しやすいように努めています。
部員たちには、これから生きていくなかで問題にぶつかった時にどう解決していくかを自分で考え、壁を乗り越えていく力を身につけてほしいと思っています。そして、この部の活動だけでなく、毎日の授業やスポーツを通して、バランス感覚やチャレンジ精神を養い、人間としての幅を広げてほしいと願っています」
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