“学びあい”という開智高校独自の教育を、放課後の部活動にも取り入れているのが剣道部です。その活動内容は“考える剣道”というもの。勉強も剣道も努力し続けてこそ、さらなる高みに到達できることを知る部員たちの誇りがここにありました。
“学びあい”という開智高校独自の教育を、放課後の部活動にも取り入れているのが剣道部です。その活動内容は“考える剣道”というもの。勉強も剣道も努力し続けてこそ、さらなる高みに到達できることを知る部員たちの誇りがここにありました。
開智高校が掲げる“学びあい”とは、教員側の指導に加えて、自ら考え、自ら調べ、自ら発信することで、自分以外の多様な考え方や発想に触れ、柔軟な思考と他者の尊重を身につけ、さらなる自己の向上をめざす学び方を言います。
他者をリスペクトしながら、昨日から今日へ、今日より明日へと、日々の成長を求めて心地良い汗を流しているのが、開智高校剣道部です。中心者として関わるようになって2年目の寺田有希先生(保健体育科教員・剣道部顧問)にお話を伺いました。
「週4回という限定された活動日に対して、常に高い志をもって取り組めるかが大きなポイントになると考えています。週4日の活動のなかで、個人としても、団体としても、最高の練習をすることが、部員一人ひとりに求められています。
勉強と部活動の両立をめざし、誰もが高い志をもちながら、限られた時間のなかで今、自分のやるべきことに挑戦し続けているのが、私たち開智高校剣道部なのです」
剣道部の活動ポイントを一言で表現するとしたら、それは“学びあい”を基本とする“考える剣道”です。生徒一人ひとりが自身と部全体の課題をあぶりだし、その解決に向かって行動するところに明日の勝利が見えてきます。その一連の流れは学習面でいうところの「探究」と似ているのかもしれません。
「何事にも探究心は必要です。生徒たちが考えてわからなければ、顧問からいくらでも情報を提供しますし、それを生徒たちが自分たちなりに考えて行動できれば、まさに主体性のある剣道部として自慢できるものであるのかもしれません。とは言っても、まだまだ深みのある探究ができていないところがたくさんありますので、そのあたりが剣道部における今後の課題と見ています」
部長を務める長谷川聖さん(高2)にも話を伺いました。長谷川さんは中学から剣道を始め、現在は3段の腕前です。
「活動日が週4回と決まっているので、どれだけ質の高い練習ができるかが日々の課題と捉えています。そうしたなかで1つのポイントとなっているのが、学年を越えた仲の良さから生じる“教え合い”です。勉強との両立は決して簡単ではありませんが、僕の場合は練習後に自習室へ行き、最終下校時間の19:00まで独習(自習)するようにしています。勉強も剣道も常に向上心をもって取り組むところに、昨日の自分を越える成長があると考えているからです」
夏休みに入ったばかりのこの日、剣道場には夏期講習期間を終えた部員たちの元気な声が戻ってきました。興味深いのは“剣道”というのに、1人も面をつけていないこと。その理由を部長の長谷川さんが教えてくれました。
「猛暑対策に加えて、少しでも負荷のある稽古を効率良く行い自分を追い込めるよう、練習をピックアップして面をつけずに稽古できるところは行っています。こうしたことも寺田先生の言う“考える剣道”と捉えています。ほかにもこまめな水分補給に努めたり、調子の悪そうな仲間がいたら声をかけたりするなど、高2生が中心となって細かい部分にも注意するようにしています。そうした一つひとつの積み重ねにより、剣道部として真の実力もついてくると確信しています」
引退した現高3生の活躍もあり、昨年度は埼玉県で「ベスト32」まで勝ち上がることができました。目標も、当然ながら“ベスト32以上の勝ち星を挙げること”にありますが、その道のりは決して容易ではないようです。
「正直なところ、実力ではまだまだ厳しい状況です。そんななかでも強かった先輩方が抜けて弱くなったと言われないように、一人ひとりが勝ちを意識した練習を心がけています。すぐに成果が出るわけではないので、どれだけ根気強く練習に取り組めるかですが、同じ志をもった仲間たちがいるからこそ辛くはありませんし、むしろ楽しいです。
ちなみに、僕はまだ寺田先生に一度も勝ったことがありません。まずは寺田先生から1勝することも含めて、男女共に上位進出をめざして頑張っていきたいです!」
部員たちが主体的にイキイキと練習に励む様子を見ながら、寺田先生も積極的にその輪の中に入っていきます。
「私からの声かけが、なるべく“指導”にならないように心がけています。要するにヒントは伝えるけれど、そこから先は生徒たちに考えてもらうということです。まさに“考える剣道”としての醍醐味です。勉強もそうですが、“やらされている”うちは身になりませんし、意識が低ければそれなりの成績しか出すことができません。私はこれからも、部員一人ひとりが高い意識をもって練習に取り組むところから、剣道部の新たな歴史が始まるものと期待しています」(寺田先生)
いつの日か強豪になり得るポテンシャルの高さを秘めた、開智高校剣道部の魅力がここにありました。
武道場を拠点に週4回活動している剣道部。昨年度の埼玉県大会では男女共に「ベスト32」に入りました。大学入試に向けて高3生が引退した今、高1生、高2生合わせて男子9名、女子5名がワンランク上の練習に取り組んでいます。
“考える剣道”を標榜する剣道部。「取り組んでいる練習が何のためのものなのか、そうしたことを生徒たちに考えてもらっています」(寺田先生)
部長の長谷川聖さん(高2)
自由な校風に憧れて開智高校を選んだそうです。「練習後は自習室に行き、約1時間程度の独習をしてから帰宅するのが高2からのルーティーンになりました」
前日まで講習期間だったこともあり、この日はケガをしないためのストレッチも入念に。こうした練習メニューの大半は生徒たちで考えて実践しています。
猛暑が続くなか、熱中症対策として面を着用する時間を極力少なくした練習プログラムを実践する部員たち。“考える剣道”の1コマがここにもありました。
男女共に県大会で上位進出をめざして精進している今年度の剣道部。
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