Profile
戸塚哲夫 校長
1956年、岩手県盛岡市出身。東京農業大学応用生物科学部を卒業後、研究室に1年間所属して酵素に関する実験を行う。23歳で駒場学園に着任、家庭科を担当。サッカー部、バレーボール部、演劇部など多様な部活動顧問を務める。教頭、副校長を経て2023年10月に現職。日本ジビエ振興協会の審査員、東京都高体連体操女子専門部の部長を務めるなど活動は幅広い。
1956年、岩手県盛岡市出身。東京農業大学応用生物科学部を卒業後、研究室に1年間所属して酵素に関する実験を行う。23歳で駒場学園に着任、家庭科を担当。サッカー部、バレーボール部、演劇部など多様な部活動顧問を務める。教頭、副校長を経て2023年10月に現職。日本ジビエ振興協会の審査員、東京都高体連体操女子専門部の部長を務めるなど活動は幅広い。
学期ごとの始業式や終了式、そして入学式などで語られる戸塚校長先生の“校長講話”は、多彩なサイエンスの世界です。
「大学時代の専門は“酵素”です。皆さんは“蕎麦が風邪をひく”という話を知っていますか? 蕎麦という植物は夏に収穫して、空気に触れると香りや風味がなくなって劣化します。それを“蕎麦が風邪をひく”と表現するのですが、この劣化には酵素が関わっているのではないかと仮説を立てて、寝る間も惜しんで実験に取り組んでいました。
2024年度の入学式において、私は生徒たちに“物理学者”について話をしました。物理学は必ず結果が出る学問です。私自身が好きなのは生物学ですが、どの領域においても、サイエンスの世界は興味に満ちあふれています。理科や数学が苦手だという生徒に少しでもサイエンスの世界に興味をもってほしいので、ことあるごとにそのような話をしています」
戸塚先生ご自身、大学で探究活動に取り組み、課題解決型の授業を実践してこられましたが、駒場学園高等学校は、高校カリキュラムに「探究」が導入される以前から、さまざまな場所で「調査旅行」、すなわち探究活動を実施してきました。
現在の探究活動の一環として、4コースそれぞれで体験旅行を実施しています。「特別進学コース」は種子島・屋久島を中心に鹿児島・長崎・福岡へ。「国際コース」は大学授業体験とシンガポールでの語学研修。「進学コース」は島根、広島、佐賀、岡山、山口の中から選択します。「食物調理科」はベトナムとタイで東南アジアとフランス料理の研修を行っています。
「毎週月曜日の放課後は『放課後探究プログラム』に取り組みます。その一つが“制服向上委員会”です。学年や部活動とは関係なく、制服について考えたい生徒たちが集まって、自由に意見交換を行ってきました。
生徒をサポートし、プロの意見を聞かせてくださるのは、制服づくりの老舗である『株式会社トンボ』の社員の方々です。生徒たちのアイデアが詰まったネクタイを製作したことがあるのですが、そこにプロフェッショナルのアドバイスが加わると、生徒の目が輝きます。「やはりプロは違うのだ」と。そのネクタイについては限定販売を行いました。
2023年度は『株式会社トンボ』と『日本毛織株式会社』の協力のもとで“制服の循環”が実現しました。生徒たちが着た制服を回収し、繊維の状態にまで戻して新しい制服を作ったのです。従来から“制服のリユース”という考え方はありましたが、やはり新1年生は新しい制服を着用したいはずです。2024年度の1年生は先輩のお下がりではなく、循環型の新しい制服を着用しています。そして循環型の制服を、もっと別のものにも適用できないかと現在検討中です。
循環型の制服作製は、リユースよりもコストがかかります。それでも環境を守るためにコストをかけるというSDGsの考え方を、生徒たちに意識してほしいと思いました。循環型の制服もまた、教育の一環なのです」
放課後探究プログラムには制服向上委員会のほかに、「起業LAB」「委員会活動(風紀委員)」「タンキュウラボ」「ショウケース」といった4種のプログラムがあり、外部の専門家がそれをサポートしています。
「例えば『起業LAB』は“起業”を考えるプロジェクトですが、今回は災害に対してどのような準備ができるのかをテーマに起業を考えていました。
『ショウケース』は、自分たちで一から演劇を作り上げるプロジェクトです。音楽は作詞・作曲をし、台本・衣装も自分たちで考え、現役の演出家の先生に指導していただきます。
2024年度より、新たなプログラム『タンキュウラボ』がスタートしています。サポートするのは慶應義塾大学在学中の本校卒業生です。大学受験を軸に将来を考えるプロジェクトですが、最近は『自分の意見を言えるようになるためには?』というテーマで話をしてくれました。
生徒には一人ひとり個性や特性があります。たとえ中学時代は目立つことなく消極的だった生徒でも、活躍の場があれば自分を表現し、輝くことができます。そのための仕組みの一つが『KG探究プロジェクト』です。
同プロジェクトにご協力いただく外部の方は、生徒にとってロールモデルであり、生徒自身が将来を考えるヒントを与えてくださる大人たちです。高等学校という狭い世界のなかでは限られた価値観しか知ることができません。だからこそ、本校には『KG探究プロジェクト』以外にもさまざまな人が来校します。本校生だけだと緊張感はありませんが、外部の人が来校すると、その真剣な空気に触れることができるのです」
駒場学園高等学校は部活動も多様です。都心にある学校では珍しい「スケート部」や「ヨット部」、総合武道部の空手道部は“フルコンタクト空手”、柔術部は“グレイシー柔術”とありますし、「フランス語同好会」「数学研究科同好会」など、同好会も多彩です。
「アメリカンフットボール部の指導者は専門家、新体操部の監督は全日本で活躍された人です。新体操部の卒業生は総合型選抜で慶應義塾大学に合格しました。スケート部員はプロをめざして活動しています。皆、一芸に秀でており、その活動を続けたい生徒をできる限り受け入れるのが本校の教育方針です。
全日本で活躍するような友人がクラスにいるのはとても良い刺激になりますし、いろいろな分野を追究する姿を見て、自分もその分野に興味をかき立てられることもあるでしょう。『自分には興味をもてるものがない』と思っても、焦ることはありません。文系・理系を選べないのなら、双方に関係のある分野を掘り下げてみたら、案外面白い学問に出会えるかもしれません。
高等学校は社会で求められる人材のベースを形成する場所です。いろいろなことに興味をもち、自分で考え、その考えを発言できる人材育成を目的に、駒場学園ではさまざまな活躍の場を用意しています。ぜひ、説明会に足を運んで、本校の魅力に触れてみてください」
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